西陣病院だより

シミのレーザー治療について

(この記事は2021年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

皮膚科部長
坂元 花景


 
 人生いろいろ、シミもいろいろ、治療だっていろいろ。誰もが気になるシミですが、種類は複数あり、混在していることもよくあります。治療法も複数ありますが、シミの種類によって最適の方法が異なります。今回は、当院で行っているレーザー照射によるシミの治療についてご説明させていただきます。

シミのレーザー治療について

 一口にシミと言っても、種類はさまざま。20代までのシミは、雀卵斑(そばかす)やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)が多いですが、30歳代で多いのは肝斑、50歳以降では脂漏性角化症(老人性色素班)が多くなります。それ以外にも、炎症後色素沈着やあざ(太田母斑、異所性蒙古斑)などもシミと呼ばれることもあり、これらが混ざっていることも珍しくありません。
 シミの治療には、薬の外用や内服、レーザー照射や手術など、さまざまな方法があり、健康保険の適用があるものとないものがあります。その中にレーザーを用いた治療がありますが、レーザーにもさまざまな機種があります。当院にあるレーザーは、Qスイッチルビーレーザーという、メラニン色素への吸収率がとても高い機種です。瞬間的に高いパワーのレーザー光を発して、皮膚のメラニン色素を破壊します。基本的に保険適用外にはなりますが、今までも自費診療で多くの方に治療を受けていただいております。適用となったシミの種類は、脂漏性角化症とADMがほとんどです。
 レーザーは比較的皮膚に負担をかける治療なため、そのダメージを患者様自身がしっかりと理解し、適切なアフターケアをすることが最も大切です。治療前も治療後も紫外線対策をしっかりと行い、患部は治療後は肌色の保護テープを貼ったままで、約2週間程度過ごしていただく必要があります。
 レーザー照射時にはパチンと輪ゴムで軽くはじかれた程度の痛みがあり、照射した皮膚は白くなります。患部が赤く腫れたり、水疱ができることもあります。その後かさぶたとなり、平均7~10日間でかさぶたが剥がれます。かさぶたの下にはピンク色の新しい薄い皮膚が完成しており、3カ月程度で周囲の皮膚となじみます。この時、炎症後色素沈着(戻りしみ)が起こることがありますが、半年~1年程度で自然に薄くなります。治療後半年くらいは、皮膚が完全な状態ではないため、日焼けしたり、強く擦ったりすることのないよう、十分に注意をしてください。一般的なシミの場合、ほとんどの症例で1~2回の照射でかなり目立たなくなりますが、同じ部位に再発することも残念ながらあります。
 前述のように、シミの種類によって最適の治療方法が異なります。おもちの疾患や、シミの種類や場所によっては治療ができないことがありますので、治療をご希望の方は、月火木金の午前中の皮膚科外来をまず受診の上、医師にご相談ください。料金はシミの大きさで決まります。治療は基本的に木曜午後の予約診療で行っております。詳細については別途お問い合わせください。

< 照射前 >

  

< 照射10ヶ月後 >

 

2021年09月01日

糖尿病網膜症について

(この記事は2021年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院、眼科部長  中司 美奈

眼科部長
中司 美奈


 
 糖尿病に合併する眼疾患は、糖尿病網膜症のほかにも、角膜障害、虹彩炎、白内障、外眼筋麻痺、視神経症など多彩です。ここでは、失明原因にもなる糖尿病網膜症について説明したいと思います。糖尿病の患者さんの4~5人に1人が糖尿病網膜症を有すると言われています。糖尿病罹病期間が長いほど、糖尿病網膜症の有病率と重症度はともに上昇し、糖尿病網膜症発症年齢が若いほうが糖尿病網膜症は重症化しやすいと言われています。高血圧、脂質異常症、妊娠、喫煙などは糖尿病網膜症のリスク因子であり、内科・婦人科などそれぞれの専門診療科と眼科とで綿密に連携して経過観察することが大切です。

糖尿病網膜症とは?

