西陣病院だより

ツリウムレーザー 前立腺蒸散術 (ThuVAP)

(この記事は2020年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院 副院長
今田 直樹

前立腺は外腺と内腺で構成されており、前立腺肥大症とは内腺が肥大することです。

ミカンを想像してください。外腺は皮の部分で、肥大した内腺が実の部分です。正常な前立腺はスダチぐらいの大きさでしょうか。尿道がその真ん中を縦に貫通していて、肥大症になれば尿道が圧迫され排尿困難などの症状が出現するのです。前立腺肥大症の手術の目的は肥大した内腺を取り除くことです。開腹手術では、皮を切って実を丸ごと取り出すイメージです。夏みかんぐらいに成長した肥大症が適応です。多くは通常の経尿道的前立腺手術で対応できます。尿道から切除鏡を挿入し、電気メスで少しずつ切除していきます(下図)。この手術もとても良い手術ですが、近年、前立腺手術に電気メスに代わってレーザーを使って蒸散治療する方法が普及しつつあります。

満を持して2019年7月、当院では前立腺肥大症の新しい治療レーザーQuanta Cyber TM を日本第5号機として導入いたしました。ThuVAPは2017年のヨーロッパ泌尿器科ガイドラインでは既に推奨グレードAと認められている治療法で、2017年日本泌尿器科ガイドラインでもBに認められています。次回の改定では恐らくA評価になると思われます。日本においてもホルミウムレーザー(A評価)、グリーンライトレーザー(A評価)、半導体レーザー(C1評価)による前立腺手術も認められており、徐々に増加しています。

前立腺のレーザー治療の特徴は、術中および術後の出血リスクが非常に低く、抗血栓療法中の方(血液サラサラ薬内服中の方)にも行なうことが可能で、術後の痛みが少なく、回復も早く、術後の尿道カテーテルの留置期間も短くて早期退院が可能となります。

当院が導入したツリウムレーザー(写真)の特徴は、水分子(全ての生体組織に存在する)に対する吸収率が高く、蒸散効率が手術当初から最期まで落ちなくて一定に保たれます。軟部組織を迅速に焼灼/切断しつつもレーザビームの組織への深達度は0.1-0.2mmと限定的で、周辺組織に対する影響が少なくて安全です。また最高出力200Wのハイパワーであり、全サイズの前立腺肥大症に有効であることがヨーロッパ泌尿器科ガイドラインでも証明され治療適応の幅が拡大し、次いで術後合併症の発生率が低いことも報告されています。内服治療だけでは十分に症状が改善しない方、内服継続をしたくない方、手術を受けたいが入院期間の問題で手術をためらっている方には適している治療法ではないでしょうか。


Thuliumレーザ(ツリウムレーザ)

2020年01月01日

新年おめでとうございます

(この記事は2020年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

看護部長
中島 美代子

平成から令和へと年号が変わり、令和で最初の新しい年を迎えることができました。

西陣病院看護部は、地域の皆様のニーズに応えることを大切にし、ケアミックス病院として、急性期の看護、回復期の看護、慢性期の看護、また看取りの看護の質を上げることに努めてまいりました。新しい年には当院の特徴でもある透析センターに透析認定看護師が誕生する予定です。透析治療の専門領域の研修を終えた認定看護師を中心に、さらに透析看護を充実してまいります。

また、今後、さらに高くなる高齢化にも対応できるよう高齢者の看護の充実にも努めております。今年春から、認知症看護認定看護師の資格修得のため看護師を研修に出す予定にしております。そして、患者さんお一人お一人が、ご自分の人生を自分らしく生きられるように、看護師だけではなく、病院職員が一丸となってチームでサポートしていきたいと考えております。

西陣病院看護部は、伊谷院長の方針である「地域に愛される病院づくり」に参画し、これからも、地域の方々が、住み慣れた地域で暮らすことを支えてまいります。

2020年01月01日

新春のごあいさつ

(この記事は2020年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

整形外科 部長
牧之段 淳

皆様には令和になって初めての新年を健やかに迎えられたことと謹んでお慶び申し上げます。

最近健康寿命という言葉が聞かれるようになってきました。健康寿命とは介護を受けたりせず日常生活を送れる生存期間のことです。現在平均寿命は男性81歳、女性87歳ですが健康寿命は男性71歳、女性74歳程度と開きがあり問題となっています。75歳以上を対象として本年度からフレイル健診が開始されることになりました。要支援・要介護になった要因の1位は運動器の障害です。運動器をあつかう整形外科では日本整形外科学会がロコモティブシンドローム(運動器症候群、通称ロコモ)を国民に向けて啓発しています。ロコモティブシンドロームとは、骨や関節、筋肉など運動器の衰えが原因で、歩行や立ち座りなどの日常生活に障害を来たしている状態のことです。先ずはスクワットや片足立ちなどを行い筋力やバランス能力を鍛えることが大切ですが末永く自立した生活を続けるためには手術が必要となることもあります。

