NEWEST / < NEXT   BACK >

鼠径ヘルニア 足の付け根がふくらんできたら (下)

(この記事は2006年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)
(前回の記事は こちら です)

福本 兼久 医師西陣病院 外科 福本兼久


前回は鼠径ヘルニアの原因と症状について説明しましたが、今回は実際の治療法について少し詳しく説明します。



鼠径ヘルニアの治療

 大人の鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、放置するとだんだん大きくなるため治療が必要です。
鼠径ヘルニアの治療法は「手術」しかありません。

鼠径ヘルニアの手術材料 鼠径ヘルニアに対する手術は、子供の場合、飛び出した袋を切るだけの簡単なもので、手術翌日、または数日で退院できます。大人の場合はもう少し複雑で、飛び出した袋を切るだけでなく、弱くなった腹壁を補強することが必要となってきます。この補強として、古くから腹壁の弱い部分の周りの組織を縫い寄せる方法が取られてきましたが、この方法で補強すると縫い合わせた筋肉や金幕の部分に”つっぱり”ができ、術後の痛みやつっぱり感の原因になることがあります。また、加齢によってさらに筋膜が弱くなると再発することがあります。再発率は約2~10%と報告されています。

そこで現在では、弱い部分にメッシュ(細いポリエステル製の糸をシート状にしたもの)を挿入し腹膜を広く覆いヘルニア修復術を行うのが主流となってきました。メッシュを使うメリットは筋肉を無理に縫い合わせないので筋肉に緊張がかからず、術後の違和感や痛みが少なく早期社会復帰が可能で、再発が極めて少ない(1~5%)ことです。

 当院では、周りの組織を縫い寄せるかわりに人工の膜を入れて補強するメッシュ・プラグ法という手術方法を用いています。この手術を行った場合、手術後早期の退院も可能です。

また最近ではヘルニアの状態により傘状のプラグ(栓)だけでなく、プロリーン・ヘルニア・システム(PHS)、クーゲルパッチと呼ばれる平らなパッチを補強材として使用する場合もあります。



手術時の麻酔は?
入院期間は?


局所麻酔から全身麻酔まで使用すべきメッシュの種類によって変わります。
 手術後は、次の日には、食事をしたり歩くことが可能です。シャワーやお風呂に入ることもできます。
 そのため入院期間は数日から1週間以内で、退院直後から仕事は可能です。ただし、重い物を持つことやゴルフなどのスポーツなどおなかに力を入れるのは手術後1ヵ月位避けて下さい。



メッシュは安全ですか?

 ポリエステル製のメッシュは1956年からヘルニアの補強に使用されており人体に大きな影響を与えません。

 成人鼠径ヘルニアの手術は、人工補強材の登場によって、最近では患者さんの負担の少ない手術が実現可能になりました。なんといっても再発を防ぐことができるのは、患者さんには大きなメリットだと思います。また手術後の痛みが少ない点や、短時間で終わることなど、長所の多い手術なので、ここで理解を深めていただければ、いざ手術ということになっても安心して受けることができると思います。


 以上、2回にわたり鼠径ヘルニアについて説明してきましたが、鼠径部というデリケートな部位の症状だけに、病院に来るのを恥ずかしがる方もいらっしやいますが、かんとん状態になると危険です。おかしいなと思ったら、苦痛を感じる前に、いつでも当院にご相談ください

メッシュ・プラグ


プロリーン・ヘルニア・システム(PHS)


クーゲル・パッチ

| Copyright 2006,07,01, Saturday 10:10am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

NEWEST / PAGE TOP / < NEXT   BACK >

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACK


LINK

PROFILE

OTHER

POWERED BY

BLOGNPLUS(ぶろぐん+)