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虫垂炎とその腹腔鏡手術について

(この記事は2014年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

虫垂炎
小泉先生

 外科 医長 小泉 範明

 
虫垂炎、俗に言う“盲腸”は非常にありふれた病気で、15人に1人が一生のうちに罹ると言われています。虫垂は大腸の一部で、右の下腹部にある小指にも満たないほどの小さな臓器ですが、何らかの原因でその内部に細菌が繁殖することで虫垂炎が引き起こされます。便が固まってできた「糞石」と言われるものが虫垂に詰まると虫垂炎の引き金になりますがその誘因は分かっておらず、他にもストレスや過労、暴飲暴食なども虫垂炎の発症に関係があると言われており、原因ははっきりしていません。虫垂炎の主な症状は右下腹部の痛みで、その他にも発熱、吐き気、嘔吐などがあることもあり、症状は人によって様々で典型的な症状がないこともよくあります。

 一昔前までは「盲腸といえば手術」と考えられていましたが、最近では腹部CT検査や腹部超音波検査によってかなり正確な診断が可能になり、たとえ虫垂炎であっても全ての患者さんに手術を行うわけではなくなりました。虫垂炎はその程度によって軽症のカタル性、中等症の蜂窩織炎性、重症の壊疽性と分けられています。軽症であるカタル性や蜂窩織炎性の一部は抗生物質の治療が可能、つまり薬で散らすことができます。その一方で多くの蜂窩織炎性虫垂炎やより重症である壊疽性虫垂炎は、治療が遅れると虫垂が破れて腹膜炎を引き起こすことがありますので、原則として手術を行います。当院では虫垂炎の患者さんが受診された際には十分な検査を行い、その病状に応じた最適な治療を行うように心がけています。

 さて虫垂炎の手術ですが、「盲腸の手術」というと右の下腹部を切開して行う開腹手術が一般的でした。しかし当院では2010年よりおへその小さな傷だけで手術を行う「単孔式腹腔鏡下虫垂切除術」を取り入れ、これまで100名以上の虫垂炎の患者さんにこの手術を行ってきました。この手術は傷がへそに隠れて目立たないというメリットがあるのはもちろんですが、傷が小さいぶん従来の開腹手術に比べて回復も早く、患者さんの身体の負担も少なくて済むというメリットもあります。手術時間は1時間前後、術後の痛みも従来の手術に比べると軽度ですので、通常は手術後2~3日で退院が可能です。腹膜炎を起こしている患者さんも含め、当院ではほとんどの虫垂炎の患者さんにこの手術を行っています。

手術


 ところで、虫垂炎は一旦薬で散らしても30~50%程度が再発することがあると言われています。原因がはっきりしないためいつ再発してもおかしくないわけですから、今までに虫垂炎を起こしたことのある患者さんは再発しないうちに手術をするのも一つの方法です。そのような患者さんに対しては、お仕事や学校の予定を踏まえて治療計画を立て、夏休みなどの休暇を利用して手術を行うことが可能です。今まで虫垂炎を散らした経験のある患者さんや、何度も虫垂炎の症状に悩まされている患者さんは、当院の外科でご相談下さい。手術をご希望で適応となる方には、合併症が少なくより身体に負担の少ない「単孔式腹腔鏡下虫垂切除術」を行います。

手術創


| Copyright 2014,07,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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