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「結膜弛緩症」について

(この記事は2009年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


眼科部長 小室青


結膜弛緩症とは、その名の通り、結膜(白目の皮)が弛緩する(たるむ)病気で、中高年に非常によくみられます。病気といっても、もともとは、顔のしわと同様に加齢性の変化であるので、特に治療されていませんでした。しかし、最近、この白目のしわである結膜弛緩症が、涙目やごろごろ感といった目の不快感の原因となることがわかってきたため、手術的な治療もなされる様になってきました。では、なぜ、結膜弛緩症が目の不快感を引き起こすのでしょう。

涙は、上まぶたの外側の奥にある涙腺というところで作られ、目の表面を潤したあと約10%は蒸発し、残りは、目の内側にある小さな穴(涙点)から、鼻の奥の方へと抜けていきます(泣いた時に鼻がでるのは、このためです)。結膜弛緩症では、たるんだ白目の皮が、下まぶたの縁に存在します。この下まぶたの縁は、涙がたまり、涙点へ流れていく涙の通り道になっていますので、たるんだ白目の皮がこの通り道をじゃまするために、涙がうまく流れていかなくなり、涙がまぶたの皮膚の方に、こぼれやすくなります。そのため結膜弛緩症では、なみだ目を訴えることが多いのです。また、まぶたの縁にたまった涙は、まばたきのたびに、目の表面に広がりますが、結膜弛緩症では、本来涙がたまる部分にゆるんだ白目の皮があるため、涙のたまる場所が小さくなっています。したがって、涙が少ない人では、涙がさらにたまりにくくなり、もっと目がかわきやすくなることがあります。また、目がかわきやすい人では、ゆるんだ白目の皮が、まばたきのたびに、目にふれる感じ、すなわち、ごろごろ感を感じやすくなります。また、もともと、目がかわきやすいドライアイの人に白目のたるみがあると、目薬が、うまくたまらずこぼれてしまうので、症状が悪化しやすくなります。このような症状以外にも、まばたきのときに、たるんだ白目と上まぶたの縁が擦れて白目に出血(結膜下出血)が起こり、白目が真っ赤になったりすることもあります。また、かすんで見えることもありますが、結膜弛緩症があっても、まったく症状がない患者さんもたくさんおられます。

結膜弛緩症によると考えられる強い自覚症状がある場合には、治療を行います。よく充血する場合や、ドライアイがある場合には、炎症をおさえる薬や人工涙液の目薬をします。軽い症状であれば、自然によくなることもありますが、症状が強いようであれば、手術で治療します。手術は特に入院の必要もなく、手術の間の痛みもありません。手術は、白目のたるみを切除するものですが、白目のたるみは重力の関係で下方に強いので、主に下方の結膜を切除し、できるだけ目の表面をしわのないなめらかな状態にします。アンケートによる調査では、この手術後には、約90%の患者さんの自覚症状が良くなることがわかっています。しかし、涙目については、涙点以降の涙の通り道が狭くなっている(鼻涙管狭窄)を合併している場合も多くあり、結膜弛緩症の手術だけでは、あまり症状が良くならないこともあります。また、もともとドライアイがある場合には、術後も人工涙液の点眼を続ける必要があります。

結膜弛緩症は、ありふれた病気ですが、目の強い不快感を生じることがあります。なみだ目やごろごろ感といった目の不快感が続く場合には、一度眼科を受診してみて下さい。

| Copyright 2009,09,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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