西陣病院だより

漢方薬について

(この記事は2020年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部  主任  牛嶋 麻紀

漢方薬とは?

生薬のうち薬として効くものを、いくつか組み合わせた薬のことです。
「生薬」とは植物を中心に、動物や鉱物を含め天然のものから作られた薬です。すべての漢方薬はこの「生薬」の組み合わせでできています。もともとは中国が数千年の年月をかけて生み出してきた生薬の組み合わせがあり、それを日本の風土、日本人の体質に合わせて独自に発展させて現在の漢方薬となりました。また「漢方」という名前は、江戸時代に日本で盛んになった西洋医学を「蘭方」と言ったことに対し、漢の時代に伝わった東洋医学として「漢方」と名づけたことに由来します。
伝統的な漢方薬は小さく刻んだ生薬を煎じてのむ煎剤ですが、現在、一般的に手に入るものは、ほとんどが煎じ薬を濃縮し、乾燥させ飲みやすくしたエキス剤(顆粒剤、錠剤、カプセル剤)です。
漢方薬を服用するとき、コップ1杯の白湯に溶かして服用すると、本来の形に近い味や香りを再現できます。みなさんのよく知っている「葛根湯」はかぜのひきはじめに処方されることが多いですが、葛根(カッコン)、麻黄(マオウ)、大棗(タイソウ)、生姜(ショウキョウ)、甘草(カンゾウ)、芍薬(シャクヤク)、桂皮(ケイヒ)などの生薬が含まれています。

それぞれの部位と薬効は?

● 葛根(葛の根)・・・・・・・・・・・・・ 発汗、解熱、鎮痙
● 麻黄(麻黄の茎、枝)・・・・・・・・・ 鎮咳、感冒、関節痛
● 大棗(なつめ実・果実)・・・・・・・・・ 胃腸、鎮痙、滋養
● 生姜(ショウガの根茎)・・・・・・・・ 健胃、感冒、冷え症
● 甘草(甘草の根)・・・・・・・・・・・・・・・ 緩和、鎮痛
● 芍薬(シャクヤクの根)・・・・・・・・・・・ 腹痛、婦人病
● 桂皮(樹皮)・・・・・・・・・・・ 芳香性健胃、発汗、解熱

です。この成分に含まれる葛根や生姜は食材としてもなじみのあるものですね。
桂皮(ケイヒ)はクスノキ科の幹の皮を乾燥させたもので、私たちにとてもなじみ深いものです。洋風のスイーツや、京都の八つ橋のフレーバーなどにも使われている「シナモン」や「ニッキ」といえばわかる方もいらっしゃると思います。この桂皮はお香にも使用されていて、日本人にとても好まれる香りだといわれています。
漢方薬はまずい、苦いというイメージが先行していますが、どの生薬が配合されるかによってひとつひとつ味も違います。体質に合っている処方、体が必要としている処方であれば、比較的服用しやすく、体質に合っていない処方であれば、服用しづらくなると考えられています。
服用しにくい場合、ヨーグルトや服薬ゼリー、水あめにまぜて飲むこともできますが、「濃いお茶」「ジュース」「牛乳」「アルカリイオン水」などは薬の吸収に影響し、効果に影響を及ぼすことがありますので、やめましょう。
漢方薬の成分の多くは、腸内細菌によって、効きやすい形に変えられて効果を表します。そのため、空腹時のほうが、速やかに腸内細菌のいる場所に到達できます。また、人によって腸内細菌の量が違うため、効果の発現の仕方にも個人差があります。漢方薬を飲み続けることで、その成分に作用する腸内細菌が増えてきて、次第に効き目が良くなってきます。
漢方ではどちらかというと、体質改善が得意分野なため、長期にわたって飲み続けることもあります。効き目がないからといってすぐにやめてしまわず、気長に服用を続けましょう。

2020年09月01日

日本列島 ”食” めぐり「和歌山県」

(この記事は2020年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 今井 文恵

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます。

 

