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七草粥は漢方の知恵

(この記事は2009年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

薬剤科科長 三宅健文

 七草粥は、お正月休みの食べ過ぎ、飲み過ぎで疲れた胃を優しくいたわってくれる7種類の薬草粥です。春の七草の行事は「正月の七日に春の七草を摘み、これを神前に供えてから食べれば、その年は病気にかからない」という考えで、もともとは中国から日本へ伝わりました。

 正月7日(人日)、3月3日(桃の節句)、5月5日(端午の節句)、7月7日(七夕の節句)、9月9日(重陽の節句)を合わせて五節供と呼び、その中の1月7日を過去1年の厄払いとこれからの1年の無病息災と招福を祈願する「人日(じんじつ)の節句」とし、この日には、万病除けと邪気払いに良いとされる7種の野菜や雑草を入れた粥に餅を入れた七草粥を食べる習慣があります。

 たくさんある春の若草のなかで、この7つが選ばれたのはなぜか。じつは、定説はなく、和歌に詠われたことから広まったと言われています。「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ七草」鎌倉末期の四辻左大臣が詠みました。

 本来、お正月に食べる七草粥は「7種類の草の粥」ではありませんでした。日本で、1月7日に春の若菜を粥にして食べる風習が始まったのは、平安時代とされています。1月7日は、都びとの位が上がる日だったので、「名(な)を成すために、菜(な)を食す」という縁起かつぎだったという面白い説もあります。

 当時は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ=七草粥とは、まったく決まっておらず、草以外にも木の実や海草など多彩に入れていたようです。「いろいろ、もろもろ、あれこれ、たくさん」という意味合いで、7という数字を使っていたのです。7はなんといっても吉の数字。ラッキーセブンですから。

 春の七草を使った七草粥のエキスには、弱った胃腸を助けて食欲を増進する。という効果の他に、糖尿病の合併症を防いだり、活性酸素を除去する働きがあることが医学的に報告されているそうです。まさに「医食同源」を考えた漢方の知恵と言えるでしょう。

 1.セリ(芹):七草粥
   効能/健胃・食欲増進・解熱・利尿・去痰など
 2.ナズナ 別名「三味線草」:
   効能/止血・消炎・鎮痛・利尿・解熱・下痢止めなど
 3.ゴギョウ(御形) 別名「母子草」:
   効能/せき止め・去痰・扁桃腺炎・利尿など
 4.ハコベラ 別名「はこべ」:
   効能/利尿・乳汁分泌促進・歯痛・消炎など
 5.ホトケノザ キク科の「コオニタビラコ」:
   効能/健胃・食欲増進・歯痛など
 6.スズナ(現在のかぶを指します):
   効能/消化促進・解毒・せき止め・そばかすなど
 7.スズシロ(現在の大根を指します):
   効能/消化促進・せき止め・去痰・利尿など

| Copyright 2009,01,01, Thursday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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