西陣病院だより

足の付け根のあたりがふくらんでいませんか?

(この記事は2019年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 外科 医長 小林 博喜

外科 医長
小林 博喜



鼡径ヘルニアとは、本来お腹の中に納まっているはずの腸や内臓脂肪が、足の付け根あたりのお腹の壁の弱いところから外側にはみ出して、皮膚の下まで出てきてしまう病気で、俗に脱腸と呼ばれます。症状としては足の付け根が膨らむ(立った時に膨らみ、寝ると元に戻ることが多いです)他に違和感や痛みを伴うこともあります。放置しておくと、段々と大きくなるばかりか脱出した腸が戻らなくなる嵌頓と呼ばれる状況になり腸閉塞や腸壊死の原因となります。症状が無く、程度が軽い場合には経過をみることもありますが、基本的には治療が必要な病気で、治療法としては手術が唯一の手段となります。

 

 

鼡径ヘルニアに対する手術は様々な方法があり、脱腸している部位の皮膚を切って外側からアプローチする方法(鼡径部切開法)と、腹腔鏡を使って脱腸している内側であるお腹の中からアプローチする方法の大きく二つに分かれます。腹腔鏡を使った方法は、傷が小さいため手術後の痛みが少なく、社会復帰や仕事復帰が早期に可能であるといった点や、両側の脱腸がある患者さんでも同じ傷で一度に両側の修復が可能であるといった点でメリットがあります。一方で腹腔鏡手術は全身麻酔が必須であるため、心臓や肺の病気を抱えている方など全身麻酔が危険な方は受けていただくことができないという制約があります。それに対して鼡径部切開法は、傷がやや大きいため(3‒5㎝程度)腹腔鏡手術に比べるとわずかに回復に時間を要しますが、腰椎麻酔や局所麻酔でも施行が可能であり、心臓や肺への影響を少なくすることが可能という長所があります。したがって大まかには、全身麻酔が問題なく可能な患者さんには腹腔鏡による方法を選択し、全身麻酔の危険があったりその他の理由で腹腔鏡手術が難しい患者さんには腰椎麻酔や局所麻酔下に鼡径部切開法による手術を選択することが多いです。

 

 

 

当院での近年の鼡径ヘルニア手術の件数、内訳の推移はグラフの通りで、約6割の患者さんに全身麻酔下での腹腔鏡手術を施行しており、残り4割の患者さんに対して鼡径部切開法による手術を施行しておりますが、その中でも局所麻酔で行う患者さんの割合が増えてきております。

局所麻酔下での手術は全身への影響が極めて少なく、様々な全身疾患をお持ちの患者さんでも安全に行うことができる方法であり、当院では2016年から積極的に局所麻酔下での手術を施行し、全身麻酔や腰椎麻酔での手術に近い内容での手術を行うことができるようになっております。

大事なことは個々の患者さん毎にご年齢、全身の状態、鼡径ヘルニアの状況に応じた最適な手術法を選択し、安全かつ確実な鼡径ヘルニア修復術を施行することにあり、そのために我々はたゆまぬ努力を続けております。

足の付け根が膨らんでいる気がしたら、ご高齢の方や、全身疾患をお持ちの患者さんでも安全に手術ができる可能性がありますのでまずは当院外科の外来にご相談ください。

 

 

2019年05月01日

鼠径ヘルニア短期滞在手術

(この記事は2018年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院、外科 副部長
高木 剛

腹腔鏡手術のなかでも更にキズを小さくした鼠経ヘルニア修復術を行っています

当院の低侵襲腹腔鏡下鼠経ヘルニア修復術(TAPP法)

当院では2010年から積極的に腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術(TAPP法)に取り組んでいます。当院の特徴としては、必要最小限の切開創で行う低侵襲腹腔鏡手術を行っています。胆嚢摘出や虫垂切除のような臓器摘出が必要な場合は小さな一つの切開創で行う単孔式腹腔鏡手術を行っていますが、鼠径部ヘルニアの場合は修復に必要なメッシュが腹腔内(お腹の中)に挿入できれば良いため、腹部に留置するポートと呼ばれる器具の直径を小さくした手術を行っています。

一般的には、直径12㎜ポートと5㎜ポートを併用した方法で行われていますが、当院では最大でも5㎜ポートとし、3㎜ポートを併用したキズを小さくした方法で行っています。これにより、手術後のキズは目立たないだけでなく、何より痛みが非常に少ないため鎮痛剤の使用が殆どなく、その結果として早期退院・社会復帰が可能となります。ただ全身麻酔を必要とするため、術後管理の安全面から手術後は最低1泊入院をして頂いております。

手術に必要な切開を最小としたうえで、合併症を起こさせないよう、より安全な腹腔鏡下鼠経ヘルニア手術を行っています。

 

西陣病院、手術写真
2018年07月01日