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さまざまな内視鏡診療について

(この記事は2012年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


葛西先生 内科部長・消化器内視鏡センター長 葛西 恭一


 消化器内視鏡センターは当院本館地下1階の画像診断センター内にあります。当院は日本消化器内視鏡学会の指導施設に認定されており、10名の内視鏡医(指導医 1名、専門医 6名)と8名の看
護師(内視鏡技師 3名)で日々内視鏡検査・治療を行っています。

 「内視鏡」とは太さ約1㎝、長さ約1mの柔らかいチューブで、体内の状態を体に傷をつけずに観察できる医療機器の総称です。体の様々な部分の観察に使用されますが、特に消化管(胃や大腸)の観察に最も広く使用され、発展してきました。

 現在当センターで行っている内視鏡診療について紹介します。



◆上部消化管内視鏡

 いわゆる「胃カメラ」と言われている検査でもっとも一般的な内視鏡検査です。平成23年度は年間約2,600件行いました。食道・胃・十二指腸を観察し、癌や潰瘍、ポリープ、胃炎などの診断に用います。最近では逆流性食道炎という病気が増えてきていますが、食習慣・生活習慣の欧米化が要因の一つと考えられます。胸焼けやゲップを自覚することが増えてきたと感じておられたら一度検査されることをお勧めします。また、最近NBIと呼ばれる特定の波長の光を用いて消化管を観察すると通常の光(白色光)では見えにくかった早期癌がより見えやすくなることがわかり、以前にもまして癌
をより早期に診断できるようになりました。(図1)早期の胃癌や食道癌は内視鏡切除が可能な場合が多いので、少しでも自覚症状のある方、自覚症状はなくても癌が心配な方は是非検査を受けて下さい。


◆下部消化管内視鏡

 肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸まで観察します。平成23年度は年間約1,200件行いました。日本人の大腸癌は増加傾向にありますが、早期発見できれば内視鏡切除や腹腔鏡下切除により治癒が期待できる疾患です。ただし、胃カメラに比べると、挿入時の苦痛が強いのではないかと不安に思っておられる方も多いと思います。当センターでは、患者様毎に異なっている大腸の形状、走向に対応するため、体内の内視鏡の形状が体外で確認できる内視鏡装置を採用しております。(図2)また、従来は内視鏡から「空気」を送り込むことにより大腸を膨らませて観察していましたが、現在は体内に吸収される「炭酸ガス(二酸化炭素)」を送り込む装置を用いておりますので術中、術後の苦痛はかなり軽減されます。これらの機器の進歩により安全で苦痛の少ない挿入を行っておりますので安心して検査を受けて下さい。また、胃カメラと同様にNBIや拡大観察による精密な検査が可能です。


図1
(図1)NBI拡大観察で確認できた
大きさ4㎜の早期胃癌

図3
(図3)内視鏡的に除去された総胆管結石

図2
(図2)体内の内視鏡の形状を右上のモニター画面で
確認しながら大腸内視鏡を挿入していきます。

◆胆膵内視鏡

 食物の消化に必要な「胆汁」と「膵液」は、胃の奥にある十二指腸から分泌されます。胆膵内視鏡検査は、十二指腸に挿入した内視鏡から胆管(胆汁の通路)と膵管(膵液の通路)に造影剤を注入してレントゲン撮影し、胆石症、膵炎、胆道癌、膵癌などの診断や治療を行います。平成23年度は約130件の検査を行い、総胆管結石の除去や胆管炎・黄疸を軽減させるチューブやステントの留置を多数例行っております。(図3)


◆腹腔鏡・内視鏡合同手術

 近年、より低侵襲な外科治療を目指して内視鏡医と外科医が合同で行う手術方法が開発される時代となり、実際に当院でもそのような手術を行っています(西陣だより2012年7・8月号で紹介しています)。今後この分野は更に発展するものと予想されます。


