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股関節痛でお悩みの方に

(この記事は2007年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 牧之段 淳


 股関節は球状の関節であるため曲げ伸ばしだけでなく、回旋(捻り)もできる自由度の高い関節です。一方、球状であるために、体重を受ける面が小さく一旦関節軟骨が擦り減ると疼痛も強く、日常生活動作が制限され外出もままならなくなることも少なくありません。


 治療は減量や杖をついて股関節の負担を少なくするなど生活習慣を見直すことが基本です。膝関節が変形して痛む場合、ヒアルロン酸を関節内に注射することで痛みが軽くなりますが、股関節には保険が適応されておらず、なかなか優れた保存療法がないのが現状です。一般的に60歳以上であれば人工関節を考慮します。人工股関節置換術により股関節痛から解放されると言っても過言ではありません。手術の翌日から歩行器を用いて歩き始め、約3~4週間後に一本杖で退院が可能です。術後3カ月もすれば特に目立った痛みは訴えられなくなります。

 一方、人工股関節にも幾つかの問題点があります。

 第一に耐久性です。人工関節も十数年も経過すると骨とインプラントとの間に機械的な緩みが生じてしまうのです。現在では15年間程度もつようになっています。60歳で人工股関節置換術を行うと75歳頃に再び人工関節の緩みが生じ、再度入れ換え手術が必要となる見込みとなります。女性の平均寿命が85歳なので当院では再置換術をしなくて済ませるよう70歳以上の方に人工関節をお勧めしています。

 第二の問題点は約4%で脱臼を生じることです。人工股関節置換術の手術方法にはいくつかの進入法があります。全国的には後側方から進入する施設が多いのですが側方や前方から進入する方が術後の脱臼が少ないと言われています。当院でも後側方進入法を行っていたのですが最近外側進入法に変更しております。手術中にインプラントを設置した時点で脱臼傾向がないか確認するのですが、以前に増して相当安定感があるとの手応えを得ています。今のところ外側進入法で脱臼を生じたことはありません。脱臼があまり気にならないので主治医としても安心して退院を勧めることができるようになりました。

 その他稀ですが肺梗塞という重篤な合併症があります。当院では術後早期に足をつくことが大切と考え手術翌日から起立歩行を開始したり、術後抗凝固剤を内服していただいており予防に努めています。手術前には予め御自身の血液(自己血)を貯えておきますので自分の血液を戻すだけでいわゆる輸血(他家血輸血)はほとんど必要ありません。

 整形外科にはさまざまな手術がありますが、人工股関節置換術は除痛効果や術後早期に歩行が開始できるなどの観点から切れ味の鋭い手術との印象を持っています。股関節痛でお悩みの方は毎週木曜日13時から股関節外来を開いておりますので御気軽に御相談下さい。




股関節レントゲン:術前股関節レントゲン:術後

| Copyright 2007,05,01, Tuesday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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