~ 茶がゆ ~

 和歌山県には茶がゆを食べる習慣があります。耕地に恵まれなかった紀州では、少量のお米でも満足感を得られる茶がゆが常食として食べられるようになったことに起因しています。紀州では、おかゆといえば、ほうじ茶で炊いた茶がゆのことを言い、各家庭それぞれのこだわりの炊き方があるそうです。冬は温かいものを、夏は冷やしたものを食べることが多く、梅干しや漬物との相性も良いです。茶がゆの香ばしさとサラサラとした喉越しは、蒸し暑い真夏の京都で食欲が落ちてしまっている方にもおすすめです。

 

●茶がゆ 1人分: エネルギー168kcal たんぱく質2.5g
材料 (2人分) 作り方

ごはん 200g (米2/3合分)
ほうじ茶の葉 大さじ3 (だしパックに入れる)
水 600ml

  1. ごはんをざるに入れ、米粒をつぶさないように流水でよく洗う。
  2. 鍋に水を入れて火にかけ、泡が出始めたら、だしパックに入れたほうじ茶葉を加えて煮出す。十分にお茶が出たら、茶葉は取り出す。
  3. 沸かしたお茶の鍋に洗った1.のごはんを入れ、吹きこぼれないように蓋をずらして置いたら約20分炊きます。
    ごはんが十分に水を吸ってやわらかくなったら、蓋をきっちりしめて火を切り約10分蒸らす。

 

 

2020年07月01日

医薬品副作用被害救済制度

(この記事は2020年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 辻 芙美

 本来、薬は病気を治す目的で服用しますが、目的以外の望ましくない作用 =「副作用」が出てしまう事があります。薬の副作用により重篤な健康被害を受けられた方に対し、救済を行う制度がありますのでご紹介します。

医薬品副作用被害救済制度とは?

医薬品を適正に使用したにもかかわらず、副作用により入院が必要になるほどの重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や医療手当、障害年金などの給付を受けることができる公的な制度です。

 

副作用により下記の状態になった場合に対象となります。
 ①医薬品等の副作用によって、入院またはやむを得ず自宅療養が必要
 ②日常生活が著しく制限される程度の障がい
 ③死亡

ただし、下記の場合などは、対象外になります。
 ①法定予防接種を受けたことによるものである場合
 ②がんその他の特殊疾病に使用される医薬品等で厚生労働大臣の指定するもの
 ③医薬品等の副作用のうち軽度な健康被害や医薬品等の不適正な使用によるもの

 

ここで重要なのは、「適正に使用した」ということです。添付文書に記載されている用法用量及び使用上の注意に従っていることが基本です。自己判断で医薬品の量を多く服用した場合や、家族に処方された医薬品を同じ症状があるからと、自己判断で服用し発症した場合などは、適正使用とは認められません。

 

請求の方法
健康被害を受けた本人またはその遺族が、医薬品医療機器総合機構(PMDA)に請求書に、健康被害が副作用によるものであることを証明する書類(医師の診断書、投薬証明書、受診証明書等)を添えて郵送します。

支給の可否
請求書や書類等を基に、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会で審議され、厚生労働大臣の判定結果をもとに決定されます。救剤給付の決定に不服があるときは、厚生労働大臣に対し、審査申立てをすることができます。

 

医薬品副作用被害救済制度の詳細は、PMDAのホームページをご覧ください。
この制度や副作用など、気になることがあれば、お気軽に薬剤師にご相談ください。

2020年07月01日

日本列島 ”食” めぐり「千葉県」

(この記事は2020年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 竹島 綾香

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます

 

イワシ

 全国でイワシの水揚げ量上位を誇る千葉県。特に入梅(梅雨の時期)に水揚げされるマイワシは入梅イワシと呼ばれ、1年の中で最も脂がのっておいしいといわれています。イワシの脂には血中中性脂肪を低下させる作用のあるEPAやDHAが豊富に含まれています。生姜煮や梅煮、なめろう、かば焼き、つみれ汁などイワシを使った料理は多岐にわたります。6月頃から旬をむかえるイワシを使ってさまざまな料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

イワシのコロッケ 1人分: エネルギー288kcal たんぱく質8.8g 塩分0.5g
材料 (4人分) 作り方

マイワシ 8匹
たまねぎ 1/4個
じゃがいも 大2個

小麦粉 大さじ4
塩 少々
卵 1/2個
こしょう 少々
パン粉 適量
揚げ油 適量

 

  1. イワシは3枚におろす。
  2. じゃがいもは皮をむき、乱切りにしたあと水にさらす。
  3. 2.を柔らかくなるまでゆで、木べらでつぶす。
  4. 玉ねぎはみじん切りにし、炒めたあと、3.に混ぜ、塩・こしょうを加える。
  5. 等分にした、4.をイワシで巻く。
  6. 小麦粉・溶き卵・パン粉の順に衣をつける。
  7. 170℃に熱した油で揚げる。

 

2020年05月01日

サプリメントと医薬品

(この記事は2020年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 植村 有加

サプリメントとは?

