西陣病院だより

高齢者の糖尿病短期入院について

(この記事は2022年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

糖尿病内科 部長
矢野 美保


  糖尿病の方は、経過や糖尿病の状態により、合併症や併発症を認めることが多いとされています。普段から自分の状態を知ることも大切ですね。当院では、65歳以上の方を対象に高齢者特有の合併症も含めて評価する短期入院を行っていますのでぜひ御利用ください。糖尿病の治療の目標は糖尿病のない人と変わらない寿命と生活の質の実現を目指すことと言われています。糖尿病があると、ない方に比べて、網膜症・腎症・神経症・動脈硬化などの合併症以外にも併発症としての骨粗鬆症・認知症なども多いと報告されています。一方で、治療の進歩に伴って、以前より糖尿病の合併症の発症が抑制されているとの報告もあります。日常から自分の合併症の状態を確認できればよいですね。西陣病院では、2週間の糖尿病教育入院以外に65歳以上の方を対象とした短期(2泊3日)の合併症評価の入院を行っています。

 

骨粗鬆症

骨粗鬆症とは骨の量(骨量)の減少や骨の性質(骨質)の悪化により、骨が弱くなり骨折しやすくなる病気です。糖尿病では骨密度だけでなく、骨質が悪化していると言われています。当院ではDXA(デキサ)法というX線を用いる方法で、骨密度だけではなく骨質も評価出来ます。

サルコペニア

サルコペニアとは加齢による筋肉量の減少および筋力の低下のことを指します。糖尿病ではサルコペニアになりやすく、サルコペニアでは糖尿病も悪化しやすいと言われています。体組成の検査で筋肉量を測定し、握力や歩行速度の計測で評価出来ます。

認知症

糖尿病ではアルツハイマー型認知症や脳血管型認知症になりやすいと報告されています。アルツハイマー型認知症は大脳の表面と海馬(記憶をつかさどる部位 )の萎縮を認めます。脳病変の有無はMRI、脳の血管の状態はMRA、海馬の萎縮はVSRAD(ブイエスラド)という検査方法で評価出来ます。

高齢者の短期入院で行う項目

● 一般検査(血液・尿検査・胸部X線・心電図)
● 骨密度
● 頭部MRI・MRA・VSRAD
● 頸動脈エコー・心エコー・ABI(動脈硬化・心臓の機能の評価)
● 腹部CT(膵臓や肝臓などの評価)
● InBody(インピーダンス法による筋肉量や体脂肪等の体組成の測定)
● 看護師による認知機能の簡易評価・嚥下機能 の確認
● 薬剤師による服薬確認・指導
● 管理栄養士による食事内容確認・簡易型自記式・食事歴法質問票(BDHQ)による食習慣の分析や、その改善に向けた具体的なアドバイス
● 理学療法士による筋力などの評価

※短期入院のため、血糖調節は行いません。

入院の結果をふまえて、なにか治療が必要な場合は退院後、主治医による処方の追加や必要時他科に相談して治療法を考えます。ぜひ、短期入院を活用してみて下さい。御希望の方は糖尿病内科にお問い合わせ下さい。

2022年07月01日

最先端の内視鏡システムを導入しました

(この記事は2022年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科部長
消化器内視鏡センター長
稲垣 恭和

消化器内視鏡センターでは 2022年1月より内視鏡システムを全てオリンパス社製の最上位機種であるEVIS X1に更新し、最新のスコープも導入致しました。EVIS X1は世界初の5LED 光源を搭載しており、EDOF(Extended Depth of Field:被写界深度拡大)などの最新観察技術により、より明るく鮮明な画質での内視鏡観察が可能となっております。また、オリンパス社独自の NBI/RDI/TXI などの特殊光観察技術により、通常では発見できない微細病変の発見や、より安全で確実な内視鏡治療が可能となりました。当センターでは今後もチーム一丸となってより良質な医療を提供させて頂けるよう努力してまいります。

 

                             

2022年05月01日

心不全について

(この記事は2022年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 主任部長
中森 診


 
 