 糖尿病網膜症の病期には様々な分類の仕方がありますが、大きく分類すると網膜症を認めない時期、非増殖期、増殖期と進行します。増殖とはどういうことでしょうか?糖尿病は全身の血管が脆くなり、血液や浸出液が漏出したり、血管閉塞による虚血を生じます。放置しておくと網膜の虚血部位に新生血管が増殖します。この新生血管から硝子体出血が生じたり、増殖膜による網膜剥離を引き起こすことで急激に視力が低下します。また、新生血管が隅角や虹彩に生じると眼圧が高くなり、血管新生緑内障という難治な緑内障に進行します。視力が低下する前の適切な時期にフルオレセイン蛍光眼底造影検査を行い(図1)、必要であれば、レーザーで治療(レーザー網膜光凝固術)することが非常に重要です。硝子体出血や網膜剥離を生じると硝子体手術が必要になることが多く、血管新生緑内障を生じると薬物治療だけでは眼圧が下降しないことが多く、緑内障手術を要しますが、視力予後は不良です。
 また、糖尿病黄斑浮腫(図2)は、黄斑に水が溜まり直接視力に影響します。糖尿病網膜症の早期から晩期までどの病期においても発症する可能性があります。近年、抗血管内皮増殖因子(vascularendothelial growth factor:VEGF)療法が主流となり、視力が低下すれば抗VEGF薬を硝子体内に注射します。

眼科を受診するタイミングは?

 糖尿病の患者さんが初診で眼科を受診する際には、視力障害の自覚がなく、内科医からの紹介などにより検診目的に受診する場合と、自覚症状を伴って受診する場合とに大きく分かれます。糖尿病網膜症はかなり進行しても自覚症状がほとんどない場合があるため、自覚症状の有無にかかわらず、眼科で検診を受ける必要があります。急激な視力低下や視野狭窄を自覚し、眼科を受診したときにはすでに増殖期に入っていて、硝子体出血や牽引性網膜剝離が発症している場合もあります。視力低下を来してから治療を始めても、十分に視力が回復しないこともあり、初期の段階から経過観察することがいかに重要であるかを知っておいてください。受診時は眼底検査を行いますので、しばらく眼のピントが合わなくなります。車やバイクの運転は控えるようにしましょう。
 糖尿病網膜症は適切な経過観察、治療を行えば失明を避けることができる疾患です。糖尿病と診断された時点で直ちに眼科を受診し、症状がなくても定期的に診察を受けましょう。

2021年07月01日

転倒して股関節が痛ければ(整形外科より)

(この記事は2021年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

整形外科 医員
岩井 義之



 
 日本は近年超高齢社会となってきました。転倒し病院受診をされる方が多くいらっしゃいます。転倒して生じうる骨折としては統計的に①大腿骨近位部②脊椎③手関節が多いとされています。今回はその中でも①大腿骨近位部の骨折についてご説明させていただきます。
 大腿骨は近位部、骨幹部、遠位部の 3 つに分かれます。今回お話する近位部は、体に近い股関節周囲を指します。骨盤にはまり込む丸い部分を骨頭、細くなっている頸部、ふくらみのある転子部、となっています。高齢者の転倒で生じる骨折は大腿骨頸部/転子部骨折が多いとされています。

 

 日本の老年人口は 2020 年には 3,590 万人、2030年には3,667万人、ピークに達する2042年には 3,863 万人になると推計されています。したがって2020年には約25万人、2030年には約30万人、2042年には約32万人の大腿骨頸部/転子部骨折が発生するとされ、日常的に多い骨折となっています。骨折が生じた際は痛みで歩けなくなる方が多いです。レントゲンで判明することが多いですが、不顕性骨折といって転位がない骨折で、レントゲンでは判明せず、MRIなどの精密検査で診断がつくこともあります。その場合は痛いながらも歩けることもあります。不顕性骨折は後々転位することも多く、手術加療となる場合があるため、早期発見が大切です。

 一般的にどの骨折も治療は大きく分けて2つです。手術か、ギプスなどの保存加療です。治療法は部位や折れ方によって変わります。大腿骨は歩行に大きく関与し、歩行できる方については積極的な手術加療を勧めています。保存加療では、痛みで寝たきりとなり、筋力低下し、歩行能力が見込めないことがよくあります。リハビリを行えば立位動作が可能となる方もいらっしゃいます。寝たきりや車いすでの生活が主な方は保存加療を選択される場合もあります。
 転倒後無理して生活され、骨折部が大きくずれることでより難しい手術になることがあります。先ほどの不顕性骨折のこともあわせ早期発見が大切です。転倒し、股関節部の痛みが強い場合は無理なさらず、早期の病院受診をお願いします。 患者さん一人一人に合わせた最適な加療ができるよう、日々研鑽を積んでおります。転倒し困った方がいらっしゃれば、お気軽に当院にご相談ください。

2021年05月01日

前立腺がん検診は受けていますか?