 「サプリメント」とは、食事によって十分に摂りきれない栄養素などを補うための補助食品の総称で、いわゆる「健康食品(「機能」を表示することはできません。)」と位置づけられているものです。日本では国によって制度化されている食品は保健機能食品のみです。保健機能食品は長らく「特定保健用食品」及び「栄養機能食品」の2つだけでしたが、2015年の食品表示法の施行により、食品の機能を表示できる食品として機能性表示食品が加わりました。今回は、「サプリメント」の特徴や医薬品との飲み合わせについてお話ししたいと思います。

薬との飲み合わせに要注意!

 サプリメントは、病気治療のために服用する医薬品の作用に影響を及ぼすことがあります。右記に薬との飲み合わせに注意が必要なサプリメントの例をいくつか挙げます。

 ●クロレラ含有食品 ・クロレラ含有食品・青汁(ケール)
ビタミンKを多く含み、血液をサラサラにするワルファリンの作用を阻害し、薬の効果を弱める。

 ●セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)
多くの薬と相互作用を起こし、薬の血中濃度を下げることで薬の効き目を弱める。

 ●カルシウム含有サプリメント
ある種の抗生剤と同じタイミングで服用することで、吸収されにくくなり、薬の効果を弱める。他にもビタミンCと利尿剤、ビタミンEと抗凝固剤、鉄と甲状腺ホルモン薬など、飲み合わせに注意が必要なサプリメントがあります。

手術や検査に影響のあるサプリメントに注意!

 ニンニク、イチョウ葉エキス、ノコギリヤシ、EPA/DHA等のサプリメントは出血の危険性を増強させる可能性があります。医師と相談して手術や検査前に休む必要があるサプリメントもあります。

サプリメントを使っているとき

 医薬品服用中のサプリメント摂取は十分注意が必要です。サプリメントを服用中で不安があったり、これから服用しようと考えていたりしている方は、医師・薬剤師にご相談ください。

2020年05月01日

日本列島 ”食” めぐり「長野県」

(この記事は2020年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 安井 裕香

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます。

 

~ 投汁蕎麦(とうじそば)~

 長野県の奈川に伝わる郷土料理です。奈川は標高の高いところに位置し、寒暖の差があり平地が少ないため、そばを主たる穀物として栽培されていました。とうじの語源は、浸して温める食べ方の事をさす「投汁(とうじ)」や、浸して茹でるというそば用語の「湯じ(とうじ)」とされています。竹で編んだ投汁カゴに小割のそばを入れ、山菜・きのこ・鶏肉等を入れた醤油仕立ての甘つゆの鍋でしゃぶしゃぶのように湯がき、お椀に移していただきます。

 

●がめ煮 1人分: エネルギー470kcal たんぱく質24.3g 塩分2.7g(汁を全て摂った場合)
材料 (2人分) 作り方

ゆでそば 2玉(160~170g/玉)
鶏もも肉 1/2枚
長ねぎ 1/2本
えのき 1/2パック
油揚げ 1枚(10cm×20cm程)
山菜水煮 1パック (100g程)

(A)--------------------
だし 400ml
みりん 小さじ1
砂糖 小さじ1
濃口醤油 大さじ2
--------------------------

  1. 鍋にお湯を沸かし、そばをかために茹で流水で十分に洗い、
    ざるにあげておく。
  2. 鶏もも肉はひと口大に切る。
  3. 長ねぎは小口切り、油揚げ・えのきは食べやすい大きさに分け
    る。山菜水煮は、水切りして大きいものがあれば食べやすい
    大きさに切る。
  4. 鍋につゆの材料Aと鶏肉を入れて、鶏肉の出汁が出たら、具
    材を入れ一煮立ちさせたら完成。

鍋ごと食卓へ持っていき、そばを少しずつ温かいつゆに浸けて、具材と一緒にお椀にとりながら頂いてください。

 

 

2020年03月01日

薬と長く付き合うために

(この記事は2020年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 谷崎 泰広

薬を服用するときに“副作用”が気になりますか?