 心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。心不全の原因は狭心症や心筋梗塞のほか、心臓の筋肉に障害が起こる心筋症、心臓の弁に障害のある心臓弁膜症などですが、高血圧の人は心臓肥大を生じて心不全になりやすいと言われています。日本循環器学会「急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)」では、心不全にA~Dの4つのステージが定められています。

 

心不全について

ステージA
心不全の危険因子を抱えている段階で、糖尿病や高血圧など心不全悪化の原因になる危険因子を抱えているものの、心臓の働きは正常で心不全症状もありません。

ステージB 
心臓の働き異常(心臓肥大、心拍出量低下)などが出てきた段階で、心不全の原因になる心筋梗塞、弁膜症、不整脈などを発症していますが、まだこの段階では心不全症状はありません。

ステージC
心臓の働きの異常により、息切れ、むくみ、疲れやすさなどの症状が現れた時で、心臓の働きの異常に応じて治療薬が異なります。

ステージD
心不全が進行して治療が難しくなった段階です。

 心不全の症状には、収縮機能(血液を送り出す機能)が低下して十分な血液を送り出せないことから起こる症状と、拡張機能(全身の血液が心臓に戻る機能)が低下して血液がうっ滞することによって起こる症状があります。ポンプ機能低下による症状は、疲労感、不眠、冷感などがあり、血液のうっ滞による症状は、息切れ、呼吸困難、むくみなどがあります。心不全には、急性心筋梗塞などにより急激に心臓の働きが悪くなり、命の危機にさらされることもある「急性心不全」と、徐々に進行して心不全の状態がずっと続く「慢性心不全」があり、慢性心不全は急に悪くなって急性心不全となることもあり、入院のたびに全身状態が悪化していきます。
 最初のうちは、階段や坂道などを登ったときにだけ息が切れる程度ですが、進行すると少し身体を動かすだけでも息苦しくなります。さらに悪化すると、じっとしていても症状が出るようになり、夜中に寝ている時でも咳や息苦しさで寝られなくなります。最近、収縮機能が正常の心不全(拡張不全)が多いことがわかってきました。静脈や肺、心臓などに血液が溜まりやすくなってしまうもので、有効な治療法が限られます。また、高齢者では自覚症状が現れにくく、息切れがあっても、「歳だから仕方がない」などと見過ごし易いため、放置したまま悪化してしまい、夜中に呼吸困難を起こして救急搬入される患者さんも少なくありません。

 息切れや動悸は、狭心症や不整脈など、ほかの心臓の病気が隠れていることもありますので、今までできていた動作ができなくなった、急に体重が増えた、動悸や息切れを感じるときには、心不全の可能性がありますので早めにかかりつけ医に相談して下さい

2022年03月01日

膵臓がんについて

(この記事は2021年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科 副部長
伴 尚美


   日本人の死亡原因の 1 位は男女ともに「悪性新生物(がん)」ですが、がんは決して治らない病気ではなく、発見が早ければ完治もみこめる病気です。日本人に多い胃がんは、検診や検査の体制も整い、発症後も回復される方が増えています。
 一方で、予後が悪く難治性のがんといわれるのが膵臓がんです。全国統計では、男性では肺がん、胃がん、大腸がんについで死因の第4位、女性では大腸がん、肺がんについで第3位となっています。
 膵臓は周囲を他の臓器や血管に囲まれおり、周囲の動脈に拡がるとがんの大きさが小さくても手術ができないこともあります。周囲の血管に拡がり全身転移をする、またおなかの深いところにありみつかりにくいことなども予後の悪い原因となっています。
 膵臓がん全体の 5 年生存率は約11%と非常に不良ですが、10~20㎜の大きさで見つけた場合は約50%、10㎜以下の大きさで見つけることができれば80%以上に改善することが分かっています。

 

膵臓がんの症状

腹痛、食欲不振、腹部膨満感、体重減少、黄疸、糖尿病の発症・増悪、背中の痛み、などがあげられます。初期のころには無症状であることも多く、早期発見が難しいと言われています。

膵臓がんの危険因子

糖尿病の発 症・増悪、膵臓がんの家 族 歴、生活習慣(飲酒・喫煙)、肥満、膵炎、膵のう胞、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあげられます。