(この記事は2021年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科 医員
松田 旭央



 日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(がん)ですが、なかでも前立腺がんの罹患率は増加傾向にあります。2017年の統計では男性で第1位となり、日本人男性が最も罹患しやすいがんとなりました。1年間で新たに前立腺がんと診断される人数は10万人あたり約150人で、60歳頃から頻度が増加しています。(出典:全国がん登録による全国がん罹患データより)

前立腺がん検診

前立腺は男性のみにある臓器で、膀胱の下で尿道を取り囲むように位置し、精液に含まれる前立腺液をつくっています。早期の前立腺がんは、多くの場合自覚症状がありませんが、尿の出にくさや排尿回数の増加といった症状が出ることもあります。がんや炎症で前立腺組織が壊れると、PSA というたんぱく質が血中に漏れ出すので、血液検査でPSA値を調べることによって前立腺がんの可能性を調べることが可能です。一般的には 0-4ng/mlが正常範囲とされておりますが、年齢や前立腺肥大症、前立腺炎などの影響でも高くなることがあり、10ng/ml以上でもがんが発見されないこともあります。ただし、100ng/mlを超える場合はがんの可能性が非常に高く、遠隔転移も疑われます。PSA値が正常範囲を超える場合は、超音波検査やMRI検査などを追加して総合的に判断し、がんが疑わしい場合は前立腺生検による確定診断を行います。
 前立腺がん検診について、本邦では厚生労働省などで明確に定められた指針などはありませんが、50歳以上の方には検診が推奨されるという報告もあります。PSA値が1.0ng/ml以下のような低値であれば数年毎の検査でも問題ありませんが、1.0-4.0ng/ml の場合は 1 年毎の検査が必要です。

治療

前立腺がんの主な治療法は、監視療法、手術、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法と多岐に渡り、また、複数の治療法が選択可能な場合もあります。がんの悪性度や転移の有無
などによって選択可能な治療法は異なりますが、それぞれの治療法にメリット・デメリットがあり、年齢や体の状態、患者さんの希望などを基に最適な治療法を検討していきます。前立腺がんは、早期発見し適切な治療を受けることができれば完治することが出来ます。検診で要精密検査となった場合は、必ず泌尿器科を受診してください。

 

2021年03月01日

膵臓がんについて

(この記事は2021年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科 副部長
伴 尚美


   日本人の死亡原因の 1 位は男女ともに「悪性新生物(がん)」ですが、がんは決して治らない病気ではなく、発見が早ければ完治もみこめる病気です。日本人に多い胃がんは、検診や検査の体制も整い、発症後も回復される方が増えています。
 一方で、予後が悪く難治性のがんといわれるのが膵臓がんです。全国統計では、男性では肺がん、胃がん、大腸がんについで死因の第4位、女性では大腸がん、肺がんについで第3位となっています。
 膵臓は周囲を他の臓器や血管に囲まれおり、周囲の動脈に拡がるとがんの大きさが小さくても手術ができないこともあります。周囲の血管に拡がり全身転移をする、またおなかの深いところにありみつかりにくいことなども予後の悪い原因となっています。
 膵臓がん全体の 5 年生存率は約11%と非常に不良ですが、10~20㎜の大きさで見つけた場合は約50%、10㎜以下の大きさで見つけることができれば80%以上に改善することが分かっています。

 

膵臓がんの症状

腹痛、食欲不振、腹部膨満感、体重減少、黄疸、糖尿病の発症・増悪、背中の痛み、などがあげられます。初期のころには無症状であることも多く、早期発見が難しいと言われています。