 消化器内視鏡センターは、より苦痛の少ない安全で確実な診断・治療を心懸けてスタッフ一丸となって努力していきますのでよろしくお願いします。



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胆石症と急性胆道感染症

(この記事は2012年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


稲垣先生 内科 医長 稲垣 恭和

 胆石症はきわめて頻度の高い疾患ですが、多くの方は無症状です。しかし一部の患者様は急性胆道感染症として発症することがあります。急性胆道感染症は急性胆嚢炎と急性胆管炎にわかれますが、胆嚢の出口(胆嚢頚部、胆嚢管)に石がはまりこんで発症するのが急性胆嚢炎、総胆管にはまりこんで発症するのが急性胆管炎です。急性胆管炎の方がより重症化する可能性があり、危険な病気です。本来肝臓で作られた胆汁は胆嚢に蓄えられ、胆嚢→総胆管→十二指腸に流れますが、石がはまりこむことにより胆汁の流れが悪くなり、胆汁うっ滞がおこり、腸内細菌が胆嚢、胆管に感染を起こすのです。最初におこる症状としては上腹部痛、発熱、嘔気、嘔吐などが多く、急性胆管炎では黄疸がでることもあります。重症化すると血圧低下や意識障害が起こることもあります。高齢者では症状が出にくいこともあり発見が遅れ易く注意が必要です。

※胆道とは、肝臓でつくられた胆汁(消化液 兼 不要な黄色色素の排泄物)が十二指腸に排泄されるまでの管の総称です。
 胆道には、胆管と胆のうがあります。胆管は、胆汁が通る管です。胆のうは、胆汁を貯めておく袋です。なくなっても生活に支障はありません。胆のうは食事を摂らない時間帯に胆汁を一時的に濃縮しながら貯蔵します。食事を摂って胃が動き出すと収縮して中に貯めていた胆汁を十二指腸に押し出します。
資料提供:日本イーライリリー(株) COUNSELING FILE(膵臓・胆道)


【診断】
 採血、腹部超音波検査、CT、MRI などで診断します。


【治療】

 基本は入院のうえ絶食とし抗生物質の点滴を行います。急性胆嚢炎の場合は重症度に応じて緊急胆嚢摘出術や経皮的胆嚢穿刺吸引術(PTGBA)、経皮的胆嚢ドレナージ術(PTGBD)などを行うこともあります。PTGBA は腹部超音波をみながら胆嚢に針をさし、感染した胆汁を抜く治療法であり、PTGBD は同様に胆嚢に針を刺し、胆嚢内にチューブを留置する治療法で共に有効な治療法です。急性胆管炎の場合は抗生物質だけで改善しないことも多く、できるだけ早く内視鏡をつかって胆管にチューブを挿入し胆管内の感染した胆汁を抜く必要があります。その後胆管炎が落ち着いた段階で内視鏡的に結石を除去します。急性胆道感染症は治療により改善しても再発することが多いため、胆嚢摘出術を行うことが勧められています。
ERCP (内視鏡的逆行性膵管胆管撮影)


 急性胆道感染症は重症化すると命に関わることがある疾患です。胆嚢結石をもっている方は腹痛、発熱などの症状があればできるだけ早く医療機関を受診するように心掛けてください。また症状がない方でも、胆嚢の石が総胆管に落ちていることもあり、そうなると高率に急性胆管炎が起こるため、1年に1度は腹部超音波などの定期検査を受けられることをお勧めします。



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UPD System -内視鏡挿入形状観測装置-

(この記事は2011年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


竹中先生 内科 部長 竹中 信也

 今回は新しく西陣病院に導入された、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)のシステムをご紹介します。