膵臓がんのおもな検査方法

 血液検査、腹部超音波検査、CT、MRI、また必要に応じて内視鏡的膵管造影検査、超音波内視鏡検査などが行われます。がんの見落としを防ぐために違う検査を相互に組み合わせ総合的な評価が必要です。

超音波内視鏡検査について

 膵臓は胃の後ろ側、おなかの深いところにあり、通常の腹部超音波検査ではみえにくいことがあります。超音波内視鏡検査とは、先端に超音波装置のついた内視鏡を胃に挿入し、より近くから膵臓を調べる検査です。これにより、膵臓全体を調べることができ、小さな腫瘍をみつけることができます。
 もし腫瘍がみつかった場合は、内視鏡を通して針を膵臓に刺し細胞を取り出す検査が可能です。この細胞を取り出す検査を、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)といいます。当院においても、7年前より超音波内視鏡機器を導入し、微小膵臓がんの診断に役立てています。

 

※ 膵臓がんは早期発見がいまだ難しいのが現状です。お腹が痛くて胃カメラをしたけど異常がないと言われた方、危険因子のある方、また危険因子がなくても膵臓が気になる方はぜひ一度ご相談ください。

2021年03月01日

大腸がん検診を受けましょう

(この記事は2020年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科部長
消化器内視鏡センター長 
稲垣 恭和



 
 日本人の死亡原因の1位は男女ともに「悪性新生物(ガン)」ですが、なかでも大腸がんは年々増加し続け、2016年の統計で罹患数は全がんの中で 1位となり日本人が 1番なりやすいがんとなりました。男性はおよそ11人に 1人、女性は13人に 1人が一生のうちに大腸がんと診断されており、がんによる死亡数については女性では1位、男性でも3位となっています。(出典:人口動態統計2018年(厚生労働省))

 

大腸がんの症状

進行した大腸がんは便秘、腹痛および血便などの症状で発見されることが多いですが、早期のがんではほぼ無症状です。そのために症状のない状態でのがん検診が望まれます。

大腸がんと生活習慣の関連

生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、喫煙、飲酒、肥満および加工肉の摂取などが挙げられています。一方で、運動やコーヒーなどが大腸がんの発生を抑制する可能性のある因子とされています。これらのことに気を付けて規則正しい生活を送ることで大腸がんを予防していきましょう。

 大腸がん検診

大腸がん検診は40歳以上の方は毎年の受診が日本の厚生労働省より推奨されています。
検診では便中のわずかな血液を検出することができる便潜血検査が行われています。大腸がんはもろく血が出やすいため、便に微量に混入する目に見えない血液を検出します。便の採取は自宅で行う事が出来ます。便の表面を採便用の棒でまんべんなくこすり採取します。食事制限の必要もない簡単な検査です。
検診受診者の実に約7%の方が陽性となります。陽性の方は、大腸がんの疑いがありますので精密検査として大腸内視鏡検査が必要となります。検診陽性の方の約3%に大腸がんが見つかります。それでも検診陰性の方よりは何十倍も大腸がんである可能性が高いので検診陽性となれば大腸内視鏡検査が必要です。進行したがんでも毎日便に血が混入するわけではなく血が混入しないこともあり、そのような日の便であれば検査は陰性となってしまいます。ですから検診は必ず2日分の便を提出し、また毎年続けて受けることが重要です。
大腸がん検診で発見されるがんは60%以上が早期がんです。検診で発見される大腸がんは症状がでてから病院を受診し発見されるがんよりも早期に発見されることが多いため、治癒率も高いことがわかっています。大腸がんは、早期であれば90%以上が完治します。要精密検査となった場合には、必ず検査をお受けください。

大腸内視鏡の進歩

大腸内視鏡検査は、お尻から太さ 1cm 強の内視鏡を入れて大腸を調べる約 20~30分くらいの検査です。痛みを伴うこともありますが、細いカメラを使ったり、ベテラン内視鏡医がカメラの扱いを工夫することで軽減でき、希望があれば麻酔をしながら行うことも可能です。また大腸内視鏡治療の進歩は著しく、従来は外科治療が必要であったがんに対しても内視鏡で切除ができるようになってきています。大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) は近年発達した手技で、20mm 以上の大きな腫瘍でも切除することが可能であり、当院でも2013年より導入し良好な成績を得ています。