膵臓がんの危険因子

糖尿病の発 症・増悪、膵臓がんの家 族 歴、生活習慣(飲酒・喫煙)、肥満、膵炎、膵のう胞、膵管内乳頭粘液性腫瘍などがあげられます。

膵臓がんのおもな検査方法

 血液検査、腹部超音波検査、CT、MRI、また必要に応じて内視鏡的膵管造影検査、超音波内視鏡検査などが行われます。がんの見落としを防ぐために違う検査を相互に組み合わせ総合的な評価が必要です。

超音波内視鏡検査について

 膵臓は胃の後ろ側、おなかの深いところにあり、通常の腹部超音波検査ではみえにくいことがあります。超音波内視鏡検査とは、先端に超音波装置のついた内視鏡を胃に挿入し、より近くから膵臓を調べる検査です。これにより、膵臓全体を調べることができ、小さな腫瘍をみつけることができます。
 もし腫瘍がみつかった場合は、内視鏡を通して針を膵臓に刺し細胞を取り出す検査が可能です。この細胞を取り出す検査を、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)といいます。当院においても、7年前より超音波内視鏡機器を導入し、微小膵臓がんの診断に役立てています。

 

※ 膵臓がんは早期発見がいまだ難しいのが現状です。お腹が痛くて胃カメラをしたけど異常がないと言われた方、危険因子のある方、また危険因子がなくても膵臓が気になる方はぜひ一度ご相談ください。

2021年03月01日

「人生会議」してみませんか

~もしものとき、自分らしく最期を迎えるために~

(この記事は2020年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

外科主任部長
福本 兼久


「人生会議」ってご存知ですか?

もしかすると、厚生労働省のホームページやポスターで目にしたり、病院で耳にしたりしてご存知の方もおられるかもしれません。「人生会議」とは、「人生の最終段階における医療・ケアについて繰り返し話し合うプロセス」のことで、厚生労働省が普及のために定めた愛称です。海外では、以前から、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」として取り組まれていましたが、2018年からは日本でも積極的に取り組まれるようになってきました。

具体的には、もしものときに備え、将来の医療及びケアについて、本人を主体に、その家族や近しい人、医療・ケアチームが繰り返し話し合いを行い、本人の意思決定を支援する過程のことで、本人の人生観や価値観、希望に沿った、将来の医療及びケアを具体化することを目標としています。

人は誰でも、いつでも、命に関わる大きな病気や怪我をする可能性があります。そのような時、命の危険が迫った状態になると、約70%の方が、医療やケアなどを自分で決めたり、自分の望みを人に伝えたりすることができなくなると言われています。そこで、もしものとき、自らが希望する医療やケアを受けるために、大切にしていることや望んでいることを、自分自身で前もって考え、ご家族や周囲の信頼する人 たちと話し合い、共有することが大事です。

最近よく「終活」という言葉を耳にするようになりましたが、みなさんはどのようなイメージでしょうか。一般的には、お墓やお金、葬儀などの事前準備、エンディングノートの作成などでしょうか。そこに、自分の最期の時に、どんな風に過ごしたいかということを考え、大切な人と共有する「人生会議」を加えると、より現実的な「終活」ができるかもしれません。

では、どのように「人生会議」を行えばよいのでしょうか。厚生労働省のホームページにもありますが、以下のような手順で考えていくとわかりやすいです。

 

Step1 あなたの大切なこと、希望について考えてみましょう。

例えば、生きることができる時間が限られているとしたら、あなたはどんなことを大切にしますか。家族や友人と過ごす時間でしょうか。それとも、仕事を続けることでしょうか。または、自分の好きなことをすることでしょうか。個人には個人の考え方があり、それぞれが違う考えだと思います。

Step2 あなたの健康について考えてみましょう。

すでに何かの病気で病院にかかっておられる方であれば、かかりつけ医や病院の担当医に、あなたの病気について相談し、その病気で将来どうなるのかを教えてもらいましょう。もし、がんで闘病中の方であれば、治療をどのような状態になるまで続けるのか、自分らしく生活ができなくなるような治療は希望しないのか、治療はできなくなってもできるだけ苦痛は取り除いて欲しいのかなど、病状によって様々な考え方があると思います。

