西陣病院だより

季節の”食”めぐり

(この記事は2025年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

 

 7月の京都といえば、祇園祭りが賑わいを見せます。祇園祭は、日本の三大祭りのひとつ(ほかは東京・神田祭と大阪・天神祭)で別名「鱧祭り」とも呼ばれます。脂がのっていて、1年を通じてもっともおいしい鱧の時期と祇園祭の時期が一致していたため、おもてなし料理として振る舞われたようです。

 当院では、入院患者さんに四季折々の旬の食材を味わっていただけるように、毎月1回季節や行事に合わせた食事提供を行っています。7月は祇園祭に因んで、鱧の白焼きを使用した鱧寿司です。鱧にはどんな栄養があるのか見ていきましょう。
 鱧は脂質が少なく、良質なたんぱく質やビタミンAを多く含むため、夏バテや疲労回復、免疫機能向上への効果が期待できます。皮の部分には、コンドロイチンやコラーゲンなどの皮膚の老化を予防したり、骨にも良い栄養が豊富です。
 また、細かい骨が多数存在する鱧は美味しく食べるために「骨切り」をします。一寸(3.3cm)あたり24回包丁を入れ、骨を断ちながら皮と身の間で包丁を止めるように処理が施されるというまさに職人技。骨をそのまま食べることができ、カルシウムをしっかり摂れるため骨粗鬆症予防にもおすすめの食品です。

2025年07月01日

【開催報告】第6回 上七軒ICLSコース

(この記事は2025年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

 

 2025年4月27日(日)に、第6回上七軒ICLSコースが開催されました。ICLSとは突然の心停止に出会った時にどのように対処すべきかということで、京都府立医科大学 救急医療学の武部 弘太郎 先生をコースディレクターとしてお招きし、ICLSコースを修了した当院のスタッフが、インストラクターとして受講者に指導を行いました。
 今回の講習会は受講者 12名で他施設から1名の参加があり、職種は医師、看護師、放射線技師、臨床工学技士、理学療法士、言語聴覚士で、蘇生についての知識や技術の講義を受け、実際に訓練用人形やAEDなどを用いて蘇生術を学んでいきました。緊急を要する場面における蘇生術がスムーズに行えるよう、受講生は真剣な眼差しで講義を受け、繰り返しトレーニングを行いました。受講者から「繰り返しトレーニングをすることで流れが把握できた。もっと学びを深めたいので継続して取り組みたい」との感想がありました。今後もコース開催を継続していきたいと思います。

     

2025年07月01日

女性泌尿器をもっと身近に

(この記事は2025年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科 医長
中尾 美奈子

 

 女性にとって「泌尿器科」とは?「男性医師・男性患者が多い」「恥ずかしい」「敷居が高い」といった診療科のイメージが強いと思います。しかし実際の診療においては患者さんの約半数は女性です。
 女性医師の割合も 3.5%(2004年)→ 8.9%(2023年)まで増加しているデータがありますし、当院では現在2名の泌尿器科専門医が勤務しております。そんな「女性泌尿器」の領域についていくつかご紹介いたします。

尿失禁

 自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことを「尿失禁」といいます。中年期以降の女性の4割以上が経験しているとされますが羞恥心のため受診されない方がたくさんおられます。腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性尿失禁、機能性尿失禁、混合性尿失禁など様々な種類に分類されます。
 特に腹圧性尿失禁は出産経験のある女性に多く、QOLを下げる要因となっています。1時間パッドテストで重症度の診断を行い、軽症であれば骨盤底筋体操、体重コントロールや運動などの生活指導、薬物療法(クレンブテロール塩酸塩)、重症であれば手術療法をお勧めします。手術療法は中部尿道を膣壁側から支持することにより腹圧上昇時の尿失禁を防ぐメッシュ手術が広く行われています。

