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多量飲酒のもたらす病気

(この記事は2008年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科医長 金光大石(だいすけ)

 身体に負担をかけない適正飲酒量というのをご存知ですか?

 お酒に強い人と弱い人との差は、アルコールを代謝する力の体質的な差に原因があります。

 体内に吸収されたアルコールは肝臓に運ばれ、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドという物質に分解されますが、このアセトアルデヒドを代謝・分解する能力は遺伝的体質によって違います。アセトアルデヒドは強い毒性物質で、体内に多く残ると気分不良や二日酔いの原因になります。

 総じて、日本人は欧米人と比べてこのアセトアルデヒドを代謝・分解する能力が弱いとされています。日本人の場合の適正飲酒量は、日本酒では1合(=180cc)と言われています。お酒に含まれるアルコール量は、お酒の種類によって違いますが、日本酒1合に含まれるアルコール量は23gで、アルコール量から他のお酒に換算すると、ビールでは大びん1本、あるいは350mL缶1.5本、焼酎ではコップ1杯、あるいはお湯割り2杯、ウイスキーではシングルロックで2杯、ワインではクラス2杯に相当します。お酒は飲酒回数を重ねて訓練すれば強くなるわけではありません。お酒に対する強さ、弱さというのは体質で変わらないのです。

 適正飲酒量を超えた多量飲酒は様々な病気の原因となります。肝臓では肝細胞障害の原因となり、肝臓の繊維化が進行すると最終的には肝硬変となります。肝硬変になると全身倦怠感、食欲低下、腹部膨痛感等の症状が慢性的にみられ、病気がある程度進行すると、全身の浮腫(むくみ)、腹水、黄痘、食道静脈癌(食道の血管にこぶができ、破裂すると大量出血を来たします)などの症状がみられるようになります。

 また、膵臓でも膵臓の細胞を障害し、急性膵炎、慢性膵炎のどちらの原因にもなります。急性膵炎では基本的に絶飲食、点滴治療の入院治療が必要となり、重症例では死亡することもあります。慢性膵炎では慢性的な上腹部痛、背部痛を生じ、さらに病状が進むと、消化吸収不良による下痢、体重減少、糖尿病の合併がみられるようになります。以上のような肝臓病、膵臓病だけでなく、アルコールは胃腸や神経にも障害を及ぼします。いずれにしても、アルコールで起こる病気はQOL(Quality Of life:生活の質)を大きく下げてしまいます。楽しく飲むはずのお酒で大切な健康を害する事がないように、くれぐれも適正飲酒量を超えないように注意しましょう。

| Copyright 2008,07,01, Tuesday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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