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誤嚥性肺炎の予防と運動について

(この記事は2014年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


リハビリテーション科 副主任
言語聴覚士 西村 豪文
肺炎は日本人の死亡原因の第3位であり、高齢者ではその死亡率は急激に上昇します(厚生労働省の平成23年度人口動態統計)。高齢者の肺炎の7割が誤嚥による肺炎です。


 普段、私たちは嚥下(飲み込む)という行為を何気なく行っていますが、食べ物を口から胃へ送り込むという一連の運動を行うためには、多くの器官が複雑に働いています。咽頭は、①口から食道へ至る飲食物の通り道②鼻から肺へ至る空気や声の通り道が交わっていて非常に複雑な働きをします(図1参照)。嚥下の際には、声帯や喉頭蓋(喉頭のふた)により気道の閉鎖が行われ、食物を気道に入りにくくして(図2参照)。しかし加齢や病気などにより、協調運動がうまく機能しなくなり、飲食物などが肺などに入ることを「誤嚥(ごえん)」といいます。誤嚥によって肺に細菌が繁殖して炎症を起こすのが「誤嚥性肺炎」です。しかし、誤嚥すれば必ず肺炎を起こすわけではありません。誤嚥をしても咳により気道から誤嚥物を出せたり、免疫力が高ければ、肺炎に至らない事も多いです。他にも誤嚥した細菌量、細菌の種類、肺の健康状態など種々の要因が誤嚥性肺炎を発症するかに影響します。ですから、日ごろからこれらの要素を良好に維持するように心がけることが大切なのです。



 飲み込みの際に気管を閉鎖する力、誤嚥物を気管から出すための喀出力(咳の強さなど)は、呼吸機能や声帯の閉鎖機能に影響されます。これらの機能を低下させないためには、日常生活での運動が重要です。例えば重たいものを持ち上げる時などには、無意識に息を吸い、胸を膨らませ、息が漏れないように声帯を締め、胸郭を固定します(一度やってみてください)。このことで腕は安定し、最大の力、瞬発力が発揮されます。この時には強力な声門閉鎖が行われており、身体の運動は声帯機能の維持強化にも繋がるのです。運動では体力維持も期待でき、免疫力向上にも繋がります。これに対し、寝たきりの生活では、胸郭や横隔膜の運動が阻害され、呼吸機能の低下を招いてしまいます。ベッド上中心の生活の方でも、呼吸機能や体力維持のためにベッド上で座位をとることや車椅子に乗車することは重要ですので、是非、行ってみてください。また、声帯をはじめ、呼吸機能の維持には、歌唱や会話、笑うことも重要です。こういった視点でみると、嚥下機能の維持のためには、ご家族や親しい方と、お出かけし、楽しくおしゃべりや、お食事をすることがなにより効果的かもしれません。


 「食べること」は、単なる栄養補給だけでなく、生きる楽しみの一つであり、“生きがい” に関わる問題です。嚥下障害・誤嚥性肺炎を「治す医療」も大切ですが、加齢や疾患の特性上限界があります。当院では、嚥下障害の患者さんの「生きがいを支える医療」を念頭においた対応を大切にしています。当科でも、昨年7 月に言語療法室開設後、嚥下障害の患者さんに対して言語聴覚士、理学療法士、作業療法士による専門的リハビリを行ってきました。当院では、栄養サポートチーム(メンバーは各科医師、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、薬剤師、臨床検査技師など)により、専門的な医療サポートを行っています。嚥下障害でお困りの方は、まずは主治医にご相談ください。

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「言語聴覚療法室」を開設しました。

(この記事は2014年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


リハビリテーション科 言語聴覚士 西村 豪文
 平成25 年7月より、リハビリテーション科に言語聴覚士が配属され、「コミュニケーション」や「食べること」に問題がある方の援助を行っています。
 「コミュニケーション」の問題は失語症、構音障害や、注意・記憶などさまざまな高次脳機能障害によって生じます。失語症とは、脳の言語領域の損傷により、「聴く・話す・読む・書く」という言葉の機能に障害が生じることです。失語症では、その方の重症度や失語症タイプ、年齢や職業など身体的・社会的背景にそった練習を、種々のドリルを用いて行います。構音障害とは、脳の病気や舌癌などにより、「声が出ない」「呂律がまわらない」など、話しにくくなることです。構音障害では症状に合わせて、発声器官の運動や、ドリルなどを使用しての発音の練習を行います。また、ゆっくり、大きく、区切って話すなど代償的な発話法も指導します。「コミュニケーション」の問題に対しては、障害された機能を可能な限り改善することと、機能の改善が難しい場合も、残された機能を生かすことで、コミュニケーション能力の改善を目指します。