骨盤臓器脱

 膣前壁、膣後壁、膣円蓋(子宮頸部/子宮)または膣子宮摘出後の膣断端の下垂のことを骨盤臓器脱といいます。下垂する臓器によって膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱、膣断端脱などに分類されます。異物感、排尿困難、排便困難などの症状を来し、非常に不快な感覚を覚えます。また膀胱瘤は悪化すると両側尿管狭窄から無尿や尿路感染を繰り返したり、直腸瘤はひどい便秘となることもあります。臥位では 引っ込むものの長時間の立位や歩行や努責などで脱出します。
 診断は視診や内診によるPOP-Qスコアでステージングを行います。軽度であれば骨盤底筋体操やペッサリーリング留置での整復を行います。重度であれば手術療法をお勧めします。手術療法には膣壁形成術やTVM(Tension-free Vaginal Mesh)、腹腔鏡下/ロボット支援腹腔鏡下仙骨固定術(LSC/RASC)があり、年齢や脱出の程度によって手術適応を決定します。
 その他にも膀胱炎や排尿障害など一般的な泌尿器疾患も女性特有の原因が認められることもあります。一つ一つの症状を丁寧に診察し、診療にあたっております。お困りのことがありましたらぜひご相談ください。

2025年07月01日

冠動脈疾患とは

(この記事は2025年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

循環器内科 医長
金子 優作

冠動脈疾患とはどのような病気ですか?

 「冠動脈」は心臓に酸素や栄養を送る血管のことです。この冠動脈の壁の内側にコレステロールや血のかたまりがたまり、血管が狭くなったり詰まったりすると、心臓の収縮を担当する筋肉が酸素不足となり、その働きが弱まるようになります。おおまかに冠動脈が急激に閉塞した状態を「心筋梗塞」、血管が狭くなり、血流が一時的に不十分となる状態を「狭心症」と呼びます。そして、冠動脈にこのような障害が起こった状況を総合的に「冠動脈疾患」と呼びます。心筋梗塞や狭心症では、胸の中心付近が圧迫され締め付けるような強い痛みを感じるのが典型的な症状ですが、みぞおちのあたりに漠然とした痛みを感じることや、のどやあご、左肩や左腕、背中、歯が痛む場合もあります。心臓は眠っている間も休まず全身に血液を循環させている重要な臓器ですので、冠動脈疾患になり心臓の働きが脅かされると、命にかかわることがあります。実際に突然死の原因として、わが国で最も多いのが冠動脈疾患と言われています。

検査について

 実際に冠動脈が狭窄をしているかを確認するためにはいくつかの検査がありますが、「冠動脈CT検査」は(図①)のように、どれくらい狭窄しているかだけでなく、冠動脈の走行や、プラークの性状について評価することができます。当院では2025年5月より最新型320列CT装置が稼働し、これまでの64列CT装置よりも良好な画像をより少ない線量と造影剤量で実現できるようになりましたので、今まで検査が辛かった方にとっても短時間で正確な評価をすることが可能になりました。

△図① 冠動脈CT画像 日本循環器学会ガイドラインより

治療について

 カテーテル治療(PCI)は足の付け根や手首などの血管から、カテーテルという医療用の細く柔らかいチューブを差し込んで、冠動脈の狭くなった部分を治療する方法です。局所麻酔で行えるため、全身麻酔での手術に比べると患者さんの負担は少ないという利点があります。カテーテル先端につけたバルーンで血管を押し広げるバルーン拡張(図②)や、再び冠動脈が細くなるのを予防するためにステントと呼ばれる器具を留め置きする治療があります。非常に硬くなった血管などではこれまでのバルーンだけではうまく治療できない場合もありますが、当院ではこのような従来の治療法では難しい場合でも「ロータブレーター」や「ダイヤモンドバック」、「ショックウェーブ」「DCA(方向性冠動脈粥腫切除術)」といった補助的なデバイスを使用して有効な治療ができる設備が整っており、いろんな方の冠動脈の病状にあわせて安全かつ最適なカテーテル治療が選択できるようにしています。最近胸の症状が気になる場合や、動脈硬化が気になる場合も循環器内科の医師もしくはかかりつけ医に相談していただければと思います。

△図② カテーテル治療の原理
インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラスより

2025年07月01日