西陣病院だより

点眼薬について

(この記事は2018年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 日置 透子

目薬(点眼薬)はドラッグストアなどで購入することもでき、身近な医薬品です。今回は、目薬(点眼薬)の正しい使用方法や注意点についてお話しします。

点眼方法

  1. 手を洗い、清潔にしてください。
  2. 下瞼を軽く引き、1~2滴を点眼してください。感染を防ぐため、容器の先がまぶたやまつげに触れないように注意しましょう。
  3. 点眼後はしばらく瞼を閉じるか、目頭を軽く押さえましょう。ただし、手術後は傷口に触れることもあるため、瞼を閉じるだけにしてください。
  4. あふれた薬液は清潔なガーゼやティッシュでふき取ってください。2種類以上の点眼を使用する場合は、5分程度時間をあけてから点眼しましょう。

点眼液の量

薬液が吸収される結膜嚢の最大容量は約30μLです。点眼容器から出る1滴量は30~50μLのため、1滴入れば十分と言えます。ただし、症状によっては1回に2~3滴点眼が必要な場合もありますので、医師の指示に従ってください。

保管方法

「冷暗所保存」などの指示がある場合はそれに従ってください。特に注意がなくても、添付の専用袋に入れて、直射日光、高温を避けて保管してください。湿布薬などの近くで保管すると、芳香成分が吸着し目の刺激になるおそれがあるため、注意しましょう。

使用期限

容器に記載されている使用期限は開封前の期限です。開封後の使用期限は1ヶ月を目安とし、浮遊物や濁り等が見られたら使用を止めてください。

PF(Preservative Free)点眼液について

点眼を処方された際、薬剤名に「PF」とついた点眼を貰うことがあると思います。ほとんどの点眼薬には通常、防腐剤が入っています。防腐剤は外部の細菌から点眼薬を守る役目をしていますが、人によってはアレルギー症状を起こしたり、角膜を傷つけたりするおそれがあります。PF点眼薬は、防腐剤を含まない点眼薬で、フィルターを用いた特殊な容器により外部から細菌の侵入を防ぐよう作られています。容器の特性上、普通の点眼よりも強く容器を押さないと薬液が出ないため注意が必要です。また未開封品を使用する前には「開栓操作」が必要になるため、説明書や、薬剤師からの説明をお聞きになってから使用してください。

2018年08月27日

おくすりの保管方法 について

(この記事は2018年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 國枝 亜矢香

今年もじめじめとした暑い季節になりました。みなさんのご家庭では湿気や暑さ対策をどのように行っているでしょうか。夏の軽装はもちろんのこと、除湿器や冷房、扇風機等を上手に用いて快適な夏を過ごしたいものですね。
さて、みなさんが過ごしていて不快と感じる気候は、実はおくすりにとっても良くない状態であるということはご存知でしょうか? 今回は、お薬の保管方法についてお話したいと思います。

温度の定義

薬剤師が使う「温度」には、実は日本薬局方の通則において厳密な定義がなされています。

西陣病院、

ほとんどのおくすりは、ここで言う「室温」での保存が可能です。目薬も、一部のものを除いて室温で保管できるものが多いです。夏場では部屋の温度が30℃を超えてしまうことがあるので要注意です。

なぜおくすりの保管方法が決まっているの?

おくすりは適切な環境下で保存していても、時間がたつと有効成分が分解されていってしまいます。分解の速さは周囲の環境に影響され、特に高温、湿度が高い、光があたる、などといった場所で保管すると、通常よりも分解が加速していってしまいます。

代表的な保管に注意の必要なおくすり

インスリン製剤・・・冷蔵庫で保存する代表的なおくすりですね。ただし、使用する前のインスリンは冷所で保管、使用中のものは室温での保管となっていますので、注意しましょう。30℃以上になる車内や部屋での保管には注意が必要です。

 

おくすりというのは、実は意外とデリケートなものだと知ってもらえると嬉しいです。初めてのおくすりが始まったときなど、保管方法に疑問があれば薬剤師に確認しましょう。
おくすりの最大限の効果を得るためにも、良い状態で保管されたおくすりを飲むようにしましょうね。

2018年07月01日

アスピリンアレルギーについて

(この記事は2018年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 塩見 紗和子

みなさん、薬物アレルギーをご存じですか?
特に抗生物質、解熱鎮痛薬、ホルモン剤、酵素製剤、造影剤などは他の薬に比べてアレルギーを起こしやすいと言われています。
今回は皆さんもよく耳にする、アスピリンアレルギーと呼ばれるものについてお話します。

アスピリンとは?