2020年09月01日

大動脈弁狭窄症とは

(この記事は2020年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医長
前田 英貴



大動脈弁狭窄症とは、大動脈弁の開口部が狭くなり左心室から大動脈への血流が阻害される弁膜症疾患です。狭窄が軽度のうちは自覚症状がほとんどなく、高度な狭窄となり症状が現れてから、初めて見つかるケースが少なくありません。

 無症候の期間は長く続きますが、狭窄が進行すると心臓に負担がかかり動悸や息切れ症状が出現し、重症例では胸痛や失神、突然死を引き起こす可能性もあります(図①)。

最近は加齢に伴う弁の石灰化が原因のものが多く、高齢化が進む日本でも患者さんの数は増加し続けています。2017年の段階で60-74歳の2.8%、75歳以上の13.1%が大動脈弁狭窄症になっていると言われており、決して珍しい病気ではありません。

 大動脈弁狭窄症は症状と心臓の聴診で疑うことができ、心臓超音波検査(心エコー検査)で簡単に診断と重症度を評価することができます。狭窄が軽度から中等度のうちは、心臓の負担を和らげる薬物治療を行いながら、定期的な心エコー検査で進行の有無を観察していきます。根本的な治療法は、いよいよ狭窄が重症まで進行した場合に行われる、開胸手術による大動脈弁置換術(SAVR)です。しかし、開胸手術は体への負担が大きく、高齢者や体力が低下した手術リスクの高い患者さんに対しては、手術が困難となることが課題となってきました。そこで注目されているのが経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)です。カテーテルに沿って折りたたまれた人工弁を運搬し、大動脈弁に留置してくる治療です(図②)。

 SAVRと比較して体への負担が少なく、カテーテル挿入部の小さな傷で済む、入院期間が短い等のメリットがあります。手術リスクが高い患者さんにおいて、術後5年の成績でTAVIが従来のSAVRに劣らないことが証明されています。日本では2013年10月に保険適応されて以降、技術や機器の進歩に伴い身近な治療になりつつあります。これまで治療を諦めざるを得なかった高リスクの患者さんでも、治療を受けることができる時代になっているのです。

 大動脈弁狭窄症は正しく診断し、治療できるタイミングを逃さないことが重要です。当科では大動脈弁狭窄症の診断と評価を行うことが可能です。薬物治療を行いながら、患者さんとご家族の意思を尊重した上で、適切なタイミングでSAVR、TAVI共に治療実績のある病院へ紹介させていただきます。最近胸の症状が気になる場合や大動脈弁狭窄症をはじめとする弁膜症疾患でお困りのことがございましたら、いつでもお気軽にご相談ください。

2020年07月01日

健康診断で血糖が高いと 言われたら

(この記事は2020年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医員
広中 順也



糖尿病の方は予備群も含めると2000万人いるといわれており、健康診断で血糖値が高いことを指摘されている方はたくさんいます。今回は血糖値が高いことで何が問題となるのか、どう対応すればよいのかをお話しさせていただきます。

特に症状がないから放っておいて大丈夫?

初期の糖尿病はほとんど症状がなく、「糖尿病だと言われたけれど何も困っていない」と医療機関を受診されない方は沢山いらっしゃいます。国民健康・栄養調査では「糖尿病が強く疑われる人」であっても約4人に1人は治療を受けていない、あるいは治療中断しています。特に30歳代では6割が受診や治療していないとの報告もあります。ある程度病状が進むと口喝・多飲・多尿といった症状がでてきます。症状がなくても3大合併症といわれる神経障害、網膜症、腎症は進んでいき、また動脈硬化が進むことで心筋梗塞、脳梗塞、認知症、癌などのリスクも上がってきます。

糖尿病は早期発見・早期治療が重要です

糖尿病は早期ほど治療効果が高い疾患です。「放っておいたら良くなった」などということはありませんし、治療を先延ばしにすればするほど、合併症のリスクが高まります。また、お金がかかるために受診されない方もいますが、合併症が進行するとさらに治療費はかかり、金銭的にも早期から治療した方が経済的です。

