西陣だより

高齢者の糖尿病短期入院について

(この記事は2022年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

糖尿病内科 部長
矢野 美保


  糖尿病の方は、経過や糖尿病の状態により、合併症や併発症を認めることが多いとされています。普段から自分の状態を知ることも大切ですね。当院では、65歳以上の方を対象に高齢者特有の合併症も含めて評価する短期入院を行っていますのでぜひ御利用ください。糖尿病の治療の目標は糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質の実現を目指すことと言われています。糖尿病があると、ない方に比べて、網膜症・腎症・神経症・動脈硬化などの合併症以外にも併発症としての骨粗鬆症・認知症なども多いと報告されています。一方で、治療の進歩に伴って、以前より糖尿病の合併症の発症が抑制されているとの報告もあります。日常から自分の合併症の状態を確認できればよいですね。西陣病院では、2週間の糖尿病教育入院以外に65歳以上の方を対象とした短期(2泊3日)の合併症評価の入院を行っています。

 

骨粗鬆症

骨粗鬆症とは骨の量(骨量)の減少や骨の性質(骨質)の悪化により、骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。糖尿病では骨密度だけでなく、骨質が悪化していると言われています。当院ではDXA(デキサ)法というX線を用いる方法で、骨密度だけではなく骨質も評価出来ます。

サルコペニア

サルコペニアとは加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。糖尿病ではサルコペニアになりやすく、サルコペニアでは糖尿病も悪化しやすいと言われています。体組成の検査で筋肉量を測定し、握力や歩行速度の計測で評価出来ます。

認知症

糖尿病ではアルツハイマー型認知症や脳血管型認知症になりやすいと報告されています。アルツハイマー型認知症は大脳の表面と海馬(記憶をつかさどる部位 )の萎縮を認めます。脳病変の有無はMRI、脳の血管の状態はMRA、海馬の萎縮はVSRAD(ブイエスラド)という検査方法で評価出来ます。

高齢者の短期入院で行う項目

● 一般検査(血液・尿検査・胸部X線・心電図)
● 骨密度
● 頭部MRI・MRA・VSRAD
● 頸動脈エコー・心エコー・ABI(動脈硬化・心臓の機能の評価)
● 腹部CT(膵臓や肝臓などの評価)
● InBody(インピーダンス法による筋肉量や体脂肪等の体組成の測定)
● 看護師による認知機能の簡易評価・嚥下機能 の確認
● 薬剤師による服薬確認・指導
● 管理栄養士による食事内容確認・簡易型自記式・食事歴法質問票(BDHQ)による食習慣の分析や、その改善に向けた具体的なアドバイス
● 理学療法士による筋力などの評価

※短期入院のため、血糖調節は行いません。

入院の結果をふまえて、なにか治療が必要な場合は退院後、主治医による処方の追加や必要時他科に相談して治療法を考えます。ぜひ、短期入院を活用してみて下さい。御希望の方は糖尿病内科にお問い合わせ下さい。

2022年07月01日