西陣病院だより

骨粗鬆症を甘く見ていませんか? 骨折の予防のために。

(この記事は2024年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

リハビリテーション科 理学療法士・骨粗鬆症マネージャー 堀 博寿

昨年度より当院で取り組んでいる骨折リエゾンサービスについてご紹介させていただきます。

 皆さんは骨粗鬆症についてご存じですか。骨粗鬆症とは「骨の強度が下がり骨折のリスクが高まった状態」をいいます。骨粗鬆症は女性に多く、骨の強度を示す骨密度は閉経後の50代から急激に低下します。骨の強度が低下すると転倒など軽微な外力によって骨折に至ります。
 腰椎の骨折や足の付け根の骨折は歩くなどの基本的な動作や日常生活動作の低下に繋がります。1度骨折を起こした方は2度目の骨折のリスクが極めて高く、骨折を機に寝たきりになる方も少なくありません。そのため骨折を防ぐために骨粗鬆症の治療が必要となりますが、治療をされてない方や自覚症状がないため治療を途中で止めてしまう方が数多くおられます。この骨粗鬆症の治療開始と継続を支援し、転倒予防を図り、2度目の骨折を防ぐための取り組みを「骨折
リエゾンサービス(Fracture Liaison Service : FLS)」といいます。
 当院では 昨年度より足の付け根の骨折をした方を対象に骨折リエゾンサービスを開始しました。医師、看護師、薬剤師、栄養士、リハビリなど多職種で協力し、患者さんの生活スタイルにあった治療薬のご提案、骨を強くするためのバランスが取れた食事や骨を作る細胞を活性化させるための運動について説明をしています。また転倒を予防するために手すりの設置や段差解消など患者さんの個別性に配慮した自宅環境の見直しも行っています。
 当院には骨粗鬆症に対する基本的な知識と技能を有する「骨粗鬆症マネージャー」が 2名在籍しており、FLS活動に注力しています。10月20日は世界骨粗鬆症
デーです。骨粗鬆症と骨代謝障害の啓発を目的に制定され、「世界中から骨粗鬆症の骨折をなくす」ことを目標に掲げています。皆さんも「骨の健康」について見直してみませんか。

 

2024年09月01日

バイオ医薬品

(この記事は2024年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  科長  牛嶋 麻紀

皆さんは、バイオ医薬品についてご存じでしょうか?最近「バイオ医薬品」というお薬が多く開発され、これまで治療が困難だった病気の治療に貢献し、注目を集めています。

 バイオ医薬品は、遺伝子組み換え技術や細胞培養技術を用いて製造したタンパク質を有効成分とする最先端の医薬品で、製造には最新の設備での品質管理が必要とされています。そのため、開発や製造などに費用がかかり、患者さんの医療費負担が高くなってしまうという問題があります。
 そこで、特許切れのバイオ医薬品を他のメーカーが開発・販売し、医療費の負担を抑える「バイオ後続品(バイオシミラー)」というお薬が誕生しました。これは、ジェネリック医薬品(後発医薬品)と少し似ています。

バイオシミラーとジェネリック医薬品はどこが違う?

 どちらも「新薬特許が切れた後に発売された医薬品」ですが、バイオ医薬品の場合は「バイオシミラー」、それ以外の場合は「後発医薬品」と呼びます。
 バイオシミラーは先行バイオ医薬品(先に発売されたバイオ医薬品)と同様に、製造には高度なバイオ技術を用いるため、工程が多く複雑です。さらに、後発医薬品と異なり多くの試験やチェックを行うことが必要とされています。このように開発され、承認されたバイオシミラーは、先行バイオ医薬品と品質がほとんど同じで、同じ効果と安全性が確認された薬剤です。
 バイオシミラーの薬価は、原則、先行バイオ医薬品薬価の70%で算定されるというルールがあります。このため、患者さんの経済的負担の軽減や医療費の削減に貢献することが期待されています。西陣病院でもインスリンをはじめ、様々なバイオシミラーを採用しており、治療の質の向上、医療費の削減に貢献しています。

 

2024年09月01日

トローチについて

(この記事は2024年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  部長  石本 昌裕

今回は「トローチ」にスポットを当ててみましょう。おそらく、皆さんも一度は舐めたことがあると思います。

 のど飴とトローチの違いですが、のど飴には厳密な定義がありません。トローチは口の中でなめて、徐々に溶かすことによって、口や喉の細菌を殺したり増殖を防いだりする目的で使用します。トローチは口の中でゆっくり溶けるようにするため、普通の錠剤より硬く作られています。

トローチの効果とは?