まずは病院に来て相談して下さい

健康診断で空腹時血糖や食後血糖が高い場合は、医療機関を受診しHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という過去1-2か月の平均の血糖の指標となるマーカーを測定してください。空腹時血糖126mg/dl以上、食後血糖200mg/dl、HbA1c 6.5%以上では糖尿病が強く疑われます。糖尿病の種類や原因は人によって様々で、当然病気の進行具合も人によって様々です。癌や内分泌の異常によって血糖値が高値となることもあります。血糖値が高くなる初期の段階で発見し、適切な治療を続ければ、合併症の大部分は予防できるとされており、まずは医療機関を受診ください。

2020年03月01日

高齢者の低栄養が問題です

(この記事は2019年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 医長
西村 智子



現代の日本で高齢者の栄養失調が問題となっていることをご存じでしょうか?
「粗食が健康にいい」「野菜中心」と食事に気を付けているご高齢の方々、
段々と体重が減ってきていませんか?
栄養失調になると体力が落ち病気になりやすく、また治りにくくなります。

現代の日本で栄養失調?

日本の高齢者の2割が低栄養であるといわれ、およそ半数に低栄養のリスクがあるといわれています。BMI(body massindex = 体重[kg]/ 身長[m]2)を指標にすると18.5未満の場合低栄養と考えられます。高齢者は食欲が低下し、飲み込む力が弱くなり、噛む力も落ちるので食べられる量が少なくなることが主な原因です。また生活習慣病を心配してカロリーや脂肪を控えめにすることは中高年世代には必要なことですが、高齢になってもそれを続けていると栄養失調になることがあります。

低栄養は何が問題?

肺炎や癌、手術後などたくさんの病気や傷が治りにくく入院期間が長引くと言われています。
また骨折や転倒、認知症の危険性も高まるとされています。
「図1」はもともと低栄養がある高齢患者さんが病気や事故で救急入院したとき経過が悪いことを示すデータです。

低栄養を防ぐためには?

バランスの良い食事

バランス良く食べ、特にたんぱく質(肉・魚・大豆など)は筋肉を増やして体力がつきますので積極的に摂りましょう。
高齢者ほど必要な栄養素と言えます。(肝不全や腎機能障害がある場合は担当医とご相談ください。)

食べやすい形にする

硬いものや噛みにくいものは柔らかく煮たり小さく切ったりして食べやすくしましょう。歯が悪い時は治療しましょう。

間食を利用する

すぐにおなかがいっぱいになる場合は間食をして食べる回数を増やしましょう。市販の高カロリー栄養剤を利用するのも効果的です。

食べる順番に気を付ける

最初に汁物で口を潤し、野菜やおかずから食べ始めましょう。ごはんを先に食べるとすぐにおなかがいっぱいになり量が食べられず栄養も偏ってしまいます。

 

体重を維持し低栄養にならないためには日々の食事への意識が大変重要です。
超高齢化社会である我が国では医療費増加の抑制にもつながりひいては国民全体の福祉にもつながります。高齢者と家族、地域が一体となって高齢者の低栄養を防ぐ枠組み作りが必要です。

 

 

2019年09月01日

食中毒について

(この記事は2019年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 下村 考史

内科 医員
下村 考史



食中毒とは有害物質に汚染された飲食物を口にすることで様々な健康被害を受ける病気のことです。
これからの季節は気温も高く、湿度も高い季節になり食事なども傷みやすい季節となるために食中毒が起きやすくなります。今回はそういった食中毒についてご説明させていただきます。

 

まずは食中毒の原因についてです。食中毒の大半をしめるのがウイルスまたは細菌によるものですが、魚介類や肉類などについている寄生虫やキノコ毒などに代表される自然毒などでも発症するため以上の4種類におおまかに分類されます。

これからの季節に多くなってくるのは細菌性食中毒となりますので少しお話させていただきます。
細菌性食中毒がなぜこれからの季節に増えてくるかというと、細菌が高温多湿な環境下で増殖しやすいことが原因と言われています。特に有名なものがO-157やサルモネラ、カンピロバクター、黄色ブドウ球菌といったものであります。これらの予防のために最も重要になってくることは食材の管理と調理環境にあると言われています。食中毒は飲食店で起こるものと考える方も多いと言われておりますが、実は自宅の調理でも起こりうるということをまず把握していただく必要があると思います。

