西陣だより

食塩の多い食事は心臓病や胃がんになりやすい。

(この記事は2019年3・4月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

内科 副部長
角田 聖



食塩(塩分)が高血圧の原因になり、心不全や脳卒中など心血管病の予防や治療に減塩食が大事だということはよくご存じだと思います。しかし食塩の摂りすぎが関係している病気は心血管病だけではありません。それに、自分は薄味にしているから大丈夫と思っていませんか? 実際にどれくらい塩分を摂っているか調べる方法について説明します。

食塩と関係する病気

食塩の摂りすぎは心血管病の原因となるだけでなく、(表1)のように多くの診療科で扱う病気と関係があります。動脈硬化、心不全、心筋梗塞、脳卒中など高血圧と関わりが深い病気になりやすいのは言うまでもないことですが、食事の塩分が多い国や地域では胃がんが多いことがわかっており、その理由として血圧は関係なく、胃がんの原因になるヘリコバクター・ピロリ菌という細菌が、塩分が多い胃粘膜では感染しやすいからなどと考えられています。腎臓に石ができる腎尿管結石や骨粗鬆症も食塩が関係しています。

 

 

 

 

 

 

日本人と塩分

食べ物の保存を主に塩に頼っていた昔に比べ、現代の日本人の食塩摂取量は減少傾向にありますが、アメリカやイギリスに比べるとまだ多く、平成29年の調査によると日本人の食塩摂取量は1日あたり男性で10.9グラム、女性で9.1グラムでした。男性のほうが多いのは、同じ味付けでも男性は食べる量が多いからと分析されています。いくら薄味にしても、食べ過ぎては意味がないということです。

自分の食生活で塩分はどれくらい?

食塩は料理に溶け込んでいますから目に見えません。家庭での調味料や加工食品の成分表示を確認することで、1食あたりどのくらい塩分が含まれているか、計算できます。外食の場合もお店によってはカロリーや塩分表示のあるメニューがおいてあるので助かります。でもこれだけでは実際のところはわかりません。西陣病院では1回分の尿検査で1日の推定食塩摂取量が表示できるようになりました。1回の尿に含まれるナトリウムの濃度から1日の食塩摂取量を予想する計算式を使うので多少の誤差はありますが、24時間尿をためておくよりも簡便に、繰り返して定期的に調べることができます。

高血圧の人は1日6グラム未満、そうでない人は7~8グラム未満に

自分の食塩摂取量がわかったら、目標を決めます。日本人の食塩摂取量の目標値は男性で1日8グラム未満、女性で1日7グラム未満です。高血圧の人は男女とも1日6グラム、1食あたり2グラムにすることが目標です。しかし食塩を制限しているつもりでも、実際はあまり出来ていないものです。高血圧患者さんを対象にしたある研究によると、減塩を意識していない人の平均値は1日10.6グラムだったのに対し、減塩を意識している人でも平均9.4グラムの食塩を摂っていたという報告があります。西陣病院でも調べてみましたが、6グラム未満を守れているのはわずかに3~5パーセントの人だけでした。

 

<おわりに>

食塩の摂りすぎで年間4万人近くの人が亡くなっています。その半数は心血管病で、のこりは癌であることがわかっています(2007年データ)。高血圧の人はもちろんのこと、そうでない人も、大人も子供も減塩生活をお勧めします。一度担当の先生に検尿してもらって自分の食塩摂取量を知っておきましょう。

 

 

2019年03月01日