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社会福祉法人 京都社会事業財団 にしがも透析クリニック

(この記事は2010年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


透析センター長
腎臓・泌尿器科部長 今田 直樹


 にしがも透析クリニックは2010年4月に京都市北区西賀茂に、主に併設する介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)のにしがも舟山庵に入所してこられる透析患者さんを対象に透析治療を施行する目的で開設されました。同一法人である西陣病院が後方支援病院となり、前西陣病院透析センター長の青木正先生が院長に就任され、スタッフもほぼ西陣病院関係者でスタートしました。西陣病院透析センターの私たちも定期的に、にしがも透析クリニックに出向し、青木院長と協同で透析患者さんの全身管理を行っています。そうすることで西陣病院と同様の透析医療の提供を継続しております。

 20 〜30年前まで、透析患者さんといえば予後は不良で、透析導入後10年間生存することは難しいとされていました。しかし近年の透析医療の進歩により、治療の質は格段に向上し、透析による患者さんの負担や予後は劇的に改善されました。しかしその一方で、わが国では高齢化と核家族化が進み、一人暮らしの高齢者が増えてきており、こうした患者さんをどのように治療していくのか、現代の医療体制には大きな課題が課せられています。

 特に透析医療では週3日の透析のための通院、家族による介護、病態急変時への対応などが必須となるために、その度合いは深いと感じております。日常生活動作(ADL)が低下して通院が困難な患者さん、近隣に透析施設がない患者さん、十分な介護を行う身内がいない患者さんは、最終的には長期入院が必要となることは明らかです。 西陣病院では、2008年3月に患者さんを、ご自身の病棟ベッドごと搬送して透析を行うことができる透析病床を8床新設し、その8床で入院継続を余儀なくされる症例に今は対応できておりますが、対応可能な患者数には限界があります。ましてや病床をもたない透析クリニックで治療を受けている患者さんは、今後ますます受け入れ施設を探し出すことさえも難しい状況になってくると予想され、課題はより深刻であります。

 そんな折、西陣病院の経営母体である社会福祉法人京都社会事業財団は、京都市より依頼を受けました。その内容は、高齢者透析医療の問題を解決する一手段として、特別養護老人ホームを併設した透析クリニックを設置できないかという依頼でありました。本提案はにしがも舟山庵(特別養護老人ホーム)を併設したにしがも透析クリニックという形で実現することとなりました。

 透析患者さんにとってこの併設は極めて大きな意義があります。「通院」という障害を取り払って、施設に入所しながら、安定した透析治療を受けることができるからであります。また、介護者にとっても「通院」「介護」の負担から開放されることの意義は大きいと思います。

 今までの特別養護老人ホームでは透析患者さんの入所は敬遠されていました。それは、透析患者さんは病状が不安定で急変する場合が多いなど負の印象が強く、そこで働くスタッフの不安感に対する配慮も必要でした。そこを乗り越えての今回のケースは、透析患者さんが特別養護老人ホームに入所できて、しかも併設された透析クリニックで透析治療が施されるという非常にありがたい画期的な手法であり、患者さんもご家族も大変喜んでいただいております。このシステムは透析医療現場のニーズに応えた事業として大きく期待されるはずです。

 解決しなければならない課題はまだまだありますが、西陣病院としては、にしがも透析クリニックを同一法人の事業としてサポートする立場にあり、入院治療の必要が発生した場合は入院の受け入れに協力し、是非ともこの事業が成功するように支援していく所存です。

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慢性腎臓病(CKD)外来が始まります

(この記事は2010年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科  奥原 紀子


 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)という言葉を聞いたことがありますか? 慢性腎臓病とは自覚症状のないまま腎臓の機能がだんだん低下していく病気です。心筋梗塞や脳梗塞や糖尿病といった病気ほど知名度は高くないのですが、実は慢性腎臓病は多くの方にとって無縁ではない病気です。軽度のものも含めると約2000万人が慢性腎臓病をもっているというデータもあるくらいです。