食中毒

最も重要なことは手指衛生です。手洗いをしっかりと行うことで手の細菌の食材への付着を防ぎます。続いて食材の管理ですが、少しの時間といってもやはりこれからは高温環境となりますので、冷蔵庫などの冷温環境で保存することが望ましいです。また生食するものでは新鮮であっても魚介類などは真水でしっかりと洗浄する、卵も生食をする際は原則新鮮なものとし洗浄する、などのこころがけが必要です。あとは調理の際に食材にしっかりと火を入れることや肉類や魚介類の調理などを行う際は調理器具をこまめに洗浄して他の食材に細菌を移さない努力することなどが日常で注意していただけることと思います。実際に食材各々に対する注意はできていても、包丁に付着した菌がサラダなどに付着して、そのサラダを生食することで食中毒を起こす事例が報告されており注意が必要です。

食中毒

 

ウイルス性食中毒では有名なノロウイルスなどがありますが、こちらは冬季に流行するものです。これらは2枚貝などに存在していることが多く、牡蠣やハマグリなどに注意が必要です。寄生虫では鯖の生食でのアニサキスなどが有名で、自然毒ではキノコ毒やフグ毒などが有名でこれらには季節性はありません。これらの摂取には充分に気をつけて下さい。

 

以上食中毒についてお話させていただきました。上記で説明させて頂いたようなことに注意して生活して頂き発症を予防することが最も重要ですが、もし腹痛、嘔吐、下痢、発熱などの症状がある場合には水分摂取を励行して頂き、医療機関の受診をお勧めいたします。

 

 

2019年07月01日

NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)をご存知ですか?

(この記事は2018年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 内科 副部長 中村 英樹

内科副部長
中村 英樹



みなさん、NASH(ナッシュ)という病気をご存知ですか?
脂肪肝なら聞いたことがあるという方は多いと思いますし、中には健診などで脂肪肝と言われたことがある方もおられるかもしれません。

脂肪肝は飲酒など様々な原因でおこりますが、近年ほとんどお酒を飲まないにもかかわらず、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など、いわゆる生活習慣病が原因で脂肪肝を発症するケースが増えています。これを非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)といいます。その多くの方は単純な脂肪肝(NAFL)で、これは比較的予後良好な疾患ですが、NAFLD の患者さんのうち約20%の方は肝臓に炎症や線維化があり、肝硬変や肝がんに移行する予後不良のものです。これが非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)です。日本でも広く認識されるようになったのはここ20年ほどのことですが、生活習慣病の蔓延とともに注目を集めています。

肝がんの原因疾患としてはC型肝炎が有名ですが、最近新しい内服の抗ウイルス薬が登場し、ほとんどのC型肝炎患者さんは治ってしまいますので、C型肝炎ウイルスが原因の肝がんは今後減少していくと考えられます。その一方で生活習慣病患者さんの増加に伴い、このNASH からの肝がんが今後増えてくるだろうと予想されています。

日本人では成人男性の30%以上、女性の20%近くがNAFLD で、NAFLD は1,000~1,500万人いると考えられ、そのうちの20%(200~300万人)がNASH と言われています。わが国ではここ10年間でNASH 患者さんが倍増しています。つまり、早急な治療を必要とする患者さんが、自覚症状のないままに生活を送っているケースが非常に多いのです。

健診などで脂肪肝を指摘されたとき、単純な脂肪肝なのか、NASH なのかを判別するには、入院して肝生検(肝臓の組織を採取して顕微鏡で調べる検査)を行い、炎症や線維化があるかないかを確認する必要がありますが、最近は血液検査や特殊な超音波検査といった、より身体に負担が少ない判別方法が研究、開発されてきており、今後当院でも積極的に取り入れていこうと考えています。

また、肝臓の線維化を抑えて、肝硬変や肝がんへの進行を抑えようという新しいお薬の開発も進んでおり、有望な治療薬として期待されています。

まずは脂肪肝にならないように、食生活に気を付けたり、運動習慣を身に付けるなど、生活習慣を見直して予防していくことが最も大切ですが、脂肪肝を指摘された方は、是非一度主治医の先生にご相談ください。

 

2018年11月01日