 トローチの主な作用は、口腔内と咽頭の殺菌です。有効成分は消毒剤であり、代表的なトローチである「SPトローチ」の有効成分は、「デカリニウム」です。ほかにも殺菌剤の「塩化セチルピリジニウム」や消炎成分の「アズレンスルホン酸ナトリウム」が代表的です。

トローチは噛まないで

 口腔内や咽頭の殺菌を目的としているので、口の中で長時間とどめておいて、唾液によって溶かす必要があります。比較的錠剤が大きいため、噛み砕きたくなりますが、噛み砕いたり、飲み込んでしまっては効果がありません。必ず、ゆっくりと溶かすことを忘れないでください。トローチの成分は触れた部分にのみ作用しますので、成分が患部に触れる時間が長いほど効果的なのです。正しく使えば、舐め終わるのに7~8分程度かかると思います。なお、使用後30分間は飲食を控えることが推奨されています。

トローチはなぜ穴が開いている?

 唾液に触れる表面積が大きいほど、薬が溶け出しやすいという特徴もあるかと思いますが、本来の目的は、間違って飲み込んでしまい、喉に詰まったというような緊急時でも呼吸ができるように工夫して設計されたものです。

トローチは舐めすぎても大丈夫?

常用しても症状を予防する効果はありません。15歳以上の場合、どの商品も1日6個が上限となっています。1度に2個以上のトローチを使っても効果は上がりません。また、口腔内や腸内の細菌バランスを崩す可能性もあります。
トローチも薬です。注意事項を確認して、正しく使いましょう!

2024年07月01日

ステロイドの塗り薬について

(この記事は2024年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  木村 梨乃

 病院や薬局で、普段の喫煙や飲酒の状況を確認された覚えはありませんか?それ自体が身体に影響を与えることに加えて、薬の効果に影響が出る場合があります。いくつか例をご紹介します。

< お酒と薬 >

 薬をお酒と一緒に服用することは避ける、または、十分な時間を空けて服用しましょう。薬と一緒にお酒を飲むと、薬の効果が強まったり副作用が出やすくなったりする可能性があります。また、特に慢性的に飲酒をしている方では、薬を代謝する体内の酵素の働きが強まることで、一部の薬の効果が弱まる可能性もあります。
一般的には以下のようなことが予想されます。

睡眠導入剤、抗不安薬、抗うつ薬 … 眠気、ふらつきが強くなる
糖尿病薬 … 低血糖状態になりやすい
抗凝固薬 … 出血しやすくなる
利尿薬 … 血圧が下がりやすく、めまいを起こす
解熱鎮痛薬(アスピリン含)… 胃が荒れやすくなる
解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン含)… 肝機能障害を起こす

※ お酒の取りすぎには気を付けましょう!


< タバコと薬 >

 タバコの煙に含まれる化学物質により、一部の薬を代謝する酵素の働きが強まり、薬の効果を弱めてしまう可能性があります。例としてアセトアミノフェン、テオフィリン、ラサギリン、オランザピン、チザニジン、エルロチニブなどが挙げられます。また、インスリン治療をしている方では、インスリンの効果が弱まり、必要量が多くなる可能性があります。その他、女性ホルモン剤を服用している方で喫煙されていると、血栓症のリスクが高まる報告があります。
 薬の服用面や、身体の健康面からも禁煙を始めてみてはいかがでしょうか。これらは一部の例ですので、詳しいことが気になる方は薬局や薬剤師に相談することをお勧めします。喫煙・飲酒状況、服用している薬によって、影響は様々です。薬を自己判断で調節することは避け、医療機関に普段の喫煙、飲酒のしっかりお伝えいただくようお願いします。