当科は常勤の整形外科専門医が3名力を合わせて皆様の健康寿命が延びるように各人に合った治療方法を御提案させていただきますので何卒よろしくお願い申し上げます。

2020年01月01日

『出会い』を大切に 再び

(この記事は2020年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

副院長
柳田 國雄

新年あけましておめでとうございます。皆様にはお健やかに令和最初の新年を迎えられたこととお慶び申し上げます。

前回この欄で新年のご挨拶をさせていただいてから3年が経ちました。その間医療の現場はますます厳しく複雑となり、超高齢化に伴う様々な問題が取り上げられ、人工知能(AI)の医療への導入が取り沙汰され、仕事の効率化や働き方改革が進められています。この時代の波に押し流されず、様々な工夫をして“地域に密着した総合的な医療と専門性を生かした医療”の両輪を堅持していきたいと思っています。さらには、医療の安全性の確保や働きがいのある健全な職場への工夫と努力も続けてまいります。

最近読んだ本に『人の幸せってのはどれだけ周りの人を笑顔に出来たかだと思う』という言葉がありました。この3年間に様々な出会いがありたくさんの笑顔に出会うことができましたが、残念ながら悲しく辛いこともありました。本年も新たな出会いがたくさん待っていると思います。患者さん本人やそのご家族はもちろん、地域の医療者の方々、さらには病院スタッフとのひとつひとつの出会いを大切に、そしてその方々を笑顔にできる医療を本年も心がけたいと思います。本年も何卒よろしくお願いいたします。

2020年01月01日

新年のごあいさつ

(この記事は2020年1・2月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

西陣病院、西陣病院 院長 伊谷 賢次

西陣病院 院長 伊谷 賢次


新年明けましておめでとうございます。

皆様には、さわやかな新春をお迎えのことと心からお慶び申し上げます。また、昨年中、当院に賜りました数々のご厚情とご支援に対しまして、職員一同心より御礼申し上げます。

昨年も大型台風到来による暴風や記録的な豪雨により、関東地方を中心に多くの人が被災されました。特に、真夏での長時間の停電は、医療福祉施設でも、エアコンが使用できなくなり、熱中症のリスク化が高く、転院を余儀なくされた様子をテレビ画面から目の当たりにしました。今後も、地球温暖化による今までに経験したことのない異常気象は頻繁に起こることが予想され、医療機関は今まで以上に様々な災害対策の必要性を痛感しました。当院では、電源設備の拡充工事を昨年10月より開始し、今年7月まで行います。長時間の停電時にも人工呼吸器などの非常用電源以外に、エレベーターやエアコンなどの電源も確保できるようになり、安心で安全な病院を目指します。また、工事期間中は、地域住民の皆様には、交通規制などのご不便をお掛けしますが、ご理解・ご協力をよろしくお願い申し上げます。

また、昨年10月より消費税が8%から10%に増税されました。消費税増収分の一部は社会保障の充実にあてられることになっていますが、国民の生活はもとより、病院経営にとっても厳しい増税となりました。また、今年4月に2年ごとの診療報酬改定がありますが、医療費抑制政策によりマイナス改定が予想され、良質な福祉医療の継続には大きな不安があります。このような厳しい状況でも、当院の目指すべき目標は、設立当初からの基本方針である、「地域に密着した良質な医療を高いレベルで提供する」ことです。

今年も、地域のニーズに合った急性期病棟、地域包括ケア病棟、障害者病棟のケアミックス病院としての診療体制を維持していきます。急性期病棟では、高齢者の多い地域で、透析患者さんと同様に、多くの合併症を持った患者さんが多く、内科系・外科系・画像診断医・麻酔科医などによるスピーディーなチーム医療を行います。今年4月の診療報酬改定でも、包括医療費支払い制度方式(DPC)は導入せず、開業医の先生方からのご要望や患者さんの病態にあった医療を提供していきます。また、地域包括ケア病棟ではサブアキュート・ポストアキュート・レスパイトなど地域にあった医療を提供していきます。

今後も職員全体が患者さんを主体に考え、良質な医療を提供するためにスタッフ一人ひとりが役割と責任を自覚して努力していきますので、今年一年、さらなるご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げまして、新年のご挨拶とさせていただきます。

令和二年 元旦

2020年01月01日