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機能性ディスペシアとは?

(この記事は2014年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


機能性ディスペシア
内科 臼井 智彦
食後の胃もたれ感、少ししか食べていないのにおなかが苦しくてそれ以上食べられない、食事とは関係なく胃が痛い、あるいは胃のあたりが灼けるように感じるなどの症状を感じたことはありませんか。もしかしたら機能性ディスペプシアかもしれません。
 機能性ディスペプシア(FD :functional- dyspepsia)とは、胃の痛みや胃もたれなどのさまざまな症状が慢性的に続いているにもかかわらず、内視鏡検査などを行っても、胃潰瘍・十二指腸潰瘍や胃がんなどのような異常がみつからない病気です。生命にかかわる病気ではありませんが、つらい症状により、患者さんの生活の質を大きく低下させてしまう病気です。主な症状は「つらいと感じる食後のもたれ感」「食事開始後すぐに食べ物で胃が一杯になるように感じて、それ以上食べられなくなる感じ(早期飽満感)」「みぞおちの痛み(心窩部痛)」「みぞおちの灼ける感じ(心窩部灼熱感)」の4 つです。日本人の4 人に1 人は機能性ディスペプシアを持っているという調査結果もあり、決して珍しい病気ではなく、誰もが罹患する可能性のある病気です。

 この「機能性ディスペプシア」という病気の概念は、近年になって新しく確立したものです。それまでは、機能性ディスペプシアの患者さんの多くは「慢性胃炎」や「神経性胃炎」と診断されていました。本来「胃炎」とは、胃の粘膜に炎症が起きている状態を表す言葉ですが、胃炎があっても症状があるとは限らず、逆に症状があっても胃炎が認められないことも多々あります。そこで、症状があってもそれを説明できる異常がさまざまな検査でも認められない場合、胃に炎症があるなしにかかわらず「機能性ディスペプシア」と呼ばれるようになりました。

 機能性ディスペプシアは、食後のもたれ感と早期飽満感といった症状の食後愁訴症候群(PDS)と心窩部の痛みと灼熱感といった症状の心窩部痛症候群(EPS)の2つに分類されます。ただし、両方のタイプの症状が重なって起こったり、日によって感じる症状が変わったりすることもあり、どちらのタイプであるかはっきり分けられない場合も多くあります。原因は胃の運動機能障害、胃の知覚過敏、胃酸分泌、生活上のストレスなどの心理的・社会的要因、ピロリ菌などが言われています。また生活習慣が大きく関わっている場合もあり、生活習慣を
改めることによって、機能性ディスペプシアの症状が良くなることは少なくありません。治療は症状に合わせて消化管運動機能改善薬、酸分泌抑制薬、抗うつ薬、抗不安薬、漢方薬などさまざまな薬剤が用いられます。

 生命に影響を与える病気ではありませんが、日常生活にはかなりの影響が出てくることがあります。市販の薬剤で対応している患者さんも少なくありませんが、医療機関での適切な検査と対応があれば、症状はずっと楽になります。症状でお困りの方は一度受診してみてください。

| Copyright 2014,05,01, Thursday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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