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心臓血管外科治療と外来開設のご案内

(この記事は2012年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


髙橋先生 心臓血管外科 髙橋 章之


今まで透析患者様を中心に多くの西陣病院の患者様が京都第一赤十字病院の心臓血管外科で手術を受けられましたが、術後の通院が遠いなどのご不便をおかけしていました。また、心臓及び血管疾患に関しては整形外科や泌尿器科など一つの科の中で診断から治療までを一貫して行うわけではなく、診断から内科的治療・外科的治療までを循環器内科医と心臓血管外科医が相談・連携して診療にあたっていましたが、残念ながら西陣病院には心臓血管外科がなく、手術が必要と判断された場合は他の病院に受診しなければなりませんでした。特に入院中の患者様に関しては話を聞きたくても他院まで受診することが困難な方もおられました。このような理由から、外科的治療の可能性がある患者様に手術内容や危険性・メリットなどを説明したり、手術後のフォローを行う目的で9 月より第2 週と4 週の土曜日午前中に西陣病院循環器センターの一環として京都第一赤十字病院との連携で心臓血管外科外来を開設致しました。

 対象疾患としては弁膜症や狭心症などの心臓疾患、動脈瘤を初めとする大動脈疾患、閉塞性動脈硬化症などの末梢動脈疾患、下肢静脈瘤などの静脈疾患などを扱います。心臓疾患に関しては当院の循環器内科チームとの連携で治療方針を相談させて頂きます。一方で、動脈瘤や末梢動脈疾患、下肢静脈瘤などの疾患は必ずしもすぐに手術を行う必要はありません。

 大動脈瘤とは心臓から全身に血液を送る幹となる大動脈が部分的に“こぶ” のように膨れてしまう病気です。主に動脈硬化が原因でおこりますが稀に感染などにより急にできてしまうことがあります。その多くは無症状で、たまたま撮影したレントゲンやCT、超音波検査などで偶然見つかります。逆に症状がある場合は早期破裂による急死の危険性が極めて高く緊急手術の対象となる病気です。一旦できてしまった動脈瘤は自然経過や投薬で治ることはなく治療方法としては手術しかありません。手術方法に関しては以前から胸やお腹を切って動脈瘤の部分を人工血管で取り替える手術を行ってきました。以前に比べて手術成績も良くなってきており、今では胸部大動脈瘤で5 ~ 10%、腹部大動脈瘤では1 % 前後の危険性まで低下しました。また、最近では大きな傷を作らないでも治せるステントグラフトと呼ばれるカテーテル治療に準じた手術も増えてきています(但しこれは全ての患者様に行える訳ではありません)。更にこの両方のハイブリッド治療も選択肢に増えてきました。またすぐに手術が必要とならず定期的な受診によるフォローで経過を見ることもあります。それぞれのメリット・デメリットをその患者様一人一人に対して考え判断しなくてはなりません。

ステントグラフト
図1) ステントグラフトとはカテーテルを使って動脈瘤の内側に
金属骨格のついた人工血管を裏打ちして補強する方法

腹部大動脈瘤
図2) ステントグラフトで治療さ
れた腹部大動脈瘤

下肢静脈瘤
図3) 下肢静脈瘤は足の表面
の血管がこぶ状にふくれる病気



 下肢静脈瘤とは足から心臓に戻る方の血管(静脈)のうち皮膚に近い部分の静脈が“こぶ” 状に膨れる病気です。動脈瘤と異なり足の静脈瘤は破裂しても命にかかわることはありませんが、皮膚炎や血栓症を起こしたり、足がだるい・かゆい・むくむなどの症状が出てきます。治療方法は主に①足の静脈を抜去して静脈瘤を切除する、②レーザ治療、③薬の注射による硬化療法などであり、また必ずしもすぐに積極的な外科治療が必要でないケースも多々あります。

 心臓血管外科というと一般の方々からすると、かなり敷居が高い診療科のように思われがちですが、決して特殊な科ではありません。皆様が気軽に受診できて相談して頂ければと思いますので、何卒宜しく御願い申し上げます。


| Copyright 2012,11,01, Thursday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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