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腰椎の疾患について

(この記事は2010年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


整形外科 医長 髙取良太整形外科 医長 髙取良太


腰椎に関わる疾患についてご紹介させていただきます。腰椎は体幹部と骨盤部をつなぎ、二足歩行を行う人間において非常に負担がかかる部位です。腰痛を経験されている方は非常に多いと思いますが、腰痛だけではなく、下肢にも症状を伴うことが多いことも特徴の一つです。

腰椎椎間板ヘルニア
頚椎と同様に椎間板が加齢などにより変性し、線維輪という椎間板周囲の組織に断裂が生じ、椎間板内部の髄核が後方に突出することで、神経根や脊髄を圧迫し、症状を引き起こします。20 ~ 40歳代、男性に多く、腰部や殿部、下肢にかけて痛みやしびれが生じます。治療法としては、痛みの強い急性期には安静、コルセット装着、痛み止めの使用、神経ブロックなどを行い、慢性期には運動療法を取り入れます。保存的加療が原則ですが、早期社会復帰を目指す場合、強い痛みが持続する場合、下肢の脱力、排尿障害などが生じる場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡や内視鏡を用いて原因となったヘルニアを摘出し、神経の圧迫を除去します(図1)

腰部脊柱管狭窄症
加齢、労働などにより長年負担がかかった腰椎に起こる疾患で代表的な疾患が腰部脊柱管狭窄症です。50歳以降に多く発生し、変性、変形が進んだ椎間板、椎間関節、脊椎を支える黄色靭帯の肥厚などにより、脊髄の神経が通る脊柱管が狭くなり、神経が圧迫されて発症します。下肢の痛みやしびれが出現し、その症状のため長い距離を歩くことができなくなり、少し休息するとまた歩行できるという間欠性跛行が症状として特徴的です。また前かがみになると楽になり、逆に背中を伸ばす姿勢になると症状が悪化するのも特徴の一つです。進行すると下肢の脱力、排尿障害を生じます。治療としてはコルセット着用、運動療法、神経ブロックや神経の血流をよくする薬の内服などを行いますが、ゆるやかに進行していく疾患のため、歩行障害が進行し、日常生活に支障をきたす場合には手術加療を行います。手術では顕微鏡を用いて肥厚した黄色靭帯と骨の一部を切除して、神経の圧迫を除去する除圧術を行います(図2)。明らかな腰椎不安定性を認める場合には固定術を併用します。

当院では脊椎、特に腰椎に関する手術を数多く行っています。腰椎の手術と聞くと怖いものと誤解される方も多いと思いますが、低侵襲な手術を心がけており、手術翌日にはほとんどの方が歩行器で歩行しています。入院期間は術後のリハビリテーションを含めて約3週間です。保存的加療、手術療法に関わらず、腰痛、下肢痛などの症状が気になる方は整形外科外来を受診してみてください。

 

図1 腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI
腰椎椎間板ヘルニア術前、術後MRI

 

図2 腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI
腰部脊柱管狭窄症術前、術後MRI


| Copyright 2010,01,01, Friday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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