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2009年4月より「ヘルニア(脱腸)外来」を開設します!

(この記事は2009年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


外科 福本兼久


当院外科外来では、鼠径ヘルニアなどをより専門的に診察するため、2009年4月より火、水、木曜日の午後1時半から「ヘルニア(脱腸)外来」を開設いたします。この専門外来では、鼠径ヘルニアをはじめ、大腿ヘルニア、腹壁ヘルニア、腹壁瘢痕ヘルニアなどお腹のヘルニアの診断と治療を行っていきます。以前、西陣病院だよりにも書きましたが、「ヘルニア」とは医学用語で「正常の位置にあるものが他の部位に飛び出してしまうこと」、俗にいう「脱腸」のことで、あまり症状がない人は病院を受診されず、意外と「隠れヘルニア」が多いのが現状です。では、以前と同じような内容になりますが、ヘルニアについて少し詳しくご説明致します。


大人と子供で違う原因

鼠径ヘルニアは、足のつけ根(鼠径部)がふくらむ病気です。鼠径ヘルニアのできる原因は子供と大人でやや異なります。子供の場合は、本来ならばふさがるはずの腹膜の袋がふさがらずに残ってしまうという先天的なもので、自然に治ることもありますが、生後5カ月位からは手術が必要となります。また大人の場合は、腹壁の筋肉が加齢とともに弱まり、その弱くなった部分を通って腹膜の袋が出てきてしまうことが原因です。こちらは自然に治ることはなく、手術で治療が必要です。

ヘルニア     ヘルニア     ヘルニア


鼠径ヘルニアの症状 ~怖い「嵌頓(かんとん)状態」~

ヘルニアの症状は、立ち上がったりお腹に力を入れると鼠径部がふくらみ、体を横にしたり手で押さえると引っ込んでわからなくなることが特徴です。このように腸が出たり入ったりしているうちは、軽い痛みやつっぱり、便秘程度で、強い痛みなどの症状はありません。しかし、腸(臓器)が飛び出したまま戻らない状態(かんとん状態)になってしまうと、はさまった腸をすぐに元に戻さなければ腸が腐ることもあるので、緊急手術が必要となります。


鼠径ヘルニアの治療

大人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、薬やヘルニアバンドでは治らず、「手術」のみが唯一の治療法です。鼠径ヘルニア手術は、子供の場合、飛び出した袋を切るだけですが、大人の場合は弱くなった腹壁を補強することが必要です。この補強は、古くから周りの組織を縫い寄せる方法がとられてきましたが、この方法では、縫い合わせた筋肉や筋膜の部分が痛み、加齢によって筋肉が弱くなると再発したります。そこで現在では、筋肉の弱い部分にメッシュ(細いポリエステル製の糸をシ-ト状にしたもの)を挿入し、腹膜を広く覆い補強するのが主流となっています。この手術のメリットは筋肉を縫い合わせないので、術後の違和感や痛みが少なく早期社会復帰が可能で、再発が少ないことです。当院でもメッシュを用いた手術を行っており、下記のような様々な形のメッシュをヘルニアの状態により選んで使用しています。また、当院では、鼠径ヘルニア手術にクリニカルパスを使用しており、入院期間は3〜4日間程度ですが、状況に応じて手術当日に入院し1泊2日で術後早期に退院も可能です。


メッシュ・プラグ   メッシュ・プラグ

プロリーン・ヘルニア・システム(PHS)   プロリーン・ヘルニア・システム(PHS)

ダイレクトクーゲルパッチ   ダイレクトクーゲルパッチ


手術時の麻酔は?術後は?

腰椎麻酔から全身麻酔まで患者様の状態に応じて行います。手術後は、翌日から食事や歩行が可能です。シャワ-やお風呂に入ることもできます。また、退院直後から事務や軽作業の仕事は可能です。ただし、重い物を持つことやスポーツなどでおなかに強い力を入れるのは、手術後1ヵ月ぐらいは避けて下さい。


鼠径ヘルニアの手術は、人工補強材の登場によって、患者さんの負担の少ない手術が実現可能になりました。また手術後の痛みが少ない点や、短時間で終わること、退院後に早期社会復帰が可能なことなど利点の多い手術です。足の付け根がふくらんできたら、当院のヘルニア専門外来へお気軽にご相談してください。

また、ヘルニアの情報は次のウェブサイトでも詳しく紹介されています。
ヘルニア倶楽部

| Copyright 2009,04,27, Monday 03:01pm administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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