 

2024年05月01日

ステロイドの塗り薬について

(この記事は2024年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  杉本 友里恵

 今回はステロイドの塗り薬についてのお話です。ステロイドとは副腎皮質ステロイドホルモンのことで、肌のかゆみや炎症のひろがりを抑える働きがあります。

 薬の強さは以下のように5段階に分けられます。これらを症状に合わせて使い分けます。

● ストロンゲスト:デルモベート など
● ベリーストロング:アンテベート、マイザー、ネリゾナ など
● ストロング:リンデロンV、ボアラ、メサデルム など
● ミディアム:リドメックス、キンダベート、ロコイド など
● ウィーク:プレドニゾロン など

ストロング、ミディアム、ウィークは市販の医薬品(OTC医薬品)でも売られています。

 

 副作用をこわがり、少量にしてしまうと治療が長引いたり、症状の勢いが止まらない原因になります。適量を十分量使用することで、効果が十分に得られます。薬の塗る量には以下のような目安があります。

◇◆ FTU(フィンガーチップユニット)◆◇
 
25~50gチューブを人差し指の先から第1関節の長さまで出した量をいいます。口径の小さい5gチューブでは人差し指の先から第一関節までを2回絞り出した量、ローションタイプでは1円玉大が1FTUの目安です。1FTUで、成人の手のひらの面積約2枚分に相当します。

<成人の場合>
● 顔・首:2.5FTU
● 胸・腹:7FTU
● 背中・おしり:7FTU
● 片腕:3FTU
● 片手:1FTU
● 片脚:6FTU
● 片足:2FTU

 患部を覆い隠せるよう、ステロイドをのせるように塗布します。イメージは肌がテカる、あるいはティッシュを当てるとくっつく程度です。あくまでも一般的な適量を示したものですので、医師から指示がある場合はそれに従って下さい。
 医師が炎症の程度、部位などに応じて細かく薬剤を選んでいます。そのため説明通り、塗る部位、塗り方、塗る量、塗る期間を守れば優れた効果があり、副作用の心配も減ります。わからないことがあれば医師、薬剤師に相談しましょう!

2024年03月01日

お薬の正しい飲み方

(この記事は2024年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  北村 有梨

新年あけましておめでとうございます。
お正月は生活リズムが崩れやすい時期でもあります。お薬も飲み忘れや、服用時間がずれることがあるかもしれません。そこで、お薬の正しい飲み方をもう一度確認しましょう。

お薬の効果を十分に得るためには、指示された量、回数、時間を守り、正しく服用することが大切です。

飲む時間について

食 前 食事の30分前 食 間 食後2時間くらい後
食直前 食事のすぐ前         ※食事の最中に服用することではありません。
食直後 食事のすぐ後 就寝前 寝る前30分以内
食 後 食事の30分以内 頓 服 症状のある時

 

お薬はコップ一杯の水かぬるま湯で飲むのが一般的です。水の量が少ないと、お薬が食道に張り付いて炎症などを起こすことがあります。また、水なしで飲むと薬を吸収しにくくなり、効き目が低下したり、遅くなることがあります。ただし、水分制限を指示されている場合は、医師の指示に従って飲んで下さい。

お薬を飲み忘れた場合に注意すること

 お薬を飲み忘れたことにすぐ気付いた場合は、気付いた時点で飲むようにしましょう。胃に負担がかかるようなお薬の場合は、何か口に入れてから服用するようにしましょう。次のお薬を飲む時間が近い時には、1回飲むのをやめるか、またはお薬を飲んで次に飲むお薬の時間を遅らせるようにします。

時 間 を
遅らせる
目      安
●1日3回飲むお薬 ・・・ 4時間以上あける
●1日2回飲むお薬 ・・・ 6時間以上あける
1日1回飲むお薬 ・・・ 8時間以上あける