 慢性腎臓病は進行すると末期腎不全となり、腎臓の機能がほとんどなくなってしまいます。そうすると体はむくみ、息は苦しくなり、だるさや食欲不振などの尿毒症がおこり、ついには血液透析なしでは生きられなくなってしまいます。現在日本には約27万人の透析患者さんがいて、さらに毎年1万人ずつふえています。国民の500人に1人は透析を受けていることになりますし、高齢者に限っていうならこの確率はもっと高くなります。また、慢性腎臓病があると脳梗塞や心筋梗塞といった心血管系の病気になる危険性が3倍も高くなることもわかってきました。

 近年慢性腎臓病の進行を抑える方法がわかってきたことから、「慢性腎臓病を早期に発見し治療をする」ための取り組みが日本中で始まっており、当院でも慢性腎臓病外来を始めることになりました。

 慢性腎臓病の診断は尿検査や血液検査で行います(尿蛋白陽性などの所見や採血で概算する糸球体濾過量(GFR)というものをみて診断します)。進行するまで、自覚症状はないことがほとんどです。治療法は、慢性腎臓病の原因やその進行度によってもかわってきますが、まず大切なのは生活習慣の改善やしっかりとした血圧の管理です。特別な点滴をしたり、長期間の入院加療の必要がある人はごく少数です。その代わり、じっくり気長に治療をしていくことがとても大切になります。このため、当院では「医療連携パス」というシステムを採用しています。この「医療連携パス」とは、慢性腎臓病のかたを普段の「かかりつけの医師」と「慢性腎臓病外来の医師」の二人体制で連携をとりながら治療していくものです。慢性腎臓病の治療は血圧の薬を飲むなど、かかりつけですでに開始されている治療と同じ部分も多くあります。連携をとることで処方がだぶってしまったりする危険がなくなりますし、慢性腎臓病外来に何度も通わなくても、ふだんはかかりつけ医にみてもらうことができます。塩分制限などの食事療法をしているつもりでも実際には達成できていなかった方は、当院で栄養士から詳しい栄養指導をうけていただいくことが可能です。

 現在かかりつけの医師がある方で慢性腎臓病の可能性がある方は、当院の慢性腎臓病外来を紹介受診していただければ効率よく診断・治療を行うことができます。また、現在かかりつけ医はないけれども、慢性腎臓病のことが心配な方もぜひお気軽にご相談ください。

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男性の病気、前立腺癌と前立腺肥大症について

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


泌尿器科 医長 関英夫泌尿器科 医長 関英夫


おしっこが近くて少しずつしか出ない、残尿感がある、おしっこが出にくいといった症状は加齢に伴い男女を問わず多かれ少なかれ出てきます。「年をとったら皆そんなもんだ、仕方がない。」ということも確かにありますが、中にはそうでないこともあります。

とくに男性においては、膀胱と尿道の間に前立腺という臓器があり、前立腺は加齢に伴い排尿の異常の原因となることがあります。その中で頻度の高いものが前立腺肥大症です。前立腺肥大症とはその名の通り、前立腺が大きくなって、正常ではクルミくらいのものが大きいものではソフトボール位になってしまい、膀胱や尿道が圧迫されておしっこが出にくくなったり、頻尿になったりする疾患です。この病気は50才くらいから症状が出だして次第に悪化してくることがあります。悪化するとお酒や風邪薬などの服用を契機におしっこが全然出せなくなり非常に苦しい思いをすることがあります。年末年始などに飲みすぎた後でおしっこを出したくても出せなくなり、苦しくなって深夜に救急受診される方を時折見かけます。

治療方法は、軽症ならば内服で、重症の場合は手術を行うことが一般的です。手術は尿道から内視鏡をいれて前立腺を削り取る手術がほとんどです。入院は1-2週間です。手術によって薬を使わずとも若い頃の様に勢いよく排尿できるようになることがあります。

