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小さなキズで行う腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術について

(この記事は2016年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


高木先生 外科 副部長 高木 剛


 今回は、鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)の治療方法のなかで、できるだけ小さなキズで治す手術方法についてお話しします。鼠径ヘルニアの手術には、大きく分けると2つの方法があります。一つは鼠径部切開法で、これは鼠径部(足の付け根)を4cm程切開して、飛び出す部位を修復する方法です。もう一つは腹腔鏡手術で、鼠径部を切開せずお腹に3ヶ所穴をあけて腹腔鏡といったカメラを見ながら、お腹の中から飛び出す部位を修復する方法です。当院で行っている腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術は、経腹的腹膜前修復法:TransAbdominal Pre-Peritoneal repair を略してTAPP法と呼ばれている手法で6~7年前から行っています。


TAPPの手法を簡単に説明します。
OPE画像 先ず、おなかの3ヶ所:おへそと左右下腹部にそれぞれポート(お腹の中で使用する機器を出し入れするための筒状の器具)を留置します。おなかの中を観察し、ヘルニアを確認します(大きさや、場所、また反対側にもないか)【写真1】。片一方だけだと診断されていた場合でも、おなかの中から観察すると左右・両側にヘルニアが存在する場合があります。その時は、一度の手術で両側の治療ができ負担が少なくなります。

OPE画像 次に、腹膜という最も内側の膜を切開して、その奥にある血管や精管など大切なものを傷つけることなく腹膜から剥がします【写真2】。






OPE画像 適切な剥離を行ったあと、メッシュ(筋膜の補強に使用する化学繊維で編まれた人工補強材)を適切な部位に留置し固定します【写真3】。






OPE画像 最後に切開した腹膜を吸収糸で縫合して元通りに閉鎖します【写真4】。







 当院では、一般的にされているTAPP より更に小さなキズで行っています。具体的には、おへそと右下腹部にそれぞれ直径5mm程度のポート、左下腹部に直径3mm程度のポートを使用して手術を行います。一般的には12mm,5mm,5mmといったスタイルでされていることが多いです。


 キズを小さくしたTAPPの利点ですが、
(1)当然キズが小さくなるので手術後に目立たない。数ヵ月後には殆どわからなくなります。
(2)そして何より小さくなった分、痛みが少なくなります。手術後に鎮痛剤を使用することは殆どありません。
(3)その結果、早期退院・日常生活復帰が可能となります。当院では手術後は最低1泊入院して頂いていますので、手術翌日に退院される方が大半です。

 キズが小さくなったからといって安全性を損なうことなく、クオリティー(質)は向上させつつ一般的な方法と同様に確実な手術を行っています。




  鼠径部に膨隆、痛みを感じられた場合は、
 ヘルニア外来・低侵襲外科外来にご相談下さい。




| Copyright 2016,11,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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