西陣だより

便秘薬について

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 河野 透子

便秘とは、排便が3日以上なかったり、便が硬くて量が少なく、残便感があったりする状態を呼びます。多くは、水分や食事摂取不足、ストレスなどにより腸の動きが低下することで生じます。しかし、がんやポリープなど腸の病気が原因となることもあり、血便や激しい腹痛、嘔吐を伴う場合は早めに受診することが大切です。また、薬の影響で便秘を生じることがあり、コデインリン酸塩を含む咳止めや、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、鉄剤、降圧剤(カルシウム拮抗薬)などが挙げられます。

膨張性下剤

水分によって容積を増大させて便の量を増やす作用があります。作用はあまり強くありませんが、自然に近い形での排便ができます。便秘型の過敏性腸症候群に対し使用されますが、腹部膨満感の悪化に注意が必要です。ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®錠)(※慢性便秘症の適応はなし)などがあります。

浸透圧性下剤

腸内で水分泌を引き起こし、便を柔らかくし、回数を増やす作用があります。塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤の3種類があり、長期投与によって耐性を生じることがないのが特徴です。酸化マグネシウム(マグミット®錠)は安価であること、用量調節が容易であることから、昔から使用されている塩類下剤です。胃酸の分泌を抑える薬を服用している場合や、胃を切除している場合では効果が弱まる可能性があります。また、高齢者や腎機能が低下している場合には副作用として高マグネシウム血症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。糖類下剤にはラクツロース(ラグノス®ゼリーなど)があり、腸内細菌に利用されることで、浸透圧を高め排便を促す作用があります。副作用として腹部膨満感が現れることがあります。ルビプロストン(アミティーザ®カプセル)は副作用が少なく、腎機能が低下した人にも比較的安全に使用できますが、空腹時では吐き気が現れやすいため、食後に服用するようにしましょう。

刺激性下剤

腸の蠕動運動を亢進することで排便を促進する作用があります。センノシド(センノサイド®錠)、ピコスルファート(ラキソベロン®液)などがあります。通常は内服後8~10時間ほどで作用が現れるため、寝る前に使用することが多い薬です。効果は強力ですが、長期連用により耐性が起こる可能性があるため注意が必要です。

新しい下剤について

リナクロチド(リンゼス®錠)、エロビキシバット(グーフィス®錠)、ポリエチレングリコール製剤(モビコール®配合内用剤)など、次々と新薬が作られています。

 

便秘薬は症状や目的によって使い分ける必要があるため、薬の選択については医師、薬剤師と相談して下さい。便秘の予防として、まずは食事や適度な運動など、生活習慣の見直しを行うことも大切です。

 

 

2019年09月01日