次に、いま述べた前立腺肥大症とほとんど同じ症状で、注意をしなければいけない疾患で前立腺癌があります。症状が同じでも癌の場合は治療法が全然違ってきます。手術療法、放射線療法(リニアック、IMRT、小線源療法)、薬物療法(ホルモン療法、癌化学療法)などを駆使して治療を行います。もちろん早く見つかるほうが治癒率は高いです。しかしながら癌の場合は症状が出てきたと時はすでに進行癌で根治が難しいことがしばしばです。

症状が気になりだしたら一度は受診していただくのはもちろんですが、症状が出る前に検診などで前立腺癌の血液検査(PSA)をすれば早期癌の段階で発見できることもあり、根治できる可能性も高くなります。50歳を超えたら1年から2年ごとに1回程度の前立腺癌の血液検査をすることをお勧めします。

以上、簡単ではありますが泌尿器科の代表的な疾患を紹介させていただきました。


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慢性腎臓病について

(この記事は2009年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


泌尿器科 医師 前田陽一郎腎臓・泌尿器科 前田陽一郎


近年、慢性腎臓病(CKD : Chronic Kidney Disease)という概念が提唱され、その早期発見と早期治療の重要性が指摘されています。慢性腎臓病とは、尿検査や血液検査で腎臓に病気があることを示す所見がある、または腎臓の機能がある程度低下している状態のどちらかが3ケ月以上持続する場合のことです。この慢性腎臓病の患者は、心筋梗塞や脳卒中になり易いことがわかっています。また、腎臓の機能が低下してしまうと透析療法が必要になる可能性が高くなります。このような理由から慢性腎臓病の早期発見と早期治療は非常に重要なのです。日本腎臓学会の調査によると、わが国の成人における慢性腎臓病の患者数は約1330万人いると推計されています。これは成人のうち慢性腎臓病の人が12.9%もいることになりこの数は予測されていたよりもはるかに膨大です。もはや慢性腎臓病は国民病であるといっても過言ではありません。これらの慢性腎臓病の人たちが早期にそれぞれの進行過程に合った、適切な治療をきちんと行えば、透析になったり、心疾患で亡くなったりする人の数を大幅に減らすことが可能と考えられています。

では、慢性腎臓病を早期発見するにはどうすればよいのでしょうか? 一番簡単な方法は尿検査を受けることです。職場の健診や住民健診で尿検査を受けたことがある方も多いのではないでしょうか。腎臓が正常な場合は尿中にタンパクは混じっていません。ところが慢性腎臓病の患者では尿にタンパクが混じっています。この尿タンパクが存在するかを調べるのは非常に重要なことなのです。尿検査ではこの尿タンパクの有無を調べることができます。また、尿タンパクがたくさん出ている人ほど、将来腎臓の機能が悪くなる可能性が高くなることがわかっています。しかし、健診などで「尿にタンパクが混じっていますよ。病院で診てもらってください。」と指摘されても、自覚症状がないために、ついつい放っておく人が圧倒的に多いのが現実です。尿タンパクを指摘されて実際に病院で詳しい検査を受けた人は約半数にとどまっていることが、日本慢性腎臓病対策協議会の調査で分かり、腎臓病に対する認識の低さが問題となっています。尿タンパクの程度に応じて適切に治療することで、腎機能障害の進行を防ぐことができる場合があります。また、腎機能障害の進行を防ぐことができない場合でもその速度を遅くすることは可能です。健診などで尿タンパクを指摘された場合は、自覚症状がなくても(自覚症状が出現するぐらい腎臓の機能が悪くなる前に)病院で詳しい検査を受けて頂きたいと思います。特に、糖尿病、高血圧、肥満、脂質異常症(高脂血症)、メタボリックシンドローム、尿路の病気、膠原病、肝炎、家族に慢性腎臓病の人がいる、消炎鎮痛剤を常用する方は注意が必要です。尿検査を受けていない人にはぜひ受けていただきたいと思います。