 「食べること」の問題は、脳の病気や癌などにより、飲み込みが上手くできなくなることです。食べることは、単なる栄養補給だけでなく、生きる楽しみの一つであり、コミュニケーションとともに“生きがい”に関わる問題です。嚥下訓練(飲み込みの練習)では、飲み込みにかかわる器官(のどや口など)の体操、呼吸訓練、嚥下パターン訓練、食事指導(姿勢や食事形態の調整など安全に食事を摂取するための指導)を行います。また当科では、低周波刺激法、筋電図によるバイオフィードバック法(以下BF法)など新しい技法を積極的に取り入れています。嚥下訓練では“飲み込む運動” を改善することが目標ですが、うまく飲み込めているかどうかは、自分自身ではわかりにくいものです。BF法では、飲み込んだ時に、のどの筋肉から発せられる電流を皮膚上から記録し、モニター上で“飲み込む運動”の状態(強さ・持続時間など)をリアルタイムで見ていただきながら、嚥下訓練を行います。このBF法は、見えないものを、見えるようにする技法であり、日本では導入している施設はわずかですが、欧米においては信頼性の高い治療法として認知されています。

 先進の技術とチームワークで、地域の皆様が“生きがい” をもって暮らし続けられる、その一助になれればと考えております。


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リハビリテーション科の紹介

(この記事は2013年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)




 平成25 年7月より西陣病院リハビリテーション科では、言語聴覚療法が新たに開設され、リハビリテーション室の広さも約1.5 倍となりました。それぞれの特色別に3 部屋開室され、より専門的な治療ができる体制となりました。スタッフも増え、理学療法士7名、作業療法士3名、言語聴覚士1名を含む15名でリハビリテーションを行っています。


 私たちは、当科の基本理念である「患者様と共に歩むリハビリテーションの実践」を目標に、楽しく来室していただき、患者様自ら意欲的にリハビリテーションに取り組んでもらえるような雰囲気作りを心がけています。

 理学療法部門ではリハビリテーション室の拡大とともに理学療法士が1名増員したことにより、今まで以上に質の高いより充実したリハビリテーションが提供できるようになりました。

 作業療法部門では作業療法士が1 名増員し、個別の訓練室が新設されたことにより、専門性を高めたより質の高いリハビリテーションが提供できるようになりました。疾病や受傷により身体機能や精神的な障害を受けた患者様に対し、機能訓練や作業を通し、きめ細やかな回復を図ります。同時にトイレ・入浴・家事動作などの日常生活動作を自分で行えるように治療を進め、早期に家庭・社会復帰できるように目指しております。


 言語聴覚療法部門では、7月より新たに言語聴覚士が配属されました。言語聴覚士は1997 年に国家資格となった、比較的新しいリハビリテーション専門職です。当院リハビリテーション科で対象とする障害は、失語症、高次脳機能障害、構音障害(いわゆるろれつ困難)、摂食・嚥下障害(飲みこみの障害)などです。患者様の障害を軽減、あるいは障害を持ちつつも代わりとなる手段の工夫により、機能の向上のみでなく、地域での生活、社会参加を支援していきたいと思います。


 当院リハビリテーション科ではそれぞれ特色のある3つの療法が揃い、総合的なリハビリテーションが提供できるようになりました。今後、様々な障害に対してより専門的なリハビリテーションを提供させていただき、患者様と共により良いリハビリテーションを展開していきたいと思います。リハビリテーション科一同全力で務めますので、今後とも宜しくお願いします。

| Copyright 2013,08,30, Friday 08:03pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

