NEWEST / < NEXT   BACK >

腰部脊柱管狭窄症

(この記事は2015年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


北中先生整形外科 医長 北中 重行



 腰部脊柱管狭窄症とは、少し難しい言い回しをすると、脊柱管を構成する骨性要素や椎間板、靭帯性要素などによって腰部の脊柱管や椎間孔が狭小となり、馬尾や神経根の絞扼性障害をきたして症状の発現した状態を言います。簡単に言うと、腰における神経の通り道が狭くなり症状の発現した状態です。


 典型的な症状は、間欠跛行(歩行で下肢の痛み・しびれ感・つっぱり感が出現し、前かがみで少し休むとまた歩けるようになる症状のこと)、下肢痛、下肢しびれ感であり、各症状は腰部の姿勢や動作で変化します。たとえば、臥位や座位で軽減し、立位や歩行で悪化、また、立位でも後屈で増悪し、前屈で軽快します。

 歩行することによって、硬膜管への圧迫力が増加することにより症状が悪化し、立ち止まって前屈することにより、硬膜管への圧迫力が減少するため、症状が軽減します。シルバーカーや自転車では、前屈の姿勢になるため、硬膜管への圧迫力が軽減し、普通に歩行するよりも症状が出にくくなります。



 治療法は、保存療法と手術療法に分かれます。初期治療の原則は保存療法です。

 保存療法では、薬物療法、理学療法、運動療法、神経ブロック療法などが挙げられます。軽度ないし中等度の症例では、保存療法は、最大70%の患者さんに、重度の症例では、33%の患者さんに有効とされています。

 保存療法が無効で、日常生活に支障を来す場合、手術療法が推奨されます。日常生活に支障を来すレベルが個々の患者さんで異なるため、患者さんそれぞれで手術適応が異なります。たとえば、5 分の間欠跛行を認める患者さんにおいて、痛みなく止まらずに歩きたいと望む患者さんに対しては手術適応ですが、基本的に家で過ごされ、歩くのはせいぜいトイレやお風呂程度で十分と言われる患者さんに対しては手術適応とはならず、そのまま保存療法で経過をみることもあります。しかし急速に進行する神経症状、筋力低下、膀胱直腸障害などは絶対的な手術適応となります。

 手術療法の成績は、4-5 年の経過で約75%の患者さんにおいて良好、8-10 年以上になると良好な成績を維持している患者さんは約65%と言われています。特に年齢による成績の差はなく、75歳以上の患者さんは、手術療法により65歳以上75歳未満の患者さんとほぼ同等の手術成績を期待でき、高齢という理由だけで、手術回避を強く勧める理由とはなりません。

 手術適応と判断された患者さんにおいて、罹病期間が長すぎると十分な改善を得られないことがありますので、保存療法が無効な患者さんは、適切な時期に手術を受けることが重要です。


 当科では、患者さんの意欲、意思を尊重し、保存療法、手術療法ともに積極的に行っておりますので、前述したような症状があれば、いつでもお気軽に御相談頂ければ幸いです。


| Copyright 2015,07,01, Wednesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

NEWEST / PAGE TOP / < NEXT   BACK >

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACK


LINK

PROFILE

OTHER

POWERED BY

BLOGNPLUS(ぶろぐん+)