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自宅でおこなう透析 ~腹膜透析(PD)について~

(この記事は2009年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

泌尿器科 医長 小山正樹

 さまざまな原因で腎臓の働きが除々に悪くなる病気を、慢性腎臓病(CKD)といい、日本では、成人の25人に1人は慢性腎臓病の疑いがあると言われています。腎臓病が進行すると、透析治療が必要となります。透析患者の増加には、糖尿病などの生活習慣病の増加や高齢化社会の影響が大きく、平成17年末現在では、25万人を超える人が透析治療を受けておられます。これは国民の約500人に1人にあたります。

 透析療法には、血液透析(HD)と腹膜透析(PD)という方法があります。それぞれ特徴がありますが、腹膜透析の大きな利点としては、在宅でできることにより透析前の生活スタイルを大きく変えることなく始められることや、ゆっくりと24時間連続した透析治療であることにより、体にやさしく、透析導入時に残っている腎臓の機能をより長く保てることなどがあげられます。

 腹膜透析は、自分の体の中の腹膜を利用して血液をきれいにします。お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物が透析液側に移動します。その老廃物や水分を含んだ透析液を体の外に出すことで血液をきれいにします。

 また、腹膜透析には、CAPDとAPDの2種類があります。CAPDは日中に4回ほど透析液を交換して治療します。交換は日常生活の中で行います。自宅だけでなく職場や学校などでも行えます。APDは就寝中に機械を使用して、透析液の交換を自動的に行う治療です。また、CAPDとAPDを組合わせることもあります。

 腹膜透析を行ううえで透析液を交換するためのカテーテルと呼ばれるチューブをお腹に埋め込む必要があります。カテーテルは、お腹よりやや下の左ないし右のお腹より出ています。カテーテルの出口は、特別な消毒はいりませんが、一日一度は石鹸とシャワーによる洗浄が必要です。入浴にはカバー材を貼り付けて入る必要があります。

 腹膜透析は、自分の腹膜を使って透析を行いますので、腹膜の動きが弱くなってきたら、いずれ血液透析に移ることが必要になってきます。また、長期間腹膜透析を行うとお腹の中の腸管が癒着することがありますので、5から7年で腹膜透析から血液透析に移ります。

 腹膜透析は、病院で行う治療でなく、自宅で行いますので、自分でおこなう必要がありますが、病院で十分な教育を受けてから、退院しますので自宅では自分でできるようになります。高齢者の方の場合には、介護者がおこなうことにより、高齢者だからといってできない治療ではありません。通院の回数が少ないので、高齢者にとって適している治療とも言えます。当院での腹膜透析患者さんの通院は、2週間に1度の通院で、月に2回のみの通院回数です。当院では、腹膜透析外来は、水曜日午後におこなっております。

 残念ながら腎不全が進行し、透析療法が必要になられる方で、血液透析および腹膜透析について詳しくお話をお聞きしたい患者さんがおられましたら、当院泌尿器科にご相談下さい。
腹膜透析(PD)ってなに? 腹膜透析のしくみと特徴

腹膜透析(PD)のしくみ

 お腹の中に透析液を出し入れすることで、体の余分な水分や老廃物を取り除きます。
 お腹の中に透析液を一定時間入れておくと、腹膜を介して血液中の余分な水分や老廃物が透析液側に移動します。その老廃物や水分を含んだ透析液を体の外に出すことで血液をきれいにします。

治療の特徴腹膜透析

●通院は月2回程度です。
 自宅や職場、学校でも可能ですので、社会復帰に有利で、生活スタイルにあわせた治療が行えます。
●治療は自分で行えます。





(画像はクリックすると大きく表示されます)

この記事の画像は、NPO法人腎臓サポート協会の許諾を得て転載しています。
(出典:NPO法人腎臓サポート協会「自宅でできる腹膜透析(PD)[腎栓の治療]」より転載)。

| Copyright 2009,01,01, Thursday 09:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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