 それは、UPD(内視鏡挿入形状観測装置)、通称:コロナビです。
 このシステムは、大腸カメラが大腸の中でどのようになっているのかを、X線(レントゲン)を使うことなく、見ることができるシステムです。(図1)
 カメラの挿入形状を3次元的に表示。内視鏡に内蔵された十数個のコイルから発生する磁界を挿入形状観測装置にて受信し、リアルタイムで挿入形状を表示します。(図2)
 UPDは、従来の挿入形状を表示する手段として活用されていたX線と比較し、磁界を利用しているため、術者、介助者、患者様の被曝が無くなるばかりではなく、リアルタイムの3次元的なカメラの挿入形状の表示により、スムーズな内視鏡の挿入をサポートするため、患者様の負担の軽減も期待できます。
 しかし、今後も従来からのX線透視室での大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を平行して行います。ただし、挿入困難が予想される症例、ポリープを切除する症例、造影剤を組み合わせる症例などを中心に行なっていきます。これにより検査の待ち時間もかなり短縮されると予想しています。
 西陣病院では、近年増加し続けている大腸疾患(大腸ポリープ、大腸癌、潰瘍性大腸炎、虚血性腸炎、大腸憩室等)、それに伴い増加する大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の件数に対応すべく、UPDを新たに導入しました。
 みなさんも、主治医に大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を勧められた時には、臆することなく是非受けてみて下さい。

図1図2_UDP図2_X線
図1図2 UDP図2 X線


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逆流性食道炎について

(この記事は2010年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



内科 医長  金光 大石  


 日本ではここ10~20年前より逆流性食道炎という病気が増えてきています。今回はこの逆流性食道炎の病態と原因、検査、治療についてお話します。

 通常われわれの身体では、食べ物を胃にまで導く食道と胃との接合部(噴門部)は、安静にしている時にはある一定の力で閉じており、胃酸や胃の内容物が食道側に逆流するのを防いでいます。しかし加齢や肥満、食生活、喫煙等の要因で噴門部のしまりが悪くなってしまうと胃酸の食道側への逆流により食道が炎症を起こした状態になってしまいます。これが逆流性食道炎です。

 通常は、食道も、逆流してきた胃酸や胃の内容物を、胃側へ押し戻そうとする蠕動運動という働きがありますが、その働きが低下することも逆流性食道炎が起こる原因の一つといわれています。逆流性食道炎の診断は、主に問診と内視鏡検査によって行なわれます。逆流性食道炎の症状は、胸やけの他にも胸痛や喉のつかえ感、慢性的な咳といったものがあります。

 内視鏡検査は、実際に食道に炎症があるのか、また、どの程度の炎症があるのかを確認することの他に、食道がんや胃がん等の悪性疾患でないことを確認する目的で行ないます。

 逆流性食道炎の治療の基本は生活習慣の改善と薬物治療です。脂肪分やタンパク質の摂りすぎのほか、甘いもの、香辛料、酸味の強い果物なども胸焼け症状を悪化させる可能性がありますので摂りすぎには注意が必要です。また、一度に摂る食事量についても腹八分目の適量を心がける必要があります。コーヒーや緑茶などに含まれるカフェインは胃酸の分泌を増やすといわれ、また、アルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、噴門部の筋肉をゆるめる作用があり、摂りすぎは症状の悪化につながりやすいでしょう。

 以上の様な食生活の改善とともに、適度な運動による肥満の解消が望ましいとされています。生活習慣の改善だけでは、症状を完全になくすのは難しいため、多くの患者さんは生活習慣の改善とあわせて薬物治療を行います。

 薬物治療を始めると、多くの方では、すみやかに症状はなくなりますが、症状がなくなっても、食道の炎症はすぐに治るわけではありませんので、しばらくは薬を飲み続ける必要があります。また、現在使われている薬では、胃から食道への逆流を根本から治すことはできないため、治癒した後に服薬をやめると再発する方が少なくありません。
そうした方では、薬を長い間飲み続ける維持療法も行われます。食道の炎症の程度が軽く、胸やけなどの症状も時々しか起こらないような方では、症状がある時だけ服薬する治療が行われることもあります。

 症状にお心当たりがある場合は、逆流性食道炎かも知れません。適切な診断、治療により不快な症状を改善するため、一度内科でご相談下さい。

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ピロリ菌と私達の関係は?