 

 1回飲み忘れたからといって決して1度に2回分を飲まないで下さい。2回分を服用したからといって効果が期待できるわけではなく、副作用の症状が出る可能性が高くなり危険です。お薬の種類によって対処法が異なる場合もあるため、お薬の飲み方で分からないことがあれば、医師・薬剤師に相談するようにしましょう。

2024年01月01日

風邪と市販のお薬について

(この記事は2023年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  岩佐 優里香

 冬の前触れを感じる季節になりました。朝夕の冷え込みが厳しくなり、体調を崩しやすく、風邪を引きやすい時期です。今回は市販薬の風邪薬について、お話したいと思います。

風邪とは?

 医学的には「風邪症候群」といい、上気道(鼻やのど)の急な炎症の総称です。風邪の原因は約90%がウイルスであり、粘膜から感染して炎症を起こします。それによりくしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、痰、発熱といった症状が起こります。風邪薬は風邪を直接治すのでなく、症状を緩和させる目的で作られています。従って、症状に合わせたお薬の選択が必要になります。

症状とそれにあった成分について

現在よく処方されている睡眠薬は、大きく3つに分類されます。

  1. 熱を下げたり、頭痛を抑える成分
    解熱鎮痛剤というお薬です。アセトアミノフェンやイブプロフェンなど。NSAIDs(例ロキソプロフェンなど)と呼ばれるものは腎機能が低下している方には注意が必要です。

  2. 鼻水や鼻づまりを改善する成分
     抗ヒスタミン剤というお薬です。クロルフェニラミンマレイン酸塩やクレマスチンフマル酸塩など。副作用で眠気を引き起こすことがあります。

  3. 咳を止める成分
     鎮咳剤というお薬です。ジヒドロコデインやメチルエフェドリンなど。

  4. 痰を出しやすくする成分
       去痰剤というお薬です。ブロムヘキシンやカルボシステインなどがあてはまります。

  5. のどの痛みなど炎症を抑える成分
     抗炎症剤というお薬です。トラネキサム酸など。

 腎機能が低下している方やその他疾患によってはよくない成分が含まれていることがあります。また、病院で処方されるお薬と同じ成分や効果のものが含まれていることがあるため、市販薬を購入される場合はおくすり手帳を持参するなど薬剤師に相談するようにして下さい。数日間市販薬を服用しても症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

 

2023年11月01日

不眠とお薬について

(この記事は2023年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  寺崎 真帆

 一般成人の30~40%が何らかの不眠症状を有していて、不眠症は国民病と言われています。今回は身近な睡眠に関するお薬のお話です。

ドラッグストアで購入できる薬と、病院で処方される薬の違いは?

 ドラッグストアで購入できる薬は睡眠改善薬と呼ばれ、睡眠薬とは異なります。アレルギー薬などの眠たくなる副作用を利用し、一時的な不眠症状を緩和します。
 病院の処方薬は中枢神経系の機能に作用することで日常的な不眠症状に効果があり、医師の診断による処方が必要です。

睡眠薬の種類について

現在よく処方されている睡眠薬は、大きく3つに分類されます。

  1. GABA受容体作動薬
     脳の興奮を抑える神経伝達物質であるGABAの働きを促すことで、脳の活動を休ませます。作用時間の違いにより不眠の症状に合わせて使い分けることができ、服用後の効果を実感しやすいです。依存性、耐性(薬の効きが徐々に悪くなること)等の副作用に注意が必要です。

  2. メラトニン受容体作動薬
     体内時計のリズムを整える神経伝達物質であるメラトニンを刺激することで自然な睡眠を促します。依存性や耐性の副作用が少ない一方で、効果を感じるまで2週間ほど必要です。

  3. オレキシン受容体拮抗薬
     覚醒を維持する神経伝達物質であるオレキシンを抑えることで自然な睡眠を促します。副作用で悪夢を見ることがあります。


 ご自身の服用されている睡眠薬についてご質問があれば、医師・薬剤師までご相談ください。不眠の改善には、まず生活習慣の見直しをすること、そして睡眠薬を正しく服用することが大切です。医師の指示通りに服用すること、自己中断しないこと、お酒と一緒に服用しないことを守りましょう。

 

2023年09月01日

温湿布と冷湿布ってどっちがいいの?