Step3 あなたの信頼できる人、もしものとき、代わりに意思決定をしてくれる人を選びましょう。

誰でも予期できないできごとや突然の病気で、自分の希望を伝えることができなくなるかもしれません。そんな時、あなたの代わりにあなたの意思を伝えてくれる人を選んでおくことが必要です。あなた自身のことをよく理解してくれている家族や友人で、どんな状況でもあなたの希望や思いを尊重して判断してくれる人を選びましょう。ただし、法的な権利はなく、財産分与などにはかかわりません。

Step4 あなたの希望や思いを、医療・介護従事者に伝えておきましょう。

Step1~3で話し合い、決めた内容を事前に医療・介護者に伝えておくことが大事です。

あなたの望んでいる医療やケアの内容と、医療・介護従事者の考える、あなたにとって一番良いと思われる内容が食い違った時は、担当医はとても判断に迷います。そのようなことを避けるためにも、もしものときに、あなたの信頼できる家族や友人にどれくらい任せるのか、あなたの望んでいたことと、あなたの信頼できる家族や友人の考えが違う時は、どうして欲しいかも考えておくと良いでしょう。これは、あな たの希望がより尊重されるようにするためです。

 

いかがでしたでしょうか。「人生会議」が、自分の人生を自分らしく終えるために、もしものときについて話し合う機会になればと思います。人の気持ちが変わることはよくあることです。一度だけではなく、何度も信頼できる家族や友人、医療・介護従事者と話し合いましょう。あなたの希望や思いは、いつでも、何度でも訂正することはできます。

終末期という言葉は、がん患者さんに対してよく使われますが、がん患者さんだけではなく、誰にでもいつか人生の最期はやってきます。その時に、いい人生だったな、自分らしい最期を迎えられたな、と思えるように、人生の節目にご家族や近しい人と「人生会議」をしてみてはどうでしょうか。

当院では、あなたの「人生会議」のお手伝いができるように、「あなたの思いをきかせてください」という事前申出書を作成し、配布しています。入院される方やこれから治療を受けられる予定の方にお渡ししていますので、ぜひご活用ください。

2020年11月01日

新型コロナウイルス感染症とは

(この記事は2020年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

院内感染予防委員
伊藤 良子


2019年12月末より中国で原因不明の肺炎患者が相次いで確認され、新型コロナウイルス感染症は中国のみならず世界に拡散しました。日本では、2020年1月16日に第1例が発生しています。 2月1日に「新型コロナウイルス感染症」が感染症法の2類指定感染症に指定されました。2月11日、WHO(世界保健機関:World Health Organization)は新型コロナウイルス感染症の正式名称を「COVID-19」と発表しました。9月26日現在、世界における感染者数は3,258万人、死者98万人、 日本では感染者数8万人、死者1,540人となっています。未だ感染は全国で認めています。

新型コロナウイルスとは…

重度な肺炎などを引き起こす新型コロナウイルスは、SARS(サーズ)やMERS(マーズ)と同じコロナウイルスの仲間です。コロナウイルスは、ヒトや動物の間で広く感染症 を引き起こすウイルスですが、今回のウイルスは既知のウイルスと一致しない新型のコロナウイルスでした。ヒトに感染するコロナウイルスは、すでに6種類が知られています。そのうち、4種類は一般的な風邪の原因となるウイルスで、ヒトに日常的に感染し、風邪の原因の10~15%(流行期は35%)占めると言われています。新型コロナウイルスに感染した場合の症状と経過は下記の通りです。

どうやって感染するの?

新型コロナウイルス感染症がどのように感染するのかについては、現時点では、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つが考えられます。

(1)飛沫感染

感染者のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染
※主な感染場所:会食や学校や劇場、満員電車などの人が多く集まる場所

(2)接触感染

感染者がくしゃみや咳を手で押さえるその手で周りの物に触れて、ウイルスが付く、別の人がその物に触ってウイルスが手に付着、その手で口や鼻を触って粘膜から感染
※主な感染場所:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど

一人ひとりができる新型コロナウイルス感染症対策は?

