西陣病院だより

アスピリンアレルギーについて

(この記事は2018年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 塩見 紗和子

みなさん、薬物アレルギーをご存じですか?
特に抗生物質、解熱鎮痛薬、ホルモン剤、酵素製剤、造影剤などは他の薬に比べてアレルギーを起こしやすいと言われています。
今回は皆さんもよく耳にする、アスピリンアレルギーと呼ばれるものについてお話します。

アスピリンとは?

ステロイド以外で抗炎症作用をもつ薬の総称を非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と呼び、アスピリン(アセチルサリチル酸)はこのNSAIDsの代表格とも言える薬です。
NSAIDsには、アスピリンのほかにもロキソプロフェン、アセトアミノフェン、イブプロフェンなどがあり、医療施設や薬局にあるほとんどの解熱鎮痛薬に使用されています。

アスピリンアレルギーの症状

症状は喘息型、蕁麻疹型に大別されます。
喘息型の症状は喘息発作(アスピリン喘息、NSAIDs過敏喘息と呼ぶこともあります)と鼻症状です。もともと、気管支喘息を持っている人が、過敏症状によって強い喘息発作と鼻汁・鼻閉が誘発されるのが特徴です。
蕁麻疹型の症状は、蕁麻疹(アスピリン蕁麻疹とも呼ばれます)、血管性浮腫です。もともと、慢性蕁麻疹をもっている人が、過敏症状によって蕁麻疹や、まぶた・唇が腫れる血管性浮腫が誘発されることもあります。

アスピリン以外の解熱鎮痛薬なら使ってもいい?

アスピリンアレルギーはその呼び名から、 アスピリンのみに対する過敏症と誤解されがちですが、非ステロイド性抗炎症薬全般に対する過敏症状のため、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなども症状が起こる可能性があります。

ピリン系とアスピリン系は一緒?

アスピリンは「ピリン」の名前が付いていますが、ピリン系ではありません。ピリン系は解熱鎮痛薬の一種であり、昔の市販のかぜ薬に使用されていましたが、アレルギーが多くみられることから、現在日本の市販のかぜ薬への使用が禁止されています。

薬物アレルギーを起こすと重篤な場合、死に至ることがあるため注意が必要です。薬物アレルギーが疑われる場合、初めは軽症に見えても重篤化することがあるので、すぐに医師・薬剤師に相談しましょう。
薬物アレルギーを起こした場合は、たとえ軽症でもその薬の名前を覚えておき、必ず医師・薬剤師に伝えましょう。アレルギー反応は個人の体質によって異なるので、過去の薬に対する特別な反応は、自分で書き残しておくことが大切です。

2018年05月01日

花粉症とくすりのはなし

(この記事は2018年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 薬剤師 東野 公亮

3月から4月は、春に向かって暖かくなっていく時期ですね。この時期は花粉症に悩まされる方が多くいらっしゃいます。今回は、花粉症とくすりのおはなしです。

花粉症とは?

日本人の約25%が悩まされているとされる花粉症は、主に、スギやヒノキなどの花粉が原因となり、くしゃみ・鼻水などのアレルギー症状を起こすものを指します。

今からできる花粉症対策って?

帽子や眼鏡やマスク着用、花粉を家に入れないなど日常できることに加え、花粉症対策で大事なのは、
①医療機関を受診し、どの植物の花粉にアレルギーがあるのか、その花粉の飛散時期を把握する。
②該当する花粉が飛散する前や最盛期前に、薬を服用する。
(前もって薬を服用することで、花粉症の最盛期の症状を軽くすることができます。)

花粉症に効く薬ってなにがあるの?

花粉症に効く薬は、市販薬を含めると多くの治療薬が存在します。下記は市販薬の一部です。

内服薬
◇くしゃみ、鼻水、かゆみなどに
アレジオン®20、アレグラ®FX、ザジテン®AL鼻炎カプセル、クラリチン®EX OD錠 など
外用薬
◇花粉症の症状が強いときに(点鼻薬)
コンタック®鼻炎スプレー、ナザール®αAR など

◇目のかゆみに(点眼薬)
ロートアルガード®プレテクト、ロートアルガード®クリアブロックZ、エージーアイズ®アレルカットC など

花粉症には個人差があり、最盛期に花粉症を発症しない方もいます。花粉を家に入れないなどの日常できることに加え、症状に合わせた薬を使用することも有効とされていますので、花粉の飛散前や最盛期前に、薬局、ドラッグストアの薬剤師、もしくは、「かかりつけ薬剤師」と相談し、適切な薬を選択しましょう。

2018年02月27日

薬剤耐性(AMR)対策 ~抗菌薬(抗生物質)が効かない 細菌が増えています~

(この記事は2018年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤部 医薬品情報室

抗菌薬(抗生物質、抗生剤)は多くの人々の命を救ってきました。しかし、抗菌薬が効きにくい「薬剤耐性」(AntimicrobialResistance:AMR)をもった細菌が世界的に増えており、大きな問題になっています。薬剤耐性によって世界で70万人が死亡しており、このままでは薬剤耐性による死亡者が、2050年には、現在がんで死亡している年間820万人を超える1,000万人が死亡するといわれています。

Onnee Heeaalltthh(ワンヘルス=1つの健康)・アプローチ

人、動物、環境の中に存在する感染症などのリスクに対して、それらの衛生に関わる人々が連携し、横断的に課題の解決を図っていくものです。中でも自然界での脅威が、人間を脅かす元凶となっています。抗菌薬は医療現場のみならず、獣医療、畜水産農業などの現場でも使用されています。薬剤耐性(AMR)を持つ遺伝子が、食品や環境などを介して人へ伝播する可能性があるため、ワンヘルス・アプローチの精神に則り、AMRCRCをはじめ、関係府・省庁や各分野の民間関係団体など他分野の専門家とともに一体的な取組みを進めていく必要があります。

西陣病院、ワンヘルス=1つの健康
西陣病院、薬剤耐性(AMR)西陣病院、厚生労働省

~私たちができること~

  • 風邪に抗菌薬は効きません
  • 処方された抗菌薬は医師の指示通り服用しましょう
  • 基本的な感染対策をしましょう

予防がやっぱり大切「手洗い・ワクチン」

2018年01月01日