(この記事は2023年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  神﨑 円花

 腰痛や関節痛、捻挫などに効果的な湿布ですが、病院で処方されるもの以外に、ドラッグストアなどで手軽に購入できるものもあります。温湿布と冷湿布は何が違うのでしょう。

 様々な湿布が売られていますが、「温かく感じる温湿布」「冷たく感じる冷湿布」のどちらを使用するのか、迷った方も多いのではないでしょうか。それぞれ『冷やすもの』と『温めるもの』と勘違いされている方も多いのではないでしょうか。

温湿布冷湿布

 温湿布はカプサイシン(唐辛子成分)やノニル酸ワニリルアミドの効果で血流を増やして温かく感じさせる、冷湿布にはメントール、サリチル酸メチル、ハッカ油等の効果で清涼感を持たせるという違いがあります。

 どちらも貼ると、ヒヤッとしますよね。いずれも水分が入っており、貼ると気化熱の作用で熱を奪い、体表面の温度を下げます。これらの成分は、実際に患部を冷却したり温めたりする作用が
あるわけではないので、ご自身の好みで選ぶといいでしょう。
 湿布薬に『冷感』や『温感』とあっても、実際に痛みそのものを改善する成分は、どちらの湿布も「インドメタシン「」ケトプロフェン」「フェルビナク」等の抗炎症・鎮痛作用のある成分です。薬としての効果は全て同じ。冷湿布温湿布でまったく同じものが配合されている商品もあります。湿布等の鎮痛消炎薬は、これらの成分を皮膚から吸収させ、炎症や痛みを抑えています。

 

 

この痛みは、冷やす?温める?

 基本的には、「痛みが出始めたばかりの急性期には強い炎症を抑えるために氷や保冷剤などで冷やす」「慢性的に痛みが出る場合には、ホットタオルやカイロなどで温めて血行を改善する」ことで、それぞれの痛みは緩和されやすいと考えられています。

2023年07月01日

薬とグレープフルーツジュースの関係

(この記事は2023年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  薬剤師  楠 斐未

 

 高血圧の薬が処方されたときに、薬剤師から「グレープフルーツジュースを飲まないでくださいね」と言われたことはありませんか?

薬とグレープフルーツ

 グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という成分は、医薬品を代謝(分解)する酵素の働きを阻害して、薬の効果を強めたり、副作用を出やすくしたりすることが知られています。フラノクマリン類は、果皮>果肉>種の順に多く含まれています。そのため、ジュースや果肉だけでなく、果皮を使用したジャムなどにも注意が必要です。グレープフルーツジュースによる影響は、個人差はありますが、十数時間~数日持続するため、影響がある薬を飲んでいる場合は、グレープフルーツジュースを飲まないようにしなければなりません。 

影響を受ける代表的な医薬品

カルシウム拮抗薬(血圧を下げる薬)
    アムロジピンやアゼルニジピンなど

免疫を抑える薬
    シクロスポリンやタクロリムスなど

コレステロールを下げる薬
    アトルバスタチンやシンバスタチンなど

グレープフルーツ以外の柑橘類は大丈夫か

●  影響が大きい柑橘類   グレープフルーツ、ハッサク、ブンタン、スウィーティー、ダイダイ、レモンの果皮など

●  影響が小さい柑橘類   ポンカン、スダチ、伊予柑、柚子、カボス、ネーブルオレンジ、レモンの果汁など

●  影響がない柑橘類            温州みかん、デコポンなど

 

 同じ種類で同様の効き目をもつ薬の中でも、柑橘類によって影響される薬と影響されない薬があります。どうしてもグレープフルーツの摂取を諦められないという方は、代替可能な薬がないか、医師や薬剤師に相談してみましょう。

2023年05月01日