副作用は大きく分けて2 種類あります。

① 期待した効果以外の作用が現れる
② 期待した効果より、作用が強く現れる

副作用の発現には次の3つの要因があります。

① 薬の特性 ② 他の薬や食物との関係 ③ 薬を服用する人
一般的に加齢とともに、副作用の発現率は増加する傾向にあります。

なぜ 副作用が起こりやすくなるのか?

薬の多剤服用
 加齢とともに、病気の種類も増えるため、それぞれの病気に対して服用する薬の種類も増加する傾向にあります。
 複数の薬を同時に服用すると薬の働きがお互いに影響しあい、副作用が現れやすくなります。

② 加齢に伴い臓器の機能が低下する

 加齢に伴う体の変化
● 水分量の低下・体脂肪量の増加
● 肝機能の低下(アルブミン〈タンパク質〉の減少・薬物の分解能力の低下)
● 腎機能の低下(薬物の排泄能力の低下)

副作用に早く気付くために

 みなさんが服用している薬の名前や作用などに興味を持ちましょう。週刊誌やテレビなどの情報ではなく、薬剤師や医師から薬の情報を聞きましょう。起こりうる副作用を事前に知っておくことで、迅速に対応することができます。
 正しい知識を得るために、医師や薬剤師にお薬手帳をみせてください。特に、様々な医療機関で複数の薬をもらっている場合は、お薬手帳の管理が役に立ちます。

おわりに

 副作用が心配だからと言って、自己判断で薬を中止・減量することは大変危険です。薬を服用していて、いつもと違う、変だなと思ったら医師、薬剤師に相談してください。

2020年03月01日

みなさんが、日常使用する「痛み止め(鎮痛薬)」の副作用を御存知ですか?

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 國枝 亜矢香

NSAIDsって、なに?

NSAIDsは、鎮痛薬の種類の1つで、Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略、日本語に直すと「非ステロイド性抗炎症薬」と呼ばれています。代表的なものに、ロキソプロフェンイブプロフェンという成分があります。お薬手帳や市販薬のパッケージで成分を確認してみましょう。

NSAIDsの副作用ってどうしておこるの?

痛みがある時、身体の中で痛みや発熱の原因物質(プロスタグランディンE2)が作られます。NSAIDsは、この原因物質が作られるのを邪魔して、痛みを和らげたり、熱を下げたりします。また、身体の中には、胃や十二指腸の粘膜を保護するためや腎臓の働きを保つために「血流を保つためのプロスタグランディンI2」が作られています。困ったことにNSAIDsは、E2とI2の違いが分からないため、身体に大切な「プロスタグランディンI2」が作られるのも邪魔します。

つまり、NSAIDsを漫然と服用していたら、消化管粘膜や腎臓を保護してくれるI2が少なくなり、消化性潰瘍や腎機能障害といった症状が出る可能性があります。

どうしたらいいの?

市販薬にも同じようなNSAIDsがあるため、薬剤師にあなたの病状を伝えて、適切な服用方法を聞いてください。また、出血などの重篤な消化性潰瘍や腎機能障害が出現してしまった場合には、NSAIDsを使用できなくなってしまうこともあります。本当にNSAIDsが必要な時に使用できるためにも、説明書の記載量を超えた過剰な服用や、漫然とした服用は避けるようにしましょう。

2019年11月01日

日本列島 ”食” めぐり「山形県」

(この記事は2019年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

栄養科  管理栄養士 須惠 裕子

全国各地の特色ある料理や名物をご紹介していきます

 

芋煮

「芋煮」は、山形県の郷土料理で、里芋やこんにゃく、季節の野菜などを主な具材とした鍋料理です。起源は諸説ありますが、江戸時代、紅花交易の船頭が里芋とボウダラを、京都の料理を参考に甘辛く煮て食べたのが始まりと言われています。現在の牛肉スタイルになったのは明治の初期とのことです。

