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慢性腎臓病(CKD)外来が始まります

(この記事は2010年9・10月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

腎臓・泌尿器科  奥原 紀子


 慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)という言葉を聞いたことがありますか? 慢性腎臓病とは自覚症状のないまま腎臓の機能がだんだん低下していく病気です。心筋梗塞や脳梗塞や糖尿病といった病気ほど知名度は高くないのですが、実は慢性腎臓病は多くの方にとって無縁ではない病気です。軽度のものも含めると約2000万人が慢性腎臓病をもっているというデータもあるくらいです。

 慢性腎臓病は進行すると末期腎不全となり、腎臓の機能がほとんどなくなってしまいます。そうすると体はむくみ、息は苦しくなり、だるさや食欲不振などの尿毒症がおこり、ついには血液透析なしでは生きられなくなってしまいます。現在日本には約27万人の透析患者さんがいて、さらに毎年1万人ずつふえています。国民の500人に1人は透析を受けていることになりますし、高齢者に限っていうならこの確率はもっと高くなります。また、慢性腎臓病があると脳梗塞や心筋梗塞といった心血管系の病気になる危険性が3倍も高くなることもわかってきました。

 近年慢性腎臓病の進行を抑える方法がわかってきたことから、「慢性腎臓病を早期に発見し治療をする」ための取り組みが日本中で始まっており、当院でも慢性腎臓病外来を始めることになりました。

 慢性腎臓病の診断は尿検査や血液検査で行います(尿蛋白陽性などの所見や採血で概算する糸球体濾過量(GFR)というものをみて診断します)。進行するまで、自覚症状はないことがほとんどです。治療法は、慢性腎臓病の原因やその進行度によってもかわってきますが、まず大切なのは生活習慣の改善やしっかりとした血圧の管理です。特別な点滴をしたり、長期間の入院加療の必要がある人はごく少数です。その代わり、じっくり気長に治療をしていくことがとても大切になります。このため、当院では「医療連携パス」というシステムを採用しています。この「医療連携パス」とは、慢性腎臓病のかたを普段の「かかりつけの医師」と「慢性腎臓病外来の医師」の二人体制で連携をとりながら治療していくものです。慢性腎臓病の治療は血圧の薬を飲むなど、かかりつけですでに開始されている治療と同じ部分も多くあります。連携をとることで処方がだぶってしまったりする危険がなくなりますし、慢性腎臓病外来に何度も通わなくても、ふだんはかかりつけ医にみてもらうことができます。塩分制限などの食事療法をしているつもりでも実際には達成できていなかった方は、当院で栄養士から詳しい栄養指導をうけていただいくことが可能です。

 現在かかりつけの医師がある方で慢性腎臓病の可能性がある方は、当院の慢性腎臓病外来を紹介受診していただければ効率よく診断・治療を行うことができます。また、現在かかりつけ医はないけれども、慢性腎臓病のことが心配な方もぜひお気軽にご相談ください。

| Copyright 2010,09,01, Wednesday 12:00am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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