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腹腔鏡下手術について

(この記事は2006年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


髙木 剛 医師西陣病院 外科 高木 剛


腹腔鏡下手術とは、おなか(腹腔内)を炭酸ガスでふくらませた状態でおへそ(臍)周囲からカメラ(腹腔鏡)を挿入し、更におなかの数ヶ所に1Cm前後切開し、そこから手術用の器具(鉗子)を挿入し行う手術のことです。腹腔鏡下手術は、1989年に初めて胆のう結石症に対して行われて以来、傷が小さく、術後の痛みが少なく回復が早い(すなわち、入院期間が短く、社会復帰が早い)ことから、急速に普及してきました。
特に胆のう結石症に対しては腹腔鏡下手術が標準手術になっています。また、腹腔鏡下手術には健康保険が適応されています。

腹腔鏡下手術の利点
1、キズが小さくてすみます。
2、キズが小さいぶん手術のあとの痛みが軽度ですみます。
3、手術後の腸運動の回復が早いので、早くから食事をとることが可能です。
4、結果として、入院期間が短く、仕事や家事などへの復帰が早くできます。
 通常、大腸や胃の開腹手術では腹部を20Cm前後切開しますが、腹腔鏡手術であれば4~6Cm程度の傷1カ所と1Cm程度のキズを数ヶ所切開すれば手術を行うことができます。
腹腔鏡手術の手術時間は開腹手術と比べやや長めですが、出血量は少なく切除したリンパ節の個数にも差がありません。

腹腔鏡下手術の欠占(問題点)・合併症
1、.安全性…視野が狭くカメラには死角があるため、他の臓器損傷に十分注意する必要があります。また鉗子を用いて操作するため手術を行うのに制限される場合があります。そのため、腹腔鏡での手術が危険と判断した場合、途中から開腹手術に変更する場合があります。
2、癌の根治性…開腹手術に比べ癌の根治性が劣るのではないかといった理由で現在でも進行大腸癌に対する腹腔鏡下手術を敬遠している病院がありますが、最近では進行癌でも術後の生存率や再発率は開腹手術と変わりはないという報告がなされています。我々は癌の根治性を十分に意識し、開腹手術と同程度に癌病巣と周辺リンパ節の切除を行うよう努力しています。
3、合併症…おなかを炭酸ガスでふくらませて手術を行うために起こりうる特有の合併症があります。例えば、下肢静脈血栓症、肺塞栓症:足の静脈に血栓(血液のかたまり)ができることを下肢静脈血栓症、また、血栓が心臓を介して肺にとんで、肺の血管につまることを肺塞栓症といいます。肺塞栓症は致命的な場合がありますが、その発生頻度は0・1%程度と言われています。それらの予防のために足に弾性ストッキングをはいたりして予防しています。
このように腹腔鏡下手術は従来の開腹手術に比べ問題点(疑問点)はありますが、慎重かつ安全に行えば決して危険で、難しい手術ではありません。美容的にも、また身体への負担も軽いため、我々はこの腹腔鏡下手術を積極的に取り入れておりますのでご相談下さい。

一般的な消化器外科での腹腔鏡下手術には以下のようなものがあります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術(胆嚢結石の手術です)
腹腔鏡下総胆管切石術(胆管に石がある場合、胆管を切開し縫合します)
腹腔鏡下大腸・直腸切除術(良性・悪性)
腹腔鏡下虫垂切除術(いわゆる盲腸の手術です)
腹腔鏡下胃切除術(良性・悪性)
腹腔鏡下胃・十二指腸穿孔手術(穿孔部を縫合閉鎖します)
腹腔鏡下小腸切除術(良性・悪性)

などがありますが、その他様々な疾患で腹腔鏡下手術が可能です。

| Copyright 2006,11,01, Wednesday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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