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冠動脈石灰化について

(この記事は2009年11・12月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


内科 医長 北村亮治内科 医長 北村亮治


動脈が肥厚し硬化した状態を動脈硬化といい、これによって引き起こされる様々な病態を動脈硬化症といいます。動脈硬化の最終像である石灰化は、血管壁の柔軟性と弾力を減少させ、最終的には血管脆弱性を招きやすい状態になります。このため、血管石灰化は糖尿病や慢性腎不全の症例において、虚血性心疾患や脳血管障害などを誘発する因子として注目されています。この中でも冠動脈石灰化は虚血性心疾患の検出や予後判定に有用であるという成績が多く報告されています。冠動脈石灰化は粥状動脈硬化のプロセスで生じ、正常血管壁には生じないと考えられています。従って、冠動脈石灰化を評価する意義は冠動脈硬化の存在とその重症度を評価することにあります。

マルチスライスCT(MDCT)を用いた冠動脈石灰化の検出及び測定は、造影剤を使用せずに比較的容易に短時間で検査が可能であり、X線の被爆という点を除けば、患者さんに苦痛を与えることなく施行できます。生活習慣病の予防と治療においては、動脈硬化の進展予防が重要であり、冠動脈硬化の一指標である冠動脈石灰化の測定は、動脈硬化の進展の程度の把握と虚血性心疾患の予防への動機づけに有用であると考えられます。したがって、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常症、慢性透析の患者などを基礎疾患に持つ方々に検診の一環として冠動脈石灰化の測定を行うことは重要であると考えています。

また、ADLが低下し日常生活で虚血発作が誘発されにくく、無症候性虚血も多数存在する超高齢者患者にも、非侵襲的に簡便に低リスク患者群と高リスク患者群を同定できる冠動脈石灰化の測定は非常に有用と考えています。残念ながらMDCTには石灰化部位が冠動脈狭窄部位とは必ずしも一致せず、また、脂質が豊富で不安定な非石灰化プラークの検出などに課題を残しています。しかし、一般に冠動脈石灰化量(CACS)は冠動脈硬化重症度と相関するといわれており、CACSを算出することによって将来的な心血管事故の危険性を推定することができます。なお、冠動脈の狭窄部位の精査については、石灰化が高度な症例では造影剤を使用する冠動脈CTAより冠動脈造影法で確かめる方が良い場合もあります。

いずれにしても、虚血性心疾患の評価目的として冠動脈石灰化の測定をお勧めします。興味あれば一度循環器科の医師に相談して下さい。

 

図1 MDCTでの冠動脈石灰化
MDCTでの肝動脈石灰化

 

図2 冠動脈石灰化についてのコンセンサス
肝動脈石灰化についてのコンセンサス


| Copyright 2009,11,02, Monday 09:12am administrator | comments (x) | trackback (x) |

 

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