(この記事は2010年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

曽我先生 内科 医長 曽我 幸一

 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、「ピロリ菌」としてよく紹介されていますので、一度はこの名前をお聞きになったことがあるのではないでしょうか? 1982年にウォーレンとマーシャルが人の胃からの培養に成功し、翌年発表された細菌です。それまでは、胃内は酸性環境で細菌が生育しにくいという「常識」があったため、当初はなかなか理解が得られなかったようですが、現在ではピロリ菌と言えば、誰もが知っている菌になりました。

 ピロリ菌は大きさが3〜4μm程度ですが、片側に数本の細長い鞭毛を持ち、これを素早く回転させることで胃粘膜表面を自在に動き回ることができます。 また、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を持っているため、尿素を分解し、アンモニアを生成する能力があります。これによりピロリ菌は胃酸を中和し、菌体自身を守ることができます。

 ピロリ菌の感染原因を個々に同定するのは困難ですが、口から入って胃に定着するというルートが定説です。排泄される便や胃からの嘔吐物などが直接・間接に他人の口に入り、感染が成立すると言われています。感染率は衛生環境と相関があり、欧米では低く、東南アジアなどで感染率が高いようです。現在、日本ではその中間くらいで、幼少期の衛生状況に大きく影響を受けるため、感染率は若年者では低く、50歳以上で高いと考えられています。

 ピロリ菌が関連する疾患としては、胃・十二指腸潰瘍、胃癌、慢性胃炎などがあります。また、ピロリ菌感染と血小板減少症や慢性じんましんなどの意外な疾患での関連や、冠動脈硬化もピロリ菌感染者の方が起こしやすいことが指摘されています。このように、ピロリ菌感染から生じるさまざまな影響は、胃の病気にとどまらず、時には全身的な影響を引き起こすことが知られており、各分野で研究が進んでいるところです。

 自分の体でのピロリ菌の存在を確認するために、大きく分けて内視鏡を使う検査と使わない検査があります。内視鏡を使う検査として、内視鏡で組織の小片を取り、直接的にピロリ菌の存在を確認する培養法、組織鏡検法、迅速ウレアーゼテストなどがあります。現在は速くて、簡単で精度も高い迅速ウレアーゼテストが検査の中心となっています。

 また、内視鏡を行わずに間接的にピロリ菌を証明する検査として、検査薬を飲んだ後に呼気を集めて分析する尿素呼気試験や、採血で抗体価を調べる方法や便中抗原法などがあります。

 ピロリ菌への治療は、一般的には抗生剤と胃薬を使用した除菌治療が行われています。潰瘍を繰り返す方がピロリ菌除菌治療に成功すると、潰瘍が再発しにくくなることが知られています。 また除菌することで胃癌発症リスクが軽減し、一部の胃ポリープも除菌治療で消退することが知られています。

 日本ヘリコバクター学会はすべてのピロリ菌感染者の除菌を行うことを強く勧めていますが、残念ながら、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌内視鏡治療後の方に限って除菌療法に対して保険適応が認められており、その他の方に検査、除菌を行った場合は自己負担になるのが現状です。

 では、このようにさまざまな影響を及ぼしているピロリ菌に対して、どのように対応すればいいのでしょうか? 私たちは、まずは内視鏡検査(胃カメラ)を受けて頂くことをお勧めしております。当院では条件がそろえば、鎮静剤を使用した胃カメラを行うこともできますので、以前苦しかった方も一度検診のつもりで受けて頂くことをお勧めいたします。胃カメラは胃の病気だけではなく、食道、十二指腸の病気も確認することができます。ピロリ菌だけでなく、胃腸のことでも気になることがあれば、気軽に当院で御相談ください。

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