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心房細動に対する抗凝固療法について

(この記事は2012年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


北村先生 内科 医長 北村 亮治

 みなさんは心房細動ってご存知でしょうか? この心房細動は、心房自体から1分間に約350~600の頻度で不規則な電気信号が発生し、心房全体が細かくふるえ、心房のまとまった収縮と弛緩がなくなる不整脈のことです。心房細動にはいくつかのタイプ(詳細は省略)がありますが、加齢とともに発症しやすく現在は約80万人いると推定されます。この不整脈が何故良くないかと言えば、一つは心房収縮がなくなるために心臓のポンプとしての働きが(約20%程度)低下した結果、うっ血性心不全を合併しやすいことが挙げられます。もう一点は心房から心室への血液がスムーズに流れず、一部は心房の片隅(左心耳)でよどみを生じて血栓を形成しやすく、その血栓が血流に乗って脳梗塞などを発症しやすいことです。

心房細動 このため、心房細動はうっ血性心不全及び脳梗塞に対する予防が非常に重要となります。そこで今回は脳梗塞予防に対する薬物療法についてお話したいと思います。この薬物療法には抗血小板剤療法及び抗凝固療法がありますが、バイアスピリン等の抗血小板剤の脳梗塞予防効果は、抗凝固薬であるワーファリンに比べて弱く、効果がなかったとする報告すらあります。このことから特に禁忌がなければワーファリンを中心とした抗凝固療法が主流と考えられています。

 一般に70歳以上の心房細動の方では、ワーファリンを内服していないと脳梗塞の発症率4.8%/年と言われ、これがワーファリン内服により0.9%/年に改善されるという報告があります。しかし、ワーファリンによる出血の合併症対策として定期的に血液検査で効果の強さ(PT-INR)を測定する必要があり、その結果によって内服量を変えるというように煩雑な一面もあります。また、食事制限(納豆、クロレラ等のビタミンKを多く含む食物)もあるのが難点です。

 一方で、2011年3月より新規の抗凝固薬であるダビガトラン(商品名:プラザキサ)が発売されました。この薬剤はワーファリンと同等以上の予防効果を持ち、定期的に採血を行う必要もなく、かつ食事制限も不要、また内服中止にてすぐに薬効が消失するために外科手術が行いやすいというメリットがあります。(透析中の方は使用不可)しかし、デメリットとして1日2回の内服であること(2012年3月までは2週間処方)、ワーファリンに比べて薬価が高く、また出血以外の消化器症状の発生が比較的多いなどの点が挙げられます。このため、PT-INRの安定している方では、ダビガトランへの変更の利益はないとも言われています。いずれにしても大事なことは薬剤をしっかり内服することです。

 現在でも新たな抗凝固薬が開発中で、臨床試験も進行しています。今後も治療薬の選択肢が増えるのは良いことと考えますが、動悸などもなく無症状で放置されている心房細動の方もいますので、何かありましたらいつでも気軽に循環器科の医師に相談して下さい。


| Copyright 2012,03,01, Thursday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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