ステロイド以外で抗炎症作用をもつ薬の総称を非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼び、アスピリン(アセチルサリチル酸)はこのNSAIDsの代表格とも言える薬です。
NSAIDsには、アスピリンのほかにもロキソプロフェン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどがあり、医療施設や薬局にあるほとんどの解熱鎮痛薬に使用されています。

アスピリンアレルギーの症状

症状は喘息型、蕁麻疹型に大別されます。
喘息型の症状は喘息発作(アスピリン喘息、NSAIDs過敏喘息と呼ぶこともあります)と鼻症状です。もともと、気管支喘息を持っている人が、過敏症状によって強い喘息発作と鼻汁・鼻閉が誘発されるのが特徴です。
蕁麻疹型の症状は、蕁麻疹(アスピリン蕁麻疹とも呼ばれます)、血管性浮腫です。もともと、慢性蕁麻疹をもっている人が、過敏症状によって蕁麻疹や、まぶた・唇が腫れる血管性浮腫が誘発されることもあります。

アスピリン以外の解熱鎮痛薬なら使ってもいい?

アスピリンアレルギーはその呼び名から、 アスピリンのみに対する過敏症と誤解されがちですが、非ステロイド性抗炎症薬全般に対する過敏症状のため、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなども症状が起こる可能性があります。

ピリン系とアスピリン系は一緒?

アスピリンは「ピリン」の名前が付いていますが、ピリン系ではありません。ピリン系は解熱鎮痛薬の一種であり、昔の市販のかぜ薬に使用されていましたが、アレルギーが多くみられることから、現在日本の市販のかぜ薬への使用が禁止されています。

薬物アレルギーを起こすと重篤な場合、死に至ることがあるため注意が必要です。薬物アレルギーが疑われる場合、初めは軽症に見えても重篤化することがあるので、すぐに医師・薬剤師に相談しましょう。
薬物アレルギーを起こした場合は、たとえ軽症でもその薬の名前を覚えておき、必ず医師・薬剤師に伝えましょう。アレルギー反応は個人の体質によって異なるので、過去の薬に対する特別な反応は、自分で書き残しておくことが大切です。

2018年05月01日

花粉症とくすりのはなし

(この記事は2018年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 東野 公亮

3月から4月は、春に向かって暖かくなっていく時期ですね。この時期は花粉症に悩まされる方が多くいらっしゃいます。今回は、花粉症とくすりのおはなしです。

花粉症とは?

日本人の約25%が悩まされているとされる花粉症は、主に、スギやヒノキなどの花粉が原因となり、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を起こすものを指します。

今からできる花粉症対策って?

帽子や眼鏡やマスク着用、花粉を家に入れないなど日常できることに加え、花粉症対策で大事なのは、
①医療機関を受診し、どの植物の花粉にアレルギーがあるのか、その花粉の飛散時期を把握する。
②該当する花粉が飛散する前や最盛期前に、薬を服用する。
(前もって薬を服用することで、花粉症の最盛期の症状を軽くすることができます。)

花粉症に効く薬ってなにがあるの?

花粉症に効く薬は、市販薬を含めると多くの治療薬が存在します。下記は市販薬の一部です。

内服薬
◇くしゃみ、鼻水、かゆみなどに
アレジオン®20、アレグラ®FX、ザジテン®AL鼻炎カプセル、クラリチン®EX OD錠 など
外用薬
◇花粉症の症状が強いときに(点鼻薬)
コンタック®鼻炎スプレー、ナザール®αAR など

◇目のかゆみに(点眼薬)
ロートアルガード®プレテクト、ロートアルガード®クリアブロックZ、エージーアイズ®アレルカットC など

花粉症には個人差があり、最盛期に花粉症を発症しない方もいます。花粉を家に入れないなどの日常できることに加え、症状に合わせた薬を使用することも有効とされていますので、花粉の飛散前や最盛期前に、薬局、ドラッグストアの薬剤師、もしくは、「かかりつけ薬剤師」と相談し、適切な薬を選択しましょう。

2018年02月27日

薬剤耐性(AMR)対策 ~抗菌薬(抗生物質)が効かない 細菌が増えています~

(この記事は2018年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 医薬品情報室

抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は多くの人々の命を救ってきました。しかし、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性」(AntimicrobialResistance:AMR)をもった細菌が世界的に増えており、大きな問題になっています。薬剤耐性によって世界で70万人が死亡しており、このままでは薬剤耐性による死亡者が、2050年には、現在がんで死亡している年間820万人を超える1,000万人が死亡するといわれています。

Onnee Heeaalltthh(ワンヘルス=1つの健康)・アプローチ

人、動物、環境の中に存在する感染症などのリスクに対して、それらの衛生に関わる人々が連携し、横断的に課題の解決を図っていくものです。中でも自然界での脅威が、人間を脅かす元凶となっています。抗菌薬は医療現場のみならず、獣医療、畜水産農業などの現場でも使用されています。薬剤耐性(AMR)を持つ遺伝子が、食品や環境などを介して人へ伝播する可能性があるため、ワンヘルス・アプローチの精神に則り、AMRCRCをはじめ、関係府・省庁や各分野の民間関係団体など他分野の専門家とともに一体的な取組みを進めていく必要があります。

西陣病院、ワンヘルス=1つの健康
西陣病院、薬剤耐性(AMR)西陣病院、厚生労働省

~私たちができること~

  • 風邪に抗菌薬は効きません
  • 処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう
  • 基本的な感染対策をしましょう

予防がやっぱり大切「手洗い・ワクチン」

2018年01月01日