 

芋煮 1人分: エネルギー370kcal たんぱく質25g 塩分2.7g(煮汁を全て摂った場合)
材料 (4人分) 作り方

里芋 600g
牛肉 400g
こんにゃく 1枚
長ネギ 2本
酒 大さじ3

しょうゆ 大さじ4
みりん 大さじ2
砂糖 大さじ2
水(又は出汁) 約1200mL

★お好みで、ごぼう・きのこ類を加えても美味しくなります

  1. 里芋(皮付きは皮をむき)を食べやすい大きさに切る。
    こんにゃくは食べやすい大きさにちぎり、あく抜きする。
    長ネギは斜め切りにする。
  2. 鍋に手順1の里芋とこんにゃく、水(または出汁)を入れて火に掛ける。
    酒、砂糖、みりん、醤油、牛肉の半分程度を入れ、
    里芋に火が通るまであくを取りながら煮る。
  3. 里芋が煮えたら、残りの牛肉を入れ、
    調味料で味を調え(分量は目安、味付けはお好みで)さらに煮る。
    長ネギを入れてひと煮立ちさせたら完成。

 

同じ山形県でも、内陸地域と日本海側に位置する庄内地域とでは食文化に違いがあり、今回ご紹介したのは内陸の芋煮で、庄内の芋煮は「豚肉で味噌味」と材料も味付けも異なるようです。

2019年11月01日

便秘薬について

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 河野 透子

便秘とは、排便が3日以上なかったり、便が硬くて量が少なく、残便感があったりする状態を呼びます。多くは、水分や食事摂取不足、ストレスなどにより腸の動きが低下することで生じます。しかし、がんやポリープなど腸の病気が原因となることもあり、血便や激しい腹痛、嘔吐を伴う場合は早めに受診することが大切です。また、薬の影響で便秘を生じることがあり、コデインリン酸塩を含む咳止めや、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、鉄剤、降圧剤(カルシウム拮抗薬)などが挙げられます。

膨張性下剤

水分によって容積を増大させて便の量を増やす作用があります。作用はあまり強くありませんが、自然に近い形での排便ができます。便秘型の過敏性腸症候群に対し使用されますが、腹部膨満感の悪化に注意が必要です。ポリカルボフィルカルシウム(ポリフル®錠)(※慢性便秘症の適応はなし)などがあります。

浸透圧性下剤

腸内で水分泌を引き起こし、便を柔らかくし、回数を増やす作用があります。塩類下剤、糖類下剤、浸潤性下剤の3種類があり、長期投与によって耐性を生じることがないのが特徴です。酸化マグネシウム(マグミット®錠)は安価であること、用量調節が容易であることから、昔から使用されている塩類下剤です。胃酸の分泌を抑える薬を服用している場合や、胃を切除している場合では効果が弱まる可能性があります。また、高齢者や腎機能が低下している場合には副作用として高マグネシウム血症を引き起こすリスクがあるため注意が必要です。糖類下剤にはラクツロース(ラグノス®ゼリーなど)があり、腸内細菌に利用されることで、浸透圧を高め排便を促す作用があります。副作用として腹部膨満感が現れることがあります。ルビプロストン(アミティーザ®カプセル)は副作用が少なく、腎機能が低下した人にも比較的安全に使用できますが、空腹時では吐き気が現れやすいため、食後に服用するようにしましょう。

刺激性下剤

腸の蠕動運動を亢進することで排便を促進する作用があります。センノシド(センノサイド®錠)、ピコスルファート(ラキソベロン®液)などがあります。通常は内服後8~10時間ほどで作用が現れるため、寝る前に使用することが多い薬です。効果は強力ですが、長期連用により耐性が起こる可能性があるため注意が必要です。

新しい下剤について

リナクロチド(リンゼス®錠)、エロビキシバット(グーフィス®錠)、ポリエチレングリコール製剤(モビコール®配合内用剤)など、次々と新薬が作られています。

 

便秘薬は症状や目的によって使い分ける必要があるため、薬の選択については医師、薬剤師と相談して下さい。便秘の予防として、まずは食事や適度な運動など、生活習慣の見直しを行うことも大切です。

 

 

2019年09月01日