新型コロナウイルスに感染しないようにするために
過剰に心配することなく、「手洗い」や「マスクの着用」を含む「咳エチケット」「社会的距離をとる」などの感染症対策が重要です。

(1)手洗い
ドアノブや電車のつり革など様々なものに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。外出先からの帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗います。

(2)正しいマスクの着用

(3)社会的距離
社会的距離は、家庭の外でほかの人々との距離を保つことである。そのためには、「ほかの人々から少なくとも 2メートル(最低1メートル)を空ける」「集団で集まらない」「込み入ったところから離れ、大きな集まりを避ける」事が重要です。

当院での感染対策

当院では、外来待合室の椅子間引き・体温測定、発熱者の隔離診察を実施しています。発熱がある場合や新型コロナウイルスに罹っているかもしれないと思われる方は、受診前に、まず電話での問い合わせをお願いします。西陣病院は、指定医療機関ではありませんので、新型コロナウイルス陽性患者様の入院は受け入れしていません。院内での感染対策としては、 外部からのウイルス持ち込み防止のため「面会禁止」 とさせて頂いております。新型コロナウイルスは無症状の場合や感染経路不明の場合もあり、ご協力の程宜しくお願いします。また、対面での会話により飛沫が飛ばないよう、職員食堂や透析患者さんの食事する場のレイアウトを変更しました。

これから、インフルエンザ流行時期ともなりますので体調管理に充分注意して、この冬を乗り切りましょう。

2020年11月01日

夜間の頻尿で困っていませんか?

(この記事は2020年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科 医員
宮﨑 慎也



夜間頻尿とは?
夜間に排尿のため1回以上起きなければならない状態を指します。実際には2回以上の場合が良好な睡眠を妨げるため、それらを治療の対象とすることがほとんどです。夜間頻尿によって骨折のリスクや死亡率が上昇したという報告もあり、適切な治療を必要とすることがあります。
40歳以上の男女で、約4,500万人が夜間1回以上排尿のために起きる夜間頻尿の症状を有し、加齢とともに頻度が高くなります。日常生活における種々の活動に支障を及ぼす一方で、QOL(生活の質)への影響は個人差が大きいため、治療行う際には本人または介護者の希望が重要です。男性では3回以上、女性では4回以上の夜間排尿で支障度が深刻になることが示されています。

原因・検査

多尿(24時間あたりの尿量の増加)、夜間多尿(夜間尿量の増加)、膀胱蓄尿障害(1回排尿量の減少)、睡眠障害が主な要因となります。


ほかに肥満や糖尿病、高血圧などの生活習慣病との関連も指摘されています。泌尿器科においては排尿日誌 (排尿時刻と尿量の記載)や残尿、必要に応じて男性の場合は前立腺、女性では骨盤臓器脱などの評価をおこなって、原因に見合った専門的診療を検討します。

治療

夜間多尿が原因の8割を占めており、その場合には夜間の飲水量の見直しやアルコール・カフェイン摂取の中止、塩分制限、ウォーキングなどの運動療法が推奨されています。効果が乏しい男性においては、昨今使用できるようになったホルモン製剤の使用も考慮します。

膀胱蓄尿障害に対しては、悪性腫瘍の合併が無いかの確認をおこないます。前立腺肥大症や過活動膀胱が原因となっている場合には、それぞれの薬物治療を検討します。市販の健康食品やサプリメント類は効果に一貫性があるものがなく、現時点で推奨されるものはありません。

睡眠障害のある方は生活習慣の改善をおこなったうえで、効果が乏しい場合には睡眠薬の使用も検討されます。高齢の方では薬剤の相互作用や副作用に注意して、決められた容量を守って服用することが大切です。夜間頻尿には上述のように、泌尿器科だけでなく内科的な疾患も要因となっている可能性があります。症状の強い方はかかりつけの先生に相談するか、泌尿器科への受診をご検討下さい。

2020年09月01日

大腸がん検診を受けましょう

(この記事は2020年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

消化器内科部長
消化器内視鏡センター長 
稲垣 恭和



 
 日本人の死亡原因の1位は男女ともに「悪性新生物(ガン)」ですが、なかでも大腸がんは年々増加し続け、2016年の統計で罹患数は全がんの中で 1位となり日本人が 1番なりやすいがんとなりました。男性はおよそ11人に 1人、女性は13人に 1人が一生のうちに大腸がんと診断されており、がんによる死亡数については女性では1位、男性でも3位となっています。(出典:人口動態統計2018年(厚生労働省))