利用者の尊厳を守るために -西陣病院通所リハビリの虐待防止とご家族支援のとりくみ-

(この記事は2010年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


デイケア室主任 作業療法士 石原 祐子


西陣病院通所リハビリテーション(デイケア)では、どのようなときにも自分らしく安心して過ごしいただけるよう、虐待を防止し、利用者様の尊厳を守るとりくみをおこなっています。

◆高齢者虐待とは

・その方をお世話する人によっておこなわれるもの
・その方がサービスを受けておられる施設の職員によっておこなわれるもの

◆具体的には

・暴力などによって身体に痛みや傷を与える、身体を拘束するなどの、身体的虐待
・その方にとって必要なお世話をせず、その方の状態を悪化させる、介護やお世話の放棄、放任
・けいべつする、おどかす、無視する、いやがらせをする、悪口を言うなどの、心理的虐待
・その方の合意なしにおこなわれる、あらゆる性的な行為やその強要
・その方の合意なしに財産や金銭を使う、希望される金銭の使用を理由なく制限する、経済的虐待

◆ 利用皆様の尊厳を守るために、わたしたちは次のとりくみをしています。

1 .どのような場合にも、ご本人様の意思をご確認することにつとめ、安全に配慮しつつ、できる限りそのご意思にそった対応をいたします。
また、ご自分から意思表示をすることがむずかしい方に対しては、職員の側から声かけをおこなって、ご希望をききとるようつとめています。

2 .小さな変化も見逃さぬよう、常におひとりおひとりのごようすに目を向け、お変わりがあれば、全職員でその情報を共有しています。

3 .虐待が疑われるときは、みつけた職員がただちにデイケア室責任者に報告、担当支援事業所や主治医などと相談して、緊急性、事実確認の方法、安全確保の方法、援助の方法を、組織的に検討します。
緊急を要するときは、何よりもまず、ご本人様の安全の確保を最優先に対応いたします。

4 .苦情申し立て窓口について、デイケア内の担当者名ともに、京都府や京都市など外部の相談窓口、高齢者虐待110番の連絡先を、デイケア室入り口に掲示しています。また、いつでもご見学いただける体制をとって、透明性の高い運営につとめています。

5 .利用者様が在宅生活を送られる上で、ともに生活しておられる方が、健康に気持ちよく過ごされることは、非常にたいせつであると考えます。同居、お世話されているご家族の方の孤立を防ぎ、ご負担の軽減をはかることによって、ご本人様、ご家族様双方の尊厳を守るために、「ご家族のための相談窓口」担当をおき、営業時間中、いつでもご相談をお受けする体制をとっています。
担当者は、ご家族様の立場に配慮しながら、全職員、担当ケアマネージャー、他サービス、西陣病院介護保険相談室などと、問題の解決にむけて、協力しています。
また、連絡帳を使ってご家族との情報交換をしたり、家族会を開催して、ご家族様どうしで交流していただく機会を設けています。

| Copyright 2010,11,01, Monday 10:00am administrator | comments (0) | trackback (0) |

 

「腹ごなし」には要注意!?

(この記事は2008年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

リハビリテーション科副主任 理学療法士 山口洋樹

 最近の健康ブームや「メタボ」警告でダイエットを始めようとお考えの方も多いかと思います。

 確かに、脳梗塞や心筋梗塞などの大病を予防するためにも、過度な太りすぎは改善が必要です。しかし、「ちょっと腹ごなし」に運動しようかなとお考えの方!ご注意ください。

 食後に「腹ごなし」という考え方は、とても古くから当たり前のように言われてきました。しかし実際にはあまりお勧めできないのです。

 食後は消化のため、胃や腸などが活発に働き出し、体の血液が消化器に多く流れるようになっています。逆に運動をする際は、筋肉に酸素や栄養を送るため血流量が増すように、神経によって調整されるのです。

 ですから、食後すぐの運動は体に大きな負担をかけてしまいます。運動は食後すぐよりも、1時間ほどあけた方が体のためにも適しています。

 運動は「いつ」するかも大切です。どうぞ皆様、ダイエットは空腹時や満腹時を避けて無理なくチャレンジしてください。

| Copyright 2008,07,01, Tuesday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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