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いぼ痔は切らずに治したい いぼ痔の注射療法

(この記事は2007年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


外科部長  宮垣拓也

宮垣 拓也 医師 本誌3・4月号で中瀬先生より肛門疾患全般についての説明がありましたので、今回は当院で本年4月から治療を始めた「いぼ痔の注射療法」についてのお話をしたいと思います。

 多くの方が悩んでおられる痔。前回お話があったように大きく分けると、肛門付近にいぼができる「いぼ痔(内・外痔核)」、肛門の皮膚が切れる「切れ痔」、肛門の周囲から膿が出る「痔ろう」があります。そのなかで最も多いのがいぼ痔。いぼ痔は、便秘などでいきんだ時に肛門に強い負担がかかり、肛門を閉める括約筋の内側にあって開閉を助ける粘膜下組織の「クッション」部分が腫れて生じます。直腸側にできるのが内痔核、肛門側だと外痔核と呼ばれます。

 新しい薬物注射療法は、内痔核が対象となります。これには、クッションが緩んで排便時に内痔核が肛門の外に出たり、出たままになったりするなど、従来は手術が行われてきたものも含まれます。使用する薬は「内痔核硬化療法剤」(商品名ジオン)で、平成17年に発売されました。

 治療は、括約筋を麻酔で緩めた後、痔核1個につき4か所に注射し、薬剤が全体に行き渡るようにします。注射に要する時間は10分から20分程度。主成分である硫酸アルミニウムカリウムが、炎症を起こしたクッション部分を繊維化させ硬くさせます。すると、緩んでいたクッションが縮み元の位置に戻るという仕組みです。痔核の中を流れる血液量も減少し、出血が止まります。注射後1週間から1ケ月ほどで、痔核が肛門から出なくなります。

 この注射療法は、痔核を切り取る手術に比べ、治療後の痛みや出血が少なく、平均入院期間も大幅に短縮されました。当院では1泊2日の入院が標準で、日帰りも可能です。治療費も手術の3分の1程度と経済的負担も大きく軽減されます。ただ、痔核を除去するわけではありませんので、再発率は手術に比べ高くなりますが、再発しても再度注射できる利点があります。

 注射療法が向かないのは、内痔核の他大きな外痔核もあるもの、痔ろう・切れ痔・肛門ポリープを伴うなどの症状がある人です。安全性の点で、子供や妊婦、授乳中の女性、透析患者さんにも勧められません。

 注射療法には、医師の技術も要求されます。薬が適切な場所に届かないと、直腸の筋層が壊死し、炎症などが起きる恐れがあるからです。そのため、専門医でつくる「内痔核治療研究会」の講習を受けた医師だけが、この薬を使用できることになっています。勿論、治療には保険が適用されます。

 いぼ痔の治療を受けるのは非常に恥ずかしいこととお察しします。ジオン注 注射前そのお気持ちはよくわかります。また、いぼ痔の治療はどうしても「切って治す」痛い、痛い手術のイメージがありますので二の足を踏まれるのだと思います。そのため、長年そのままにされ苦しまれておられる方が非常に多く、なかには十数年も痔を抱えて生活の不便さを感じながらも我慢されている方もおられます。いぼ痔も普通の病気と同じで早めに治療を受けることが大切です。長年我慢されてから治療を受けた方の多くは「もっと早く治療していればよかった」と感想を述べられます。また、患者さんの中には、一大決心をし、手術を覚悟していたのに、写真に示す通り注射療法で改善してしまったと、拍子抜けされる方も多くおられます。医学の進歩は目覚しく、ジオン注 注射後このように治療方法が進展し、従来なら手術が必要ないぼ痔でも切らずに治せる機会も増えてきました。

 われわれは患者さんの立場で接し、検査や診療、治療を行っています。恥ずかしさに配慮することや体への負担が少なくなるようにいつも考えています。

 いぼ痔は1人で悩まず、お気軽にいつでもご相談下さい。


読売新聞より読売新聞 (平成18年2月12日) 抜粋

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| Copyright 2007,09,01, Saturday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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