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糖尿病は目にもくる

(この記事は2007年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです。)


眼科 小室 青

 糖尿病は、生活習慣病の一つでありその数は年々増加しています。平成14年の糖尿病実態調査によると、その患者数は、「糖尿病が強く疑われる人」の740万人と「糖尿病の可能性を否定できない人」の880万人を合わせると、全国に1,620万人と推定されています。

 糖尿病は、進行とともに体のあちこちに様々な合併症が起こります。目も例外ではなく、特に網膜に障害が起こる糖尿病網膜症は、糖尿病が原因の視覚障害の発生は、年間約3,000人となっており、成人の失明原因の1位となっています。

 糖尿病では、血液中のブドウ糖(血糖)が、何らかの原因で過剰となった状態が続き、血管がぽろぽろになります。目の網膜の血管も影響を受け、網膜症を発症します。初期には、網膜に小さな出血が生じます(単純網膜症)。血管障害に進行すると、酸素欠乏症状態により軟性
白斑が出現し、細い血管(毛細血管)が拡張、蛇行、途中で詰まったりする現象がみられます(前増殖網膜症)。
さらに病状が進むと、新生血管という正常では認められない、非常にもろい血管が出現します。新生血管が破れ大きな出血となり、やがては網膜が剥がれる(網膜剥離)状態になり、視力が低下し失明することもあります(増殖網膜症)。

 糖尿病にかかって、15年後には約半数の人が網膜症になるといわれています。糖尿病網膜症では、初期の段階では視力低下などの自覚症状がなく、患者さん自身が目の異常に気づくことは困難です。気づいた時には、かなり重症になっていることも少なくありませんので、眼科
で定期的な検査を受けることが大切です。内科における血糖値のコントロールが上手く行われていても、眼底検査で網膜症が進行していることがありますので、精密眼底検査の目安は、網膜症のない人で1年に1回、単純網膜症の人で3~6ケ月に1回、前増殖網膜症の人で1~2ヶ月
に1回、増殖網膜症の人で2週間~1ヶ月に1回です。

 糖尿病網膜症の治療は、まず内科での血糖コントロールが基本になります。網膜症が進行してきた場合には、網膜のレーザー光凝固術や、場合によっては硝子体手術といった外科的治療が必要になることもあります。

| Copyright 2007,09,01, Saturday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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