 

大腸がんの症状

進行した大腸がんは便秘、腹痛および血便などの症状で発見されることが多いですが、早期のがんではほぼ無症状です。そのために症状のない状態でのがん検診が望まれます。

大腸がんと生活習慣の関連

生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、喫煙、飲酒、肥満および加工肉の摂取などが挙げられています。一方で、運動やコーヒーなどが大腸がんの発生を抑制する可能性のある因子とされています。これらのことに気を付けて規則正しい生活を送ることで大腸がんを予防していきましょう。

 大腸がん検診

大腸がん検診は40歳以上の方は毎年の受診が日本の厚生労働省より推奨されています。
検診では便中のわずかな血液を検出することができる便潜血検査が行われています。大腸がんはもろく血が出やすいため、便に微量に混入する目に見えない血液を検出します。便の採取は自宅で行う事が出来ます。便の表面を採便用の棒でまんべんなくこすり採取します。食事制限の必要もない簡単な検査です。
検診受診者の実に約7%の方が陽性となります。陽性の方は、大腸がんの疑いがありますので精密検査として大腸内視鏡検査が必要となります。検診陽性の方の約3%に大腸がんが見つかります。それでも検診陰性の方よりは何十倍も大腸がんである可能性が高いので検診陽性となれば大腸内視鏡検査が必要です。進行したがんでも毎日便に血が混入するわけではなく血が混入しないこともあり、そのような日の便であれば検査は陰性となってしまいます。ですから検診は必ず2日分の便を提出し、また毎年続けて受けることが重要です。
大腸がん検診で発見されるがんは60%以上が早期がんです。検診で発見される大腸がんは症状がでてから病院を受診し発見されるがんよりも早期に発見されることが多いため、治癒率も高いことがわかっています。大腸がんは、早期であれば90%以上が完治します。要精密検査となった場合には、必ず検査をお受けください。

大腸内視鏡の進歩

大腸内視鏡検査は、お尻から太さ 1cm 強の内視鏡を入れて大腸を調べる約 20~30分くらいの検査です。痛みを伴うこともありますが、細いカメラを使ったり、ベテラン内視鏡医がカメラの扱いを工夫することで軽減でき、希望があれば麻酔をしながら行うことも可能です。また大腸内視鏡治療の進歩は著しく、従来は外科治療が必要であったがんに対しても内視鏡で切除ができるようになってきています。大腸内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) は近年発達した手技で、20mm 以上の大きな腫瘍でも切除することが可能であり、当院でも2013年より導入し良好な成績を得ています。

2020年09月01日

新しいMRI装置が稼働し始めました

(この記事は2020年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

放射線科:主任
宇野 正人

 5月14日より、新しいMRI装置が稼働し始めました。新装置には、これまでなかった3つの特長があります。

 1つ目は、人工知能(AI)を用いて画像上のノイズを取り除く高画質化技術です。一般的に、MRIは、高画質を求めると検査時間が延長し、短時間を求めると画質が劣化するという大原則があります。しかし、このAI技術を用いることで、以前よりも短時間で高画質な画像が得られ、患者さんに負担をかけることなく画像診断の質を向上できます。

 2つ目は、トンネル内に映像を投影し開放的な空間を提供するバーチャル映像技術です。従来のMRIは狭く暗いトンネルの中で寝る必要がありましたが、この映像技術によって、トンネル内を景色の映像で包み込み閉塞感を軽減できるようになりました。実際に検査を受けた患者さんからは「広く感じた、テレビCMでも見た」等コメントも多数寄せられています。

 3つ目は、造影剤を用いない非侵襲的な血管検査です。一般的に、血管検査の多くは造影剤を必要としますが、副作用の問題があるため腎臓が悪い患者さんでは造影剤を使用できません。新装置の非造影血管検査では、腎機能に左右されずに検査が行え、当院の血管検査に新しい選択肢が増えました。

 今後、放射線科では、新装置をフル活用し、MRI検査の質と快適性をこれまで以上に追求していきたいと考えています。

2020年07月01日