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糖尿病の「診断」や「治療」「合併症」について

(この記事は2013年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 富永 真澄


◆どんな病気?

 糖尿病は、血糖値の高い状態が続く病気です。初期には自覚症状がありませんが、放置すると、血管や神経が障害され、腎臓、目、神経などに合併症をひきおこします。



◆原因は?

 血糖値は、健康な場合はインスリンの働きで一定の範囲に保たれますが、インスリンの分泌量が減ったり、インスリンの効きが悪くなると血糖値の高い状態が続くようになります。(インスリンとは、膵臓から分泌されるホルモンで、インスリンの働きによって血液中のブドウ糖が筋肉や肝臓にとりこまれて血糖値が下がる)



◆診断は?

血糖値
空腹時血糖値126mg/dl 以上
ブドウ糖負荷後2時間値200mg/dl 以上
随時血糖値200mg/dl 以上

 上記の血糖値のどれかにあてはまり、かつHbA1c(NGSP):グリコヘモグロビンが6.5% 以上の場合に診断されます。
 血糖値かHbA1cのどちらか一方だけがあてはまる場合には再検査をして、その結果を加えて診断します。(HbA1c:グリコヘモグロビンとは、過去1~2カ月の血糖の状態がわかる。正常では6.2%未満)


◆治療

 まず、食事療法や運動療法を行い、それだけで血糖コントロールが不十分な場合はのみ薬やインスリン注射などの薬物療法が必要となります。2009 年にインクレチン関連薬という新しいタイプののみ薬や注射が登場しました。食後の高血糖をおさえる、膵臓の保護作用があるなどの特徴に加えて、他の糖尿病治療薬と組み合わせることで良好な血糖コントロールを得られることがあり、治療のはばがひろがっています。

 糖尿病は、発症していても初期には何も症状がありません。そのために長年ほうってしまい、知らない間に合併症が進んでしまうことも少なくありません。血糖値が高いといわれたけれど自覚症状はない、ということが糖尿病の治療を難しくしているともいえます。けれども、何年も血糖値が高いままにしておくとさまざまな合併症が出てきます。合併症にはさまざまな深刻な症状があり、ひとたび進んでしまうと進行をくいとめることはできても元にもどすことはなかなか困難です。

 糖尿病を治療する目的は、この合併症をふせぐことにあります。そのためには、十分に血糖値を下げること、具体的にはHbA1c(NGSP)を6.9%未満にすることを目指します。



◆合併症について

 血糖値が高い状態が長く続くと、全身の血管や臓器が少しずつ障害され、いろいろな合併症があらわれます。細い血管が障害されておこる神経障害、網膜症、腎症は3 大合併症とよばれています。
 個人差はありますが、3 つの合併症の中では、神経障害が比較的早期より自覚され、糖尿病を発症して5~10 年で約3 割にみられるとされています。具体的には、手先、足先のしびれや痛み、感覚がにぶくなる、立ちくらみ、下痢や便秘を繰り返すなどさまざまな全身症状があげられます。
 網膜症は、おおむね10~14 年で半数近くに発症するとされています。網膜の血管障害は自覚症状がないままに進行していきます。かなり進んだ状態になってはじめて、視力低下や目のかすみ、視野の欠損などの視覚障害があらわれてきます。症状がなくても定期的に眼科を受診することが何より大切です。
 腎症は、糖尿病を5~15 年間わずらっている人の1/3 がかかるといわれています。尿検査で、尿アルブミンが陽性になると腎臓の合併症がはじまっていることを意味します。このとき自覚症状はありません。糖尿病しかし、腎症が進まないようにこの時期から糖尿病食ではなく腎臓食にきりかえることが理想的です。最近、早期腎症に対するアプローチが注目されるようになっています。当院では、月曜日・木曜日にスタッフによる「糖尿病透析予防指導」を行っていますので希望があればご相談ください。




| Copyright 